14スレ目の74(ななよん)の妄想集@ウィキ

第1回パロロワ本編向け練習成果物置き場>成果物その2>本編その1


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=A-2(X2Y2);商店街の建物(焼肉屋安●亭風)内部;1日目AM7:30=
膠着。困窮。閉口。今、ここはそんな空気で息苦しかった。
第三者には分かりにくく、かつ当事者には分かりやすい”合図”。
そんな相反する条件を一度に満たす神懸り的閃きが、そう簡単に起きるはずも無かった。
向かい合う二人は時折短く呻く。隣で穏やかな寝息が規則正しく、この空間に刻【とき】を刻む。

「・・・おk、埒があかねぇ。」
リョナたろうは音を上げた。自分から言い出した手前、先に諦める訳には行かないと思っていたが限界だった。
そもそも、目の前の”みこふく女”に対する、圧倒的な性的破壊衝動を抑え込む事だけで手一杯だった。
「うぅ~・・なぞ、頭痛いですぅ・・。」
なぞも続いて音を上げた。自慢じゃないが今までこれほど頭を使った事はない。
今頭に御鍋を置いたらお湯を沸かす事だってできるかもしれない。そんな気がする。
二人は殆ど同時にテーブルに突っ伏した。そして殆ど同時に大きく溜め息をついた。

(・・ん?何だぁ、ありゃ?)
ふと、外を見たリョナたろうの目に少女が映った。ここからは垣根が干渉して地を行く者を見ることはできない。
つまり、本来ならば雲一つない吐き気がするぐらいに真青な空しか映らないはずだった。
それなのにリョナたろうの目には少女が映っている。
(おk。幻覚まで見るとは、俺かなり疲れてるぜ・・。)
リョナたろうと少女の目が合った。少女はにこりと笑った。
その顔はゾッとするほど無邪気な明るい笑顔、12、3ぐらいの少女のそれ其の物だった。
しかし何故か、身体の奥底がチリチリする。本能が警鐘を鳴らしている。
(あの顔は・・そうだ。)
急速に意識が覚醒していく。思考するよりも早く、警鐘の意味が段々と理解ってくる。
この状況。この空気。そして、あの笑顔。これらが意味する所・・。
(俺が絶好の獲物を見つけた時の顔とソックリだ!)
そう思うのとほぼ同時に、魔力の気配を感じる。少女の方からだった。
一瞬、周りの空気が軽くなる感じ、そして一定方向に強く引き寄せられる感じ。こいつは・・。

「なぞ!起きろ!」「ふぇっ!?」
慣れない作業疲れで昏々していたなぞは、突然大声で名前を呼ばれ飛び跳ねるように身を起こす。
「何ですかー、兄さっ・・まっ・・!?」
今し方、自分が昏々していたテーブルが無残にも真っ二つになっている。
少し暖かかったはずの空気が冷えて、今まで無かった流れができている。
その瞬間、戦士としての思考がなぞが考えるよりも素早く次の行動を指示する。
手早く自身のバッグを背負い、膝の上で寝息を立てていた彼女とその荷物を抱きかかえて、
椅子から飛び跳ねテーブルから少し離れる。視線を横に移すとちょうど反対側で同じように行動していた’兄様’の姿があった。
リョナたろうの視線は外を向いている。察するにこの事態を引き起こした主が居るのだろう。なぞはその視線を追ってみる。

