14スレ目の74(ななよん)の妄想集@ウィキ

ウエストパンクへようこそ。 > ACT-02 > #03


※上記の広告は60日以上更新のないWIKIに表示されています。更新することで広告が下部へ移動します。

「わ、私のって・・・。 や、やっぱり貴女がイスラ、さん?」

二人の『子供』の内、あの声の主だった方が応えた。
質問に質問で返されたことが少しばかり癇に障り、私は怒りの言葉を返そうかと思った。
その時だった。

「あっ!」

声の主が突然驚いたような声をあげた。
その直後、もう一人の『子供』が私の方へと駆け寄ってくる気配を感じた。
しかし、その足音はどこか不自然で、酷くふらついているような感じだった。

「危ないっ!?」
「っ!?」

声の主が叫んだのと、駆け寄ってくる『子供』が前のめりにつんのめった足音が聞えたのは同時だった。
そして、私がその『子供』の目の前へ飛び出していたのも同時だった。
下腹部の辺りに、『子供』の頭の重みを感じた頃、私は自身が咄嗟に取った行動に驚き思わず怒鳴った。

「はっ、離れろっ!」

無意識の内に行ってしまった行動が理解できず、苛立ちに任せての一言だった。

(って、なにを言っているんだっ! 私はっ!)

そもそも私が飛び出して行ったのが原因だ、咄嗟の一言とはいえ流石に場違いな一言だろう。
無理に引き剥がしても良かったのだが、そういう事情もあったので、無理に引き剥がすことは流石に躊躇った。
私はとりあえず『子供』の肩の辺りに両手をおいて、相手から離れることを待った。
だが、その『子供』は一向に離れる気配も口を開く気配もなく、次第に私は苛立ちを募らせた。

「お、おいっ! 聞いているのかっ! って!?」

私は驚きの声をあげた。
『子供』が突然、私の腰に手を回してきたからだ。

「は、離れろって言うのが、聞えな・・・っ!?」

私は思わず言葉を詰まらせた。
『子供』の手の動きのたどたどしさ、不器用さが非常によく知った物だったからだ。

「お、お前、まさか・・・!?」

私がその先を言うよりも先に、あの声の主が口を挟んできた。

「そうです・・・。 彼女は貴女と同じ、光のない世界を生きています。」
「なっ!?」

私は思わず声の主の方へ顔を向けた。
私は自らの目のことは一言も話してはいない、それなのに何故声の主は私の目のことを知っているのだろうか。

「お前、どうして・・・!?」
「それだけじゃありません、彼女は音も声もない世界に生きているのです、イスラさん。」
「――っ!?」

今私に抱きついている『子供』がそんな境遇であることを知り、私は言葉を詰まらせてしまった。
勿論、似たような境遇の生き物には今まで何度か出会っている。
ただし、今までは私のように生まれついての物か、怪我や病気の後遺症による物であるかのどちらかでしかなかった。
だがしかし、この『子供』は違う。
生まれつきにしては動きがあまりに不慣れすぎで、かと言ってそんな後遺症が残るような事態に巻き込まれた形跡も感じられない。

(じゃあどうやってそんな境遇に? それに何故、声の主は私の見ている光景のことを知っている?)

私の素性を知っているとすれば、人伝で聞いたことがあるか、過去に一度は出会っていたかのどちらかだ。
だが、この声の主から受ける気配ではとてもそんなツテがあるとは思えないし、出会った記憶もない。

(・・・コイツら、本当に何者なんだ?)

二人とも敵意は全く感じられないし、どう贔屓目に見てもまともに戦えそうにない感じがするが、それ故に怪しい。
そう考えた私が、二人に対して警戒心を強くしていった時だった。

「だから、その・・・。 お願いです、貴女の力で彼女を救ってください、イスラさん。」
「・・・はっ?」

声の主の余りに突拍子のない台詞に、私は眉をひそめた。
声の主は私の表情の変化に気付いていないのか、何事もなかったかのように続きを話す。

「光も音も声もない世界から、彼女を救いだせるのは貴女しかいないのです。」
「わ、私しかいない、だと・・・?」
「どうかお願いします、引き受けてくださいっ。」

言い切ると同時に声の主が勢いよく私に頭を下げたのだろう。
最後の一言は地面にぶつかり反射した音の混じりの物だった。
引き受けようという考えが何故か脳裏に浮かんだが、私はそれを冷静にいなして切り返した。

