14スレ目の74(ななよん)の妄想集@ウィキ

ウエストパンクへようこそ。 > ACT-01 > #06


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風の噂でしか聞いたことのなかった最強の巨獣を目の当たりにし、エアは驚愕の声を上げた。
鉄格子越しであるにも関わらず、想像していた以上の圧倒的威圧感を放つ巨獣に、エアは息を飲んだ。

「で、でもっ・・・! どうして・・・こんなっ・・・ところに・・・っ!?」

少しでも気を抜けば、立っていることさえままならなくなりそうな恐怖に耐えながら、エアは彼女に問い掛ける。
エアの問い掛けに、彼女は抱き寄せる手に力を込めるだけで答えようとはしなかった。
彼女は巨獣に視線を向けたまま、オニマスに問い掛けた。

「・・・そのコ、拾ったの?」
「はっ、だったらなんだっていうんだいっ!」
「悪いことしたの、もしかしてそのコのため?」
「そんなこと、どうでもいいだろっ! どっちみち、あんた達は此処で死んじまうんだからさっ!」
「じゃさ、最後に1つだけ。 ・・・そのコ、どうするの?」
「どうする、だぁ・・・?」

オニマスは怒りに身体を戦慄かせながら胸元に手を入れる。
少しして取り出された手には、小さな笛が握られていた。

「そいつはなぁ・・・こうするんだよっ!」

オニマスはそう怒鳴ると、手に持った笛を力任せに吹く。
すると、蚊が飛ぶような高く細い音が洞窟に木霊した。
その直後、突如として巨獣が雄叫びをあげ、目の前の鉄格子を強引に吹き飛ばした。

「ひっ!?」

吹き飛ばされた鉄格子の破片が、エアの目の前に打ち付けられ重い金属音を鳴らす。
エアは身体を思い切り撥ねさせると、彼女の身体にしがみ付きゆっくりとずり落ちていく。
彼女はエアの身体を支えながら、巨獣の様子を窺う。
巨獣と彼女の眼が合った途端、巨獣は高く頭を上げ、勢いよく振り下ろしながら吼えた。
圧倒的な威圧感が彼女とエアに叩きつけられるが、彼女は少し眼を細めるだけで視線を逸らさなかった。
しかし一方で、エアは遂に耐え切れなくなり悲鳴を上げた。

「――い、いやぁあああああぁああっ!!」

彼女は慌ててエアの方へ顔を向ける。

「いやっ! いやぁっ! 助けてっ! やぁぁっ!」
「エ、エアッ! 落ち着いてっ! 大丈夫だからっ!」

恐怖に泣き叫び頭を激しく振るエアを、彼女はきつく抱きしめて宥めようとする。
しかし、エアは彼女を全力で突き放しながら叫んだ。

「離してっ! 死にたくないッ! お父さんっ! お母さんっ! もうイヤッ! いやぁぁあっ! ――あ゛っ!」

エアの断末魔の悲鳴は一発の乾いた音に断ち切られた。
彼女がエアの頬をはたいたのだ。
呆然とするエアに、彼女は凛とした声で言う。

「諦めちゃダメだっ! キミはまだ、歩くことを諦めちゃダメだ、エアッ!」

前髪から覗く彼女の蒼く力強い瞳に見据えられ、エアは我に返りゆっくりと口を開く。

「旅・・・人・・・さん・・・。 わ、私・・・その・・・ごめん・・・なさい・・・。」

エアの謝罪の言葉に彼女は穏やかな笑顔で応える。
彼女の優しさに感激したエアが、お礼の言葉を口にしようとした瞬間だった。

「――きゃっ!?」

彼女に突然払い飛ばされ、エアは思い切り尻餅をついてしまった。
その直後、とても鈍くて嫌な音がエアの目の前で鳴る。

「――う゛あっ!!」

エアは彼女の叫び声で慌てて目を開いた。
すると、そこには・・・。

「た、旅人・・・さん・・・っ!?」

彼女の胴ほどはあろう巨獣の巨大な頭が、勢いよく彼女の腹に減り込み、そのまま目の前を横切って壁へ向かっている光景があった。

「ぐぇっ!!」

物凄い地響きと共に、彼女は巨獣の頭と壁に挟まれる。
彼女の背中を中心にひび割れがくもの巣のように細かく広がり、その勢いの凄まじさを物語っていた。

「・・・かっ・・・はっ・・・!」

剥がれ落ちる壁と一緒に、彼女の身体がずり落ちていく。
辛うじて両足を地に付けた彼女は、そのままゆっくりと蹲り、激しく咳き込んだ。
彼女の頭上では、巨獣が頭を大きく振り上げていた。

「旅人さぁぁーんっ!」

エアは彼女を呼び、注意を促す。
しかし、彼女は咳き込んだまま動かない。

(こ、このままじゃっ! 旅人さんがっ! 旅人さんがぁぁっ!)

このままでは、彼女は確実に巨獣の餌食になってしまうだろう。
しかし、巨獣どころか同じ人間とすら戦ったことのないエアには、どうすることもできなかった。
エアが自らの力のなさを悔やんでいると、巨獣が再びあの威圧的な雄叫びをあげた。

「い、いやぁぁぁっ!!」

彼女を助けられない悔しさと悲しさを込めて、エアは絶叫する。

(・・・困った・・・避けられそうに・・・ないや。)

一方の彼女は、その雄叫びで失った体力の回復が間に合わなかったことを直感していた。
彼女はせめてもの抵抗として、巨獣の姿をじっと見つめる。
雄叫びを終えた巨獣が身体を思い切り横に振る姿が映った。
彼女は巨獣が丸太のような尻尾で薙いでくることを予測し、軽く息を吸った。
そして、『ごめん、エア』と呟こうと思ったまさにその時。

(えっ?)