「・・・な、何で浮いてるですか!?」
少女は宙に浮いていた。この事態を引き起こした主が彼女ならば、確かに浮いていても問題はない。
しかし、余りにも非現実的すぎる。なぞの知り合いにもこうした不思議な力を持った人間は居たが、
せいぜい手を触れずに相手を吹き飛ばしたり、水の上を立って歩いたり、炎の中に入っても平気な顔をしている程度だった。
宙に浮き瞬時にテーブルを真っ二つにできる人間なんて見たことがない。
「すごーいすごーい♪ネネ!どーして分かったの?おネエちゃん!」
宙に浮く少女は無邪気な笑顔でパチパチと手を叩いている。
「君は誰です!いったい何したですか!」
なぞは無邪気にはしゃぐ少女に問いかける。
「あたし?プラムっていうの♪おネエちゃん、あ~そ~ぼ♪ネッ?」
プラムと名乗った少女はくるくると陽気に回りだす。同時に、なぞの戦士としての思考が嫌な予感を知らせる。
「ちっ!来るぞ!飛べ!」
どうやら、リョナたろうには自分には見えない”何か”が見えるらしい。
素早く反応したなぞが横に飛ぶと、ついさっきまで立っていた場所が鋭く抉られている。
「危ないじゃないですか!なぞ達をどうするつも・・」
言いかけてふと少女の首に何かを見つける。それはなぞやリョナたろうについている首輪と同じ物だった。
「まさか君、あの”ゲーム”をやるですか!?」
あの男が仕組んだ殺し合い【バトルロワイヤル】という名の狂った”ゲーム”。
まさか、あんなあどけない少女が自ら進んで殺し合いに参加しようとは思えないし、思いたくない。
なぞは祈るような気持ちでプラムに問いかけた。
「んー、わかんナーイ☆」
「『分からない』って!?殺し合いですよ!?人を殺すんですよ!?」
「”げぇむ”って楽しいんだよネ?じゃあ、いいじゃん☆やろ♪やろぉ♪おネエちゃーん♪」
「楽しくないです!なぞは、やりたくないです!」
なぞの祈りは届かなかった。というより、始めからプラムには殺し合いをするという意識はなかった。
ただ、”ゲーム”という言葉に釣られてはしゃいでるだけで、殺し合いたくて参加しているのではなかった。

(高度から見て、結構な距離があるな。さーて、どうすっかな・・。)
リョナたろうは宙に浮く少女を地に叩き落とす術を考えていた。
なぞがいる手前、殺すわけには行かないがこのまま手を拱いている訳にも行かない。よって、急所を外して狙う必要があった。
殺すつもりで狙うのであれば十分特殊能力の射程圏内ではあるが、急所を外すのならばもう少し近づいて狙いたい。
幸い、少女はなぞに夢中だ。今ならば気づかれず距離を詰められる。そう思ったリョナたろうはひっそりとにじり寄る体勢を整える。
「ちっ!」
「キモーい!おニイさんキモい!こっちこないでヨ!」
リョナたろうの動きに気づいたプラムは得意のカマイタチをリョナたろうに向けて乱射する。
リョナたろうは素早くバックステップを繰り返しカマイタチをかわす。
「『キモい』って!!このガキ!!」
「アハハ、キモいおニイちゃん怒ってるぅー☆コワーい♪」
「テメっ!降りてきやがれ!ぶっ殺してやんよ!!」
「兄様っ!!君、止めるです!!」
「むぅー!『君』じゃないよー!プラムだよー!おネエちゃん!」
プラムはぶーぶー文句を言っているがその顔は実に楽しそうな笑顔のままだった。
(あのガキ!こっちが下手にでてれば!もう許せん!)
「なぞ!とりあえず、先に逃げろ!俺は後から追いかける!」
「えっ!でも、リョナたろう兄様を置いて逃げるなんて・・」
「いいから、兄様を信じろ!」
「・・・分かったです!」
なぞは割れた窓ガラスを軽く飛び越え外へと走り出す。
「あっ!おネエちゃん待ってー!待ってヨー!」
リョナたろうとにらみ合っていたプラムは、なぞが外へ出たことに気づいて追いかけようとする。
(バーカ!氏ねクソガキ!)
リョナたろうは後ろに気を取られている少女に向かって意識を集中させる。
「・・くっ!このクソガキ!!」
「エい!エい!おマエのせいで、おネエちゃん行っちゃったじゃないかっ!」
リョナたろうの能力発動よりも早く、プラムは怒りを露わにしてカマイタチを乱射する。
リョナたろうは避けるだけで精一杯だった。彼女との距離がどんどん離れていき、気づけば特殊能力の射程圏外だった。
「ふーんだっ!もうこっち来ないでよネ!キモいんだからっ!!」
「あっ!ゴルァ!待ちやがれ!」
プラムは素早く踵を返し、なぞの走っていた方向へと飛び去った。リョナたろうも急いで後を追う。