「断る。」
「えっ、そうですかっ! 引き受けてくれ・・・ないんですかぁっ!?」

声の主は心底驚いたらしい、今まで出したことがないぐらいの大きな声量で叫んだ。
その驚きように少しだけ意志がぐらついたが、すぐに気を取り直して応えた。

「当たり前だ。」
「そ、そんなっ! どうしてっ!」
「こっちが聞きたい、どうして私がそんなことを。」
「で、でもっ! イ、イスラさんなら、引き受けてくれるって・・・!」
「っ!?」

声の主の声音が少し鼻にかかったような声になり、私は言葉を詰まらせた。

(な、何故うろたえているんだ、私はっ!)

私は自分でも不思議なぐらいに慌てて言葉を続けた。

「だっ! だいたい、何故私のことを知っている! そもそも、お前らは何者なんだっ!」
「そ、それはっ・・・! えっとっ・・・!」
「さっさと答えろっ! それとも、なにか答えられないワケでもあっ!?」

私の言葉はそこで遮られてしまった。
私に抱きついたままだった『子供』が突然、私のことを強く抱きしめ顔を埋めてきたからだ。
まるで私をなんとかして宥めようとしているかのような行動に、私は見事に宥められてしまい溜め息をつく。

「・・・答えろ。 お前らは何者で、何故私のことを知っている?」

私の溜め息混じりの落ち着いた声に安心したのか、声の主は一度深呼吸をしてから応えた。

「僕の名前は、キリオス=クライス=デニル、そして彼女は妹の、カナン=ベリー=デニルです。」

声の主、キリオスが軽く会釈をしたのか、少しだけ声の発生源が上下に揺れる。

(歳の離れた兄妹だな・・・。)

キリオスの声がする高さとカナンの頭の高さとの差から、どう見積もっても5歳ぐらいは離れているだろうと私は考えた。

「貴女のことは、カナンが”カミサマ”にお願いして聞いてくれたのです。」
「・・・はっ?」

私はあまりの意味不明さに呆れ返り、返す言葉を失くしてしまった。
キリオスは私が押し黙った理由に気付けなかったのか、そのまま言葉を続けた。

「はい、彼らに捕まる少し前、カナンが”カミサマ”に『私達を救ってくれる人を教えてください。』ってお願いをしたんです。 そうしたら、”カミサマ”が貴女のことを教えてくれて・・・」
「・・・やめろ。」
「えっ?」

このまま放って置いたら、延々とこのふざけた話を続けられるだろう。
そう思った私はキリオスの話に強引に割って入った。
どうやら、キリオスにとっては予想だにしていなかった事態らしい。
なにが起きたのか全く分からないという声を上げて、呆然としてしまった。

「お前、私をバカにしているのか?」
「そっ、そんなことは・・・。」
「じゃあ、なんで”カミサマ”ってヤツにお願いしただけで、私のことが分かるって言うんだ。」
「そ、それは、その・・・。」
「それは、なんだっ?」

どうやら、キリオスはかなりマイペースなヤツらしい。
キリオスの口篭る様子から私はそう察し、キリオスのペースに合わせることにした。

(って、どうして私がコイツに合わせてやらないといけないんだっ!)

私は心の中で悪態をついた。
すると、恐らくは私の苛立ちを感じたのだろう、カナンが再び私に抱きつく腕に力を込め出した。

(ああーっ、分かった、分かったよっ。 待ってやればいいんだろっ?)

