14スレ目の74(ななよん)の妄想集@ウィキ

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14sure74

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オルグはネスに飛び掛り、振り上げた剣を振り下ろそうとした。
その瞬間、ネスは口元に笑みを浮かべ、右手で剣の柄を握る。
そして掛け声と供に思い切り右方向へと剣を引っ張った。
鞘を固定していたベルトが勢いよく千切れ飛び、鞘が抜け落ちる。
しかし、ネスはそれに構うことなくオルグの剣を受けるように振った。

「――ちぃっ!!」

オルグは振り下ろしていた剣を寸での所で止めて飛び退く。
ネスの振った剣は、オルグの剣を普段と変わらぬ威力で斬り落とし、直前までオルグが居た空間を薙いでいた。

「何故・・・っ!?」

オルグの疑問はネスの飛び蹴りによって強制的に中断された。
オルグは仰向けに地面へと叩きつけられる。

「くっ・・・やってくれた・・・なっ・・・!!」

慌てて起き上がろうとした所に、ネスに切先を向けられ動きを止めた。
ネスは肩で息をしながら、勝ち誇った笑顔でオルグを見下して口を開く。

「ふふふ・・・これで・・・終わりだな・・・オルグ・・・!」
「ちぃっ・・・!」

ネスがゆっくりと剣を引き、突き刺そうとした刹那、発砲音と供にネスの頬を掠める物体が1つ。
ネスは剣を引いたまま、視線を動かし発砲主を捉え問い掛ける。

「・・・なんの、つもりだ。・・・アスッ!」
「ど、どうして、撃ったんですか・・・アスさんっ!」

アスは暫しの沈黙の後、一歩離れた所で困惑の表情を浮かべるラスを一瞥してゆっくりと口を開く。

「彼に、聞きたいことがあるだけですわ・・・。」
「・・・そんなこと、知らねぇよ。・・・邪魔すんな。」

アスを捉えるネスの視線は、恐ろしく冷たく殺気に満ちていた。
アスはその殺気立った視線を弾き飛ばすように、大きく溜め息をついて口を開く。

「・・・その言葉、そっくりそのまま、お返し致しますわ。」

アスは同じように冷たく殺気に満ちた視線で、ネスの視線に応える。

「貴女が何故彼を狙うのかは存じませんが・・・、私の邪魔をしないで下さらないこと?」

アスはもう一丁、ハンドガンを召喚した。
そして片方をオルグへ、もう片方をネスへと向けて構える。
次第に辺りを重苦しい静寂が包み込んだ。
それから暫くの後、国立資料館から静寂を吹き飛ばさんが勢いで爆発音が響いた。
その直後、車輪が高速回転する甲高い音が響く。

「なっ・・・!?」
(なんだあのデカブツは・・・っ!?)

ネスが甲高い音に反応して顔を向けると、そこには灰色の巨人が地面を滑るように走って近づいてくる光景があった。
その巨人が徐に右手を突き出すと、袖口の辺りから砂嵐のような連射音が鳴り響き、ネスの視界を瞬く間に銃弾で埋め尽くした。

(チェインガン・・・だとっ!?)

ネスは咄嗟に飛び退きつつ、身を捩って銃弾を避けようとした。

(くっ・・・!! 避けきれねぇ・・・っ!!)

しかし、あまりにも唐突過ぎる襲撃であったことにこれまでの疲労が重なり、避けきることはできなかった。

「つぁ・・・ぅっ・・・ぐっ・・・!!」

ネスの胴や四肢を掠めるように銃弾が抉っていく。
ネスはその衝撃で空中で体勢を崩し、地面へ落下する。

(――なっ!?)