ーーーー
=A-2(X2Y4);商店街;1日目AM7:40=
遊ばれている。傍から見れば誰もがそう思うだろう。
サボりがちだったとはいえ日々の修行で鍛えた身のこなしは、本来ならばそう簡単に追いつかれる物ではなかった。
しかし、今のなぞには走り回るには適さない巫女服と、抱きかかえた女性とその荷物という2つの枷があった。
「くっ!もう止めるです!こんな事、楽しくないです!」
嫌な予感を頼りに紙一重で見えない斬撃をかわしながら、なぞは無邪気な笑顔で追いかけてくる小悪魔に叫んだ。
「エェ~、ナンでぇ~?あたしは楽しいヨ☆アハハ♪」
プラムの飛行能力を持ってすれば、今のなぞを追い越し回り込む事はたやすい。
しかし、プラムはあえてそれをしない。彼女はなぞとの”追いかけっこ”を楽しんでいるのだ。
「エい!これでもクらえ☆」
「!!・・もう、いい加減に止めるです!!」
「ワー!おネエちゃんスゴーい☆後ろに目があるみたい!」
「いい加減にしないと、なぞ、怒るですよ!」
「キャー☆おネエちゃん怒ったー♪」
プラムは本当に楽しそうな表情でなぞにカマイタチを浴びせる。
殺すつもりはまったくない。ただ、この”追いかけっこ”が何とも言えないほど楽しくて仕方ない。
できる事なら何時までもこうして続けていたい、だから止めない。
「!!」
「スゴい☆スゴい☆もっとやって!」
プラムは可愛い服を着た緑色の髪の女性が、後ろを向いたまま避ける様を見たい一心でカマイタチを打ち出した。
「うーん・・。」
「あっ!首引っ込めるです!」
「んー?・・・!!」
見えない斬撃が自分の腕の中で寝惚けて首を持ち上げた女性の顔を襲った。
そして、彼女は無残にも斬撃の餌食になってしまった。なぞはそう思い咄嗟に目を瞑った。
しかし、真実は違った。幸運にも彼女の凄惨な予想は外れたのだ。
それなのに何故か、なぞは喜べなかった。
今自分の腕の中に感じる気配は、眠り惚けていた頃の彼女のそれでは無かったからだ。
荒れ狂う大河の如き激しい怒りと殺意がなぞの全身を滅多刺しにする。最狂最悪の鬼神の目覚め、その瞬間に立ち会ってしまった。
今動いたら絶対に殺される。なぞは思わず足を止めてしまう。
「スキありー♪」
「!!しまっ・・きゃあ!」
何かに思い切り突き飛ばされた。なぞはそのまま尻餅をついてしまう。
その頭上を見えない斬撃が通り過ぎたらしく、なぞの目の前の地面を鋭く抉っていた。
しかし、今のなぞにはそんなことなどどうでもよかった。
もっと恐ろしいモノが、目の前に居る。なぞの本能が激しく警鐘を鳴らしていた。