彼女は驚きのあまりに目を見開いた。
尻尾で薙ぎ払ってくるかと思っていた巨獣が、向きを直角に変えて目の前にあった石柱を切り裂いていたからだ。
巨獣は石柱を執拗に切り裂くと再び雄叫びを上げる。

(・・・もしかして・・・カレ・・・!)

その巨獣の挙動を見て、彼女はある閃きを感じた。
直後、彼女の閃きを確証へと変える出来事が起きる。

「――ちぃぃっ! なぁにやってんだいっ! ごらぁっ!!」

オニマスが巨獣の不可解な挙動に激怒し、小さな笛を更に強く吹いたのだ。
すると、巨獣は今までよりも大きな雄叫びを上げ、今度は頭で宙をかき混ぜながら地団駄を踏み始めた。

(――やっぱり! カレはっ!)

自らの閃きを確信した彼女は、歯を食いしばって立ち上がる。
そして、叫んだ。

「もうやめるんだっ! このコが壊れてしまうっ!」

自らを見据える蒼い瞳に、今までの彼女からはおよそ想像することのできない威圧感を感じ、オニマスは思わずたじろいだ。
だがすぐに気を取り直すと、怒鳴り返した。

「やめろだぁっ!? はっ! 聞けないねぇっ!!」
「なっ!? なんでっ!? このコが、壊れちゃってもいいのっ!?」
「アハハッ! 壊れるワケがないだろっ! コイツはどんな巨獣だって意のままに操れる、巨獣使い御用達の笛だよっ! 知らないのかいっ!」
「っ! ・・・それは知ってるよっ! でもっ! このままじゃっ!!」
「だぁぁもうっ! うっさい女だねぇっ! そんじゃあホントかどうか試してやるよっ!」
「――っ!? やめっ・・・っ!?」

彼女が叫びきるよりも早く、今までよりも一段階高い笛の音が響いた。

(くっ! とにかく、助けないと、カレはっ! まだ、歩き始めたばかりのカレはっ!)

そう思った直後、彼女は行動を起こしていた。
手段を考えるよりも早く身体が動いていたことに、彼女は驚きつつも自らの直感を信じることにして突き進んだ。
彼女が直感で取った行動、それは・・・。

「怖くないっ! 落ち着いてっ! あたしを見るんだっ!」

暴れ狂う巨獣の目の前で両腕を大きく広げて、叫びかけていた。
巨獣は彼女を見つけるなり、小さな咆哮をあげて。

「――ぐぅああぁぁぁぁぁっ!!」

・・・噛み付いた。
鋼鉄をも噛み砕く顎に、右肩から袈裟懸けに挟み込まれ、彼女は激痛に身体を弓なりに反らせて断末魔の叫びをあげる。
しかし、頭の中に重く鈍い音が響くのを感じながらも、彼女は歯を食いしばって叫び声を押し殺した。

「・・・だい・・・じょぶ・・・なに・・・も・・・こわ・・・く・・・ない・・・っ!」

一瞬でも気を抜けば奈落の底へ堕ちてしまいそうな意識の中、彼女は巨獣に呼びかける。
途切れ途切れだが、優しさが滲み出ている、そんな声色で彼女は呼びかける。
すると、不思議なことに巨獣は動きをとめた。
彼女は全身全霊を賭けた微笑みを浮かべ、ゆっくりと左腕で巨獣の頭を撫でた。

「ほら・・・あんな・・・物・・・ぜんぜん・・・こわく・・・ない・・・。 怖く・・・ない・・・よね?」

巨獣の息遣いが少しずつ、だが確実にゆったりと落ち着いた物へと変わり、顎の力が抜けていく。
彼女は深呼吸をしながら、ゆっくりと巨獣の頭を撫でる。

「ちぃぃっ! なぁにやってんだい! ふざけてんじゃないよっ!」
「っ!?」

オニマスは乱暴に笛を吹いた。
巨獣が再び顎の力を入れ始め、彼女は呻き声をあげる。
しかし、すぐに歯を食いしばって押し殺すと、叫びかけた。

「大丈夫っ! 怖くないっ! あたしが居るっ!」

巨獣の動きが再びとまる。

「あたしが、今、君の隣を歩いてるっ! キミは今、独りじゃないっ!」

巨獣がゆっくりと顎の力を抜き、彼女の肩から頭を離していく。

「キミは、独りじゃない。 だから、大丈夫。 怖がらずに、キミの歩きたいように歩くんだ。 ・・・いいね?」

彼女は、笑顔で巨獣の鼻先を撫でる。
暫く、低く唸っていた巨獣は突然、小さく吠えると彼女に再び頭を近づけて。

「わわっ!? ビックリしたなぁっ、もうっ。」

彼女の頬を優しく鼻先でこすった。
彼女は笑顔で、暫く巨獣の頭を撫でる。

「す、凄い・・・巨獣が・・・おとなしく・・・なっちゃった・・・!?」

あまりに想像を絶する出来事が今まで展開されていたため、今まで息をすることすら忘れていたエアは、呟くように感嘆の言葉を口にした。
そして、すぐに新鮮な空気を求めて何度も深呼吸をした。

「なな・・・どうしたって・・・・いうんだい・・・!? なにを・・・したんだい・・・!?」

どんな巨獣でも必ず従わせられるといわれている笛の音を吹いているのに、巨獣が従おうとしない。
そんな信じられない光景に、流石のオニマスも驚愕のあまりに言葉を詰まらせてしまった。
巨獣の頭を撫でながら、彼女は呟いた。

「・・・まだ答え、聞いてなかったね。」
「あぁっ?」