この短時間で何度も苛々していたせいか、私は大きく溜め息を付きながらカナンの後頭部辺りを軽くなでて、観念したことを伝えた。
するとすぐに、カナンの腕の力が抜けていくのが伝わってきた。
こんな『子供』に何故か宥められてしまう自分の不甲斐無さに呆れて、また大きな溜め息をついた時だった。

「詳しいことは僕も知らないのです。 ただ、カナンが”カミサマ”と呼んでいたものですから・・・。」
「・・・そうか。」
「私の中に居る、”カミサマ”がどんなお願いも叶えてくれるんだ。 と、カナンは嬉しそうに話してくれたんです。」
「どんな願いも、だと?」

私は以前、何処かの町に不思議な力で人々の願いを叶えている者がいるという話を風の噂で耳にしたことを思い出した。

(くだらん妄想話だとばかり思っていたが・・・。)

まさかと思い、私は少し話を掘り下げて聞いてみることにした。

「詳しく話せ。」
「あ、えっと。 カナンが言うには”カミサマ”にお願いすると、なんでも叶えてくれるそうなのです。」
「本当に、なんでも叶うのか?」
「なんでも、は言いすぎかもしれませんが、確かに殆どのことは叶いました。」
「信じられんな・・・。 本当になんでも叶うならば、私に助けを求める必要もないだろ?」
「それが、ダメだったのです。」
「ダメ? 何故だ?」
「捧げ物として”カミサマ”に捧げられる物が、もう彼女にはなかったのです。」
「捧げ物、だと?」
「・・・はい。 彼女の視力も聴力も声も、”カミサマ”にお願いした時の捧げ物として捧げてしまったのです。」
「なっ・・・。」

私は思わず言葉を詰まらせた。
確かに捧げ物として捧げた結果、奪われてしまったのであれば、カナンの不慣れな挙動も納得できなくもない。
だがしかし、本当にそんなことが在りうるのだろうか。

(本当に願いを叶えられると? ・・・まさかっ。)

私は否定してみるが、少なくとも今、カナンが置かれている境遇は事実だ。
カナンの境遇が先天的な物でも後遺症による物でもないとすれば、キリオスの話は本当なのかもしれない。

「・・・あの。」

私が押し黙ったのが気に掛かったのか、キリオスが申し訳なさそうに呼びかけてきた。
私はとりあえずはもう少し話を聞いてから判断することにして、小さく声を出して応じた。

「僕からも、その。 ・・・1つ、いいですか?」
「なんだ?」
「えっと、本当に、イスラさん。 ・・・ですよね?」
「はっ?」

今更、なにを聞くのかと思えば、よほど私が”カミサマ”とやらが教えてくれた人物像と違うのだろうか。
ふと気になったので、聞いてみることにした。

「そうだが、何故だ? ”カミサマ”とやらに聞いたのではなかったか?」
「は、はぁ・・・。 実は、僕が聞いたのは貴女の名前と特殊な道具のことと、その目のことぐらいなのです。」

特殊な道具を持った目の見えない者、確かにその情報だけでは当てはまるのは私一人とは限らないだろう。
それならば確かに確認をされたことは納得がいく。

(だが、何度も確認する必要はないはずだ。 コイツ、いったいどんな人物像を想像していたんだ?)

なんとなくではあったが、別の話題で軽く息を抜こうと思い、私は聞いてみることにした。

「お前はいったい、どういう人物だと思っていたんだ?」
「・・・えっと、怒らないで、くださいね?」

なんだか嫌な予感が脳裏を過ぎったが、一応首を縦に小さく振っておく。

「その・・・如何にも特殊な道具を持っていそうな怪しい格好をしている、やせ細ったみすぼらしいじょせ・・・ひぎぃっ!?」

私は黒曜石を巨大なハリセンのような形に変化させ、キリオスの頭を引っぱたいた。
何故かはよく分からないが、無性に腹が立ったからだ。
どうやらカナンには、その理由が分かっていたらしい。
特に宥めようとする様子がなかったこともあり、私の一撃は見事に直撃していた。

「ひ、ひどいですっ! 怒らないって言ったじゃないですかぁっ!」
「お、お前の想像していた人物像があまりに非現実的すぎるからだっ!」
「でっ! ですからっ! 想像していたよりもずっと若くて、カッコ良くて、その、キレイだったから、自信なくなっちゃってっ・・・!」
「なっ!? とっ!! 兎に角、話を戻すぞっ!!」
(って、私は何故、カッコ良いとかキレイとか言われたぐらいでうろたえているんだっ!)

私は吐き棄てるように怒鳴ると、元の話題に戻すためにわざと大きな咳払いを数回した。