「アハハ♪おネエちゃんスゴーい!」
プラムは自身が呼び起こしたモノの存在に気が付かなかった。
なぞのこと以外まったく見えていなかったから当然といえば当然だった。
「・・・うるさい。」
「えっ?・・・あれ?おネエさん、だーれー?」
「うるさい。」
「おネエさんも、あたしとあーそー・・」
「うるさい!」
「ひっ!」
プラムは思い切り怒鳴られて思わず言葉を詰まらす。
そして、彼女から発せられてる激しい怒りと殺意が自身を激しく貫いていることに今になって気が付く。
「私は寝たいんだ!こう五月蝿くちゃぐっすり眠れないんだ!分かるか!チビ!」
番はフラフラと、しかし真っ直ぐにプラムとの距離を詰めていく。
「うぅー!お、おマエなんて大っ嫌い!どっか消えちゃえ!」
プラムは我武者羅にカマイタチを近づいてくる彼女目掛けて放つ。
「ナンで!?ナンでクらわないの!!ネェ!」
どう見ても、フラフラと歩いているようにしか見えない。
しかし、番はプラムの放つカマイタチを全て紙一重で避けていた。
「うるさい!私はな!うるさいヤツが大嫌いなんだ!」
「そ、そんなの知らないヨ!あたしはただ、遊びたいだけだモン!」
プラムは少しずつ後退して行く。これ以上近づかれたらあの鬼女に取って食われる。そんな予感がしていた。
「いい加減、黙れチビ!」「ヒッ!」
番は前方に素早くステップをしながら徐にバッグに手を突っ込み、そして”何か”を取り出し振り上げる。
プラムは反射的に攻撃の手を休め素早く後退しようとする。
「私はな!」「えっ?・・えっ!?」
番は力任せに”何か”を振り下ろす。
プラムは届くはずが無いそれに油断して、後退の手を緩めてしまった。
しかし、振り下ろされた”何か”は突如形を変え、ぐんぐんとプラム目掛けて伸びていく。そして・・。
「寝たいんだよ!!」「あっ?れっ?・・・!?!?」
気づいた頃には遅かった。番の振り下ろした”何か”は確実にプラムの身体を捉え、切り裂いていた。

ーーーー
「うぅー!お、おマエなんて大っ嫌い!どっか消えちゃえ!」
ようやく俺が追いついた時、事は既に起きていた。
あのむかつくクソガキが、何かに脅えたような甲高い声で喚いている。
俺にはその理由が直ぐに分かった。と言うか、この状況では分からない方がどうかしている。
「ナンで!?ナンでクらわないの!!ネェ!」
恐怖の主は、あのガキが滅茶苦茶に放つ魔法をいとも簡単にかわしゆっくりと近づいている。
俺があのガキだったら、恐らくは同じように恐怖に顔を引きつらせ、
今まで口に出したこともないような情けない泣き言を言いながら、滅茶苦茶な攻撃を繰り出していただろう。
「うるさい!私はな!うるさいヤツが大嫌いなんだ!」
「そ、そんなの知らないヨ!あたしはただ、遊びたいだけだモン!」
逃げようにも絶対に腰が抜けて満足に動けまい。
あのガキもそうなのか、さっさと後退すべき所を少しずつ後退することしかできていない。
俺はとりあえず、この場で立ち止まって様子を見ることにした。
「いい加減、黙れチビ!」「ヒッ!」
(・・ってか、アレは・・よく見りゃなぞにひっついてた置物じゃねーか?)
よく見れば、恐怖の主の顔には見覚えがあった。
にわかに信じがたいが、どう見てもやはりなぞと一緒にいてずっと寝ていたあの女だった。
(ん?なんか取り出したぞ?)
彼女がバッグから何かを取り出した。アレは、俺が漁った時に見かけたステキデザインの首飾りだ。
(あんなの取り出して何する気だよww実はまだ寝惚けてるんじゃねーのか?ww)
首飾りを振り上げる彼女を見て、俺は思わず噴出しそうになった。どう見ても、あの首飾りはただの首飾りだ。
確かにデザインは俺好みの前衛的デザインではあったが、所詮装飾品。この状況ではクソの役にも立たない。
事もあろうにあの女はそれを取り出して、今にも振り下ろそうとしているのだ。噴出さずにはいられない。
「私はな!」「えっ?・・えっ!?」
(って、ちょwwおまwwww・・・まじっすか?)
彼女に力任せに振り下ろされた首飾りは、突如その姿を大きく変えた。
信じられないことに、それは数メートルは余裕で越す刀のような物に変わったのだ。
あのステキデザインの首飾りにあんな能力があろうとは、盲点だったと言わざるを得ない。
(まぁなんにせよ、あのクソガキ\(^o^)/オワタwザマーミロだぜww)
俺はあのガキが出鱈目に伸びた刃に引き裂かれる様を見て、ニヤりと笑った。