灰色の巨人は既にネスの目の前へと迫っていた。
予想外の素早さにネスは驚愕しつつも身を丸める。
それとほぼ同時に、灰色の巨人の体当たりがネスの身体に食い込んだ。

「がはぁっ!!」
「――ネ、ネスさぁぁんっ!!」「ネスさんっ!!」

ネスの身体が勢いよく吹き飛び、地面を数回撥ねるように転がって止まる。
ラスとアスはあまりの事態に、咄嗟にネスの名前を叫ぶ。

(なっ!? なんですのアレッ!? 負傷中の所を不意打ちでとはいえ、彼女を一撃であんなに吹っ飛ばすなんてっ!!)

アスは突然目の前に現れた灰色の巨人の、強力な体当たりに驚愕していた。
ネスを突き飛ばした灰色の巨人は、オルグの前で停止し彼を左腕で抱え込むように持ち上げた。

「――にっ、逃がしませんわっ!!」

その光景で我に返ったアスは、すぐに灰色の巨人に向けてハンドガンを咆哮させた。
アスの動きに気付いた灰色の巨人は、オルグを銃弾から庇うようにアスへ肩を向けた。
その直後、灰色の巨人の身体に直撃した銃弾は甲高い金属音を鳴らす。
そして、ある物は明後日の方向へ飛んで行き、ある物は表面を少し減り込ませた所で力尽き地面へと落下した。

「ちぃっ!?」
(ハンドガンが効いてないっ!? 硬そうな見てくれは伊達ではないってことですのっ!? ・・・それならっ!!)

アスはハンドガンを投げ捨て、別の輝石を取り出そうとする。

「っ!?」

それよりも僅かに早く、灰色の巨人が右腕を持ち上げ、アスに突き出した。
アスは傍らで立ち竦んだままのラスを思い切り横へ突き飛ばし、自身は両腕を胸の前で交差して身を固めつつ飛び退いた。

「きゃあぁっ!!」
「ア、アスさんっ!!」

突き飛ばされたラスはすぐにアスの方へと顔を向け、起き上がりながら叫んだ。
同時にアスの足元を這うように銃弾の雨が降り頻る。
それは彼女の周囲の地面を無残な姿に変えていき、飛び散った泥飛沫がアスの自由を奪った。
その隙に灰色の巨人はオルグを連れ、来た道を戻るように滑っていった。

(く・・・意識が・・・。・・・待ち・・・やがれ・・・オル・・・・・・グ・・・。)

その様子が、ぼんやりとネスの瞳に映る。

(追わ・・・ねぇと・・・。動け・・・動けって・・・んだ・・・。くそ・・・くそ・・・・・・。)

思い通りに動かない四肢を呪いながら、ネスは気を失った。
その頃、ラスはアスの元へ駆け寄って声を掛ける。

「大丈夫ですかっ!?」

アスは大きく溜め息をつき、身体についた泥を払い落としながら答える。

「私は大丈夫ですわ。・・・それよりも。」

アスはネスの方へ視線を向ける。
彼女は気を失っているらしく、起き上がる様子はなかった。
ラスはアスの視線から、彼女が言わんとしていることを悟り軽く頷く。
そして、真剣な表情で口を開く。

「彼を追いかけたい気持ちは分かりますが・・・彼女を運ぶのを、手伝ってください。お願いします・・・。」

ラスは深々と頭を下げた。
アスは何処か後ろめたい気分になり、思わず背を向ける。
そして、大きな声で応える。

「い、今から追いかけても多分無理ですわっ!」

アスは一度大きく深呼吸をしてから、勢いをつけて振り向く。

「それに、治安部隊もいい加減駆けつけてくる頃合ですもの、此処は彼女を連れて撤収する方が利巧という物ですわっ!」

アスは何度も感謝の言葉を述べて頭を下げるラスを手で制し、ネスの元へと歩み寄る。
そして、近くに転がっている彼女の剣の鞘を拾い上げ、剣に手を掛けようとした。

「アッ、アスさんっ! それは僕が持って・・・」
「大丈夫、ブレイカー【コレ】が世界一重い剣だと言うことぐらい知ってますわ。」

ラスが慌てて止めに入るが、アスはこれを笑顔で制する。
そして、剣を鞘に収めようと左手で切先の辺りを軽く握った。

(まぁ、そうは言ってもそこまで重くは・・・って、あらっ?)