ーーーー
「あ・・れ・・?ナニ・・・コレ・・・?」
プラムは蚊取り線香の煙にあてられた蚊のように力なく墜落して行く。
余りに突拍子も無いことだったためか、自分の身に何が起こったのかまだ理解できていない。
「!!?!!?!」
地に身体がついたかどうか、その頃になってようやく自分の身に起きた惨劇を理解する。
「ヒぎゃああああああああ!!」
全身を焼け付くような激痛が走る。見る見るうちに目の前の地面が真っ赤に染まる。
「イダい!イダい!イダぁぁぁい!!」
「うるさい!!うるさい!!うるさい!!」
「イヤあ゛あ゛あ゛あ゛!!」
「黙れ!!黙れ!!黙れ!!」
番の怒りは臨界点をとっくの昔に超えていた。
何となく振った得物が予想以上に扱いにくかったせいか、一撃でうるさいヤツを黙らせることができなかったからだ。
こうなるとうるさいヤツは余計うるさくなる。今までの経験上、番はそう確信していたし、事実今回もそうだった。
「ダズゲデ!ダスゲテヨォォ!!」
「私は早く終わりにして寝たいんだ!さっさと黙れ!!」
気づくと番の手にある”何か”は何時もの愛刀と同じぐらいの程よい長さの得物になっていた。
これなら次は確実に黙らせることができる。番はやっと訪れるであろう至福の時を想像して歓喜の笑みを浮かべた。
さっさと、あのうるさいのを黙らせて寝る。そう心に決めて番は一歩ずつ歩み寄る。

「や・・・止めるです!」
突然、後ろから声をかけられた。声質から言って女の声だ。
目の前のうるさいヤツを黙らせるのが先だったが、ふと何処かで聞き覚えがある気もして振り返ってみる。
そこには何か怖い物を見たような顔でこちらを見ている緑色の髪の女がいた。
「ひっ!」
怖い。自分から声をかけたはずなのに、なぞは怒りと殺意に満ちた目に睨まれたじろいだ。
「・・・何?あんた、誰?」
「えっ・・?あっ・・。」
よく考えれば今まで一緒に居たのにお互いに名乗っていない。彼女の反応は当たり前だった。
「・・用がないなら黙ってて、私忙しいから。」
踵を返す鬼神に対してなぞは、勇気を振り絞って再び話しかけた。
「だ、ダメです!」
「あっ?ダメ?何が?」
番は再び振り返る。やはり、面識は無いはずなのに何処かで聞き覚えがある声。
もしかしたら昔何処かで会ったのかもしれない。
しかし、それはそれ、これはこれ。2度も邪魔されたのでいい加減に腹が立ってきた。
「その娘【こ】、殺しちゃダメです!」
何を言うのかと思えば、あのうるさいチビを黙らせるなと?じゃあ、何か。この女は私に寝るなと言うのか。
番は怒りを込めた声で切り返す。
「あんた、あのチビの何?仲間?」
「仲間・・じゃないです。」
「じゃあ、別にいいじゃん。黙っててよ。」
「別に良くないです!人殺しはダメです!」
「ああもう!いい加減しないと、あんたも・・・黙らせるよ?」
「ひっ!・・で、でも・・。」
番はギロりと睨みつける。睨まれたなぞは恐怖のあまり言葉を詰まらせる。
怖い。でも、やはりこのまま見ているわけには行かない。
目の前で人が殺されようとしているのだ。もし、このまま見過ごしたら、なぞ【わたし】はきっと一生後悔する。
何とか、何とかしなきゃ!なぞは己を縛り付ける恐怖心を払いのけようと必死に足掻く。
「イタイ!イタイ!ウワアアア!」
「本当にうるさいな!」
「ヒッ!・・も、もう・・うるさくしないから・・ダスゲてヨ!ヴェエエン!」
プラムは恐怖と激痛についに耐え切れなくなり、わんわんと泣き出す。
番にはそれが更に癇に障った。やはりこうなるとうるさいヤツはもっとうるさくなる。さっさと黙らせよう。
「泣くな!うるさい!黙れ!」
番は手に持った得物を振り上げる。

「ヒィィ!イヤ!イヤああ!!」
「さっさと、黙れ!!」
「もう止めるですぅ!!」
突然、後ろから抱きつかれ番は思わず手を止め後ろを確認する。
あの女が事もあろうに、涙で顔をグチャグチャにしながら私の身体に抱きついていた。
「何するんだ!離せよ!」
「イヤです!」
離したらこの鬼神は躊躇いも無く、あの少女に手に持っている得物を振るうだろう。
確かに彼女の怒りも尤もだが、だからと言ってこの仕打ちは明らかにやりすぎだ。殺すなんてもってのほか。
それに、眠っていた頃の彼女は・・。
「貴女は!本当は心の穏やかな女性【ひと】です!そんな女性が、人殺しなんてダメです!」
「うるさい!あんたも黙れ!!」
番はしがみ付いて離れようとしないなぞにいい加減我慢の限界だった。
「黙らないです!なぞは!人殺しを見過ごすぐらいなら、死んだ方がマシです!」
なぞは彼女の発する怒りと殺意の激流に流されないよう、必死にしがみ付いた。
「そうかい!」
番はついに堪忍袋の緒が切れた。手始めに肘鉄を食らわし、離れた所を持っている得物で斬り捨てる。
そのつもりだった。あの風が流れてくるまでは。
「じゃあ、死ね・・ばっ?」
本当に一瞬だった。番の鼻腔を擽る’いい匂い’、この匂いには何だかとても覚えがある気がする。
実によく眠れる匂いだった。刹那、曖昧だった記憶の断片が繋がりだす。
「あんた・・だったんだな。あの’枕’。」
そうだ。この匂い。この暖かさ。間違いなく、あの時私が見つけた’枕’だ。
すると、突如待ちに待った至福の感覚が私を襲う。私はもう、居ても立っても居られない。
このまま微睡【まどろみ】に身を任せたい。それ以外に何も考えられないし考えたくもない。
「あんた・・名前は?」
直ぐにでも来るであろう衝撃に備え目をぎゅっと閉じていたなぞは、番の予想外の言葉に驚き目を開ける。
「なぞ。・・です。」
なぞは恐る恐る答える。
「なぞ、か。なぞ。あんたからは’いい匂い’がする。よって、私、門番【かどのつがい】専用枕に決めた。」
「ふえっ?」
「決めたから・・・離れる・・なよ?・・・zZZ」
「はわわっ!・・・寝ちゃっ・・たです。」
番はなぞに倒れ込むように眠りに落ちた。なぞは慌てて番を抱きとめる。
門番と名乗った彼女は、あの時と同じ穏やかな寝息を立てていた。
「ZZz・・・ん、でもやっぱ・・・ちょっと硬い・・zZZ」
「また・・」
「ZZz・・・でも、そこがいい・・zZZ」
なぞは言いかけた言葉を引っ込めると、夢の中に居る彼女に優しく微笑みかけた。