しかし、アスの予想に反して切先は全く持ち上がらなかった。

(くっ・・・ふっ・・・このっ!)

アスはなんとか浮かせようと少しずつ力を入れていく。

「・・・ふんぬぅぅぅぅーーっっ!!」

気が付けばアスは全力で剣を持ち上げていた。
その様子を心配そうに見つめていたラスは堪らず申し出る。

「あ、あのっ・・・やはり、僕がっ・・・」
「だっ、大丈夫・・・ですわっ!! 早く・・・参りますわよっ!!」

ラスの申し出を怒鳴り声で掻き消し、アスは剣を鞘に収める。
そして、鞘が抜け落ちないよう千切れたベルトで鍔に固定した。
それから一息ついて柄を両手で握って持つと、切先を引き摺りながら走り出す。
ラスは暫く呆然と立ち尽くしていたが、アスの怒鳴り声に急かされ慌ててネスの傍らにしゃがみ込んだ。
ラスは彼女の左腕に刺さった棒を手早く引き抜き、黒ずくめの男の衣装を少し拝借して応急処置を済ませる。
そして、ラスはネスを背負い、先を行くアスを慌てて追いかけた。

~~~~

日の出前、ラスの案内で一行はハルの自宅へと上がり、気を失っているネスを寝室のベッドに寝かせた。

「あ、その・・・ありがとう、ございました・・・。」

ラスは扉に近い壁に寄りかかってへたり込むアスに向かい頭を下げる。

「べ・・・別に・・・・・・どうって・・・こと・・・ありません・・・ですわ・・・。」
(まったく・・・あの剣・・・なんて・・・常識外れな・・・重さですの・・・。)

アスは笑顔で手を振って応えて見せた。
しかしその顔には生気がなく、ラスは心配そうにアスの顔を覗きこんだ。

「その・・・えっと・・・すみませんでした・・・アスさん。」
「あ・・・謝らなくても・・・よろしくて・・・よ・・・ラスさん。」
(まだ・・・全快まで・・・至らない・・・なんて・・・悔しい・・・ですわ・・・。)

少しずつではあるが顔色が良くなりつつあるアスの様子に、彼女の顔を覗きこんでいたラスは小さく溜め息を漏らす。
そして、ベッドの傍らにある椅子へと向かい腰掛けた。
死んだように静かに横たわるネスを、ラスは一瞥して窓の外を眺める。
窓の外ではあの騒動の後始末に追われ、治安部隊の人間や復旧作業の関係者が忙しなく動き回っていた。

「・・・ホント、まだ夜明け前だってのに、可哀想なこった。雨が止んだのが救いってトコだな・・・。」
「・・・あ、タクトさん。」

ラスが窓の外を眺めていると、袋に入った軽食と小さな水筒を二人分持ってタクトが現れた。
タクトはラスに持っていた軽食と水筒をゆっくりと投げ渡す。
それから、入口にへたり込んでいたアスにも軽食と水筒を手渡した。

「ありがとうございます。」
「頂き、ますわ。」

二人が袋に手を入れた時である。

「んっ・・・ぅ・・・っ・・・・・・。」

ネスがゆっくりと目を開け、上半身を起した。

「気がついて、良かったです。ネスさん。」

ネスは傍らで安堵の表情を浮かべるラスを一瞥し、左腕を押さえながら視線を一度周囲に流した。
そして、溜め息をついて呟く。

「・・・もっと、気の利くヤツだと思ってたぞ。相棒。」

その、低く消え入りそうな怒声で、室内の空気が急速に冷えていく。
外の喧騒が室内に響き渡るくらいの静寂を引き裂いて、ネスが再び呟く。

「・・・なんの、つもりなんだ。お前。」
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