「タスけて・・タスけてヨ・・もう、うるさくしないから・・ウゥッ・・。」
弱々しくうわ言のように繰り返す少女の声を聞き、なぞは大切な事を思い出す。
見たところ、急所は外れているみたいだが出血がひどい。
彼女の体型から考えると恐らく一刻の猶予もない。とにかく止血しないと彼女が絶命してしまう。
なぞは手早く番を背負い、バッグからさっき着替えた自分の衣装を取り出す。
(あうう・・母様・・・ごめんなさいです!)
なぞはそう心の中でつぶやくと同時に衣装を破り、包帯の代わりとして使えるよう加工した。
「おネエ・・ちゃん・・。タスけて・・くれるの?」
「助けるです!」
なぞはプラムの脇に座り込むと仰向けにする。
そして、プラムの上半身を軽く抱き起こし、衣装で作った包帯を手早く巻き始めた。
「!!・・イタい!イタいヨ!おネエ・・ちゃん!」
「我慢するです!おネエちゃんを信じるです!」
兎に角これ以上、傷口が開かないようキツく締める。
これが本当に正しいのかは分からないが、今はこうする以外思いつかない。
なぞは一生懸命に包帯を巻いた。
「でも、おネエちゃん・・どうして・・?」
プラムには分からなかった。今まで、プラムが出会った事のある人間は必ず2つのタイプの内のどちらかだった。
1つは、ただ只管に逃げ回り仕舞いには顔を涙と鼻水でグチャグチャにしながら動かなくなる人間。
1つは、血相を変えて仕返しをしようと血眼で追いかけてくるが結局動かなくなる人間。
今、目の前に居る女性は、ずっと前者の人間だと思っていた。あの化物が現れるまではそういう流れだった。
しかし、今目の前に居る女性は2つのタイプのどちらでもなかった。
涙と鼻水で顔をグチャグチャにしながらも、自分を助けようとしている人間。
あたしが初めて出会うタイプの、人間。
「決まってるです!!プラムが、『助けて』って言ったからです!」
なぞは、涙と鼻水で顔をグチャグチャにしながら包帯を巻いている。
「おネエちゃん・・ウワアーン!おネエちゃぁん!」
プラムは胸の奥にとても暖かい”何か”を感じて、思い切り泣きながらなぞの巫女服の裾を握った。
「・・・もう喋っちゃダメです!傷に響くです!」
包帯を巻き終えたなぞは、泣いているプラムに軽く覆いかぶさるような格好で、優しくしっかりと抱きしめた。
暫く泣いていたプラムは、何時しか眠りについていた。

ーーーー
=A-2(X2Y4);商店街;1日目AM7:50=
なぞの懸命な祈りが通じたのか、それとも妖精族の持つ治癒能力のおかげなのか。
プラムは一命を取り留めた。なぞは優しくプラムを抱きしめている。
「うー・・・ん・・。」
「・・あっ!気が付いたですか?」
「!?」
意識を取り戻したプラムは、なぞの顔を見るなり暴れだす。
仕返しされる!怖い!プラムはそう思い逃げだしたい一心で精一杯暴れる。
「わわわっ!落ち着くです!そんなに動いたら危ないです!」
なぞは何とかプラムを落ち着かせようと呼びかける。
「ヤダ!ヤダ!離して!あたしに仕返しするんでしょ!!離してヨ!!」
「なぞは『仕返し』なんて、絶対にしないです!」
「ウソだ!!信じられナイ!!離して!あたしを離してヨ!!」
プラムはなぞの顔や背中を力いっぱい叩く。
なぞは、時折少しだけ痛そうな顔をするが何も言わずにっこりと微笑む。
「大丈夫・・です。・・なぞを、信じるです。」
「ウソだ!どうせ、そう言ってあたしに仕返しするに決まってるモン!!」
そうだ。確かに助けてくれたとはいえ、仕返しをしてこないとは限らない。
今まで、イタズラをした相手から仕返しをされなかった試しはない。多かれ少なかれ仕返しされた。
目の前の彼女も腹の底では、助けたフリをしてあたしを油断させ仕返しをしようと考えているに違いない。
現に今、あたしを離そうとしない。何故かと言えば理由は1つ。
今のあたしに風を操れるだけの力が残って居ない事を知っているからとしか思えない。
「違うです!なぞは・・」
「離してって・・」
プラムの手に、先の戦闘によってできたのであろう程よい大きさの石が触れる。
「言ってるノ!!」
「!!」

プラムは咄嗟に手に石を握ると、力いっぱいなぞの頭を目掛けて振り回す。
ガツン!と、鈍い音が響いた。
「だいじょうぶ・・。なぞを・・信じるです。」
「!?」
なぞの額から真っ赤な血が流れる。それでもなぞは仕返しをする素振りを見せない。
そればかりか、決してその笑顔を崩そうとしない。
「ど、どうして!おネエちゃん!痛くないノ!怒ってないノ!」
「プラムは、なぞが怖い・・ですか?」
「えっ!?」
「なぞが・・怒ってるように、見えるですか?」
「そ!そんなの・・・そんなの、わかんナイ!!」
そう叫んでプラムは思わず目を逸らそうとする。
「目を逸らしちゃダメです!!しっかり、なぞを見るです!!」
なぞが突然大きな声を出し、プラムを叱る。プラムは驚いて再びなぞと目を合わせる。
「・・なぞが、怖いですか?なぞが・・嫌いですか?」
なぞは額から流れる血も背中や頭の痛みも無視して、微笑みながらプラムを見つめる。
プラムは何時しか暴れることを止め、ただじっとなぞを見つめていた。
「なぞは・・プラムが好きです。」
「ななっ!ナニ言ってるノッ!あたしは、おネエちゃんなんかっ!・・」
「プラムは!本当は良い娘【こ】です!ただ、淋しかっただけです!構って欲しかっただけです!」
「チガう!あたし!淋しくなんか!淋しくなんかぁ!!」
プラムは泣きながら必死に噛み付く。自分でもどうして泣いているのか分からないが、涙が止まらなかった。

「・・じゃあ、どうして殴らないです?」
「えっ?」
「その石で、もっと沢山、なぞを思い切り殴れば・・逃げられるですよ?」
「!!」
プラムは自分が石を握っていたこともすっかり忘れていた。
避けるつもりは微塵もない、彼女を取り巻く空気がそう言っている。
今ならば、さっきと同じように振り回すだけでなぞに当てることができるだろう。
恐らくは後1回。後1回繰り返せば、彼女の言うとおり、逃げられる。
プラムはゆっくりと石を叩きつける体勢を取る。
(アレ・・?な・・ナンで?)
突如、金縛りにあったかのように身体が動かなくなる。
目の前の女性が何かしたのかとも思ったが、その素振りはない。・・・犯人は、”あたし”だった。
「うっ・・ううっ・・・。」
痛い。頭がくらくらしてきた。ちょっとヤバいかも。なぞは少しだけ弱気になる。
でも頑張らなくちゃ!なぞは目の前で涙を流してもがき苦しむ少女のため、気力を振り絞る。
「ウワァァン!おネエちゃぁん!!」
プラムは手に持っていた石を地に投げ捨て、目の前の暖かい笑顔の女性に思い切りしがみ付く。
なぞはしがみ付くプラムをゆっくりと優しく抱きしめる。
「おネエちゃんは・・プラムの”おネエちゃん”です。」
「ウエーン!おネエちゃん!痛かったヨネ!痛かったヨネ!あたし!あたしぃ!!」
「・・おネエちゃんは、もう何ともないです♪」
なぞは大声でエンエン泣きながら思いきりしがみ付くプラムの頭を、よしよしと優しくなでて宥める。
その様子は、傍から見ればさながら本当の姉妹のようだった。

本編その2へ続く