14スレ目の74(ななよん)の妄想集@ウィキ

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14sure74

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ラスが彼女を捜し回っている頃、集落の外れにある荒地に彼女は居た。
道中でひったくった前開きの服と布を身に着け、左手に剣を携え佇んでいた。
その彼女を囲うように男が3人。

(最後、前に2人・・・後ろに1人・・・。得物はナイフ、出で立ちからしてアサシンか・・・。)

彼女は彼らを一瞥する。
彼らは右手にナイフを持ち、攻撃の機会を窺っていた。
彼女は剣を握る手に力を入れる。

(――来たっ!)
「うおおおーっ!!」

前方の二人がなにやら目で合図をしてから、片方が雄叫びをあげて彼女へと突進した。
彼女は剣を構え、男の突進に合わせて懐を目掛けて飛び出す。
男が彼女の姿を目前に捉え、得物を振るうよりも早く、彼女の剣が男の腹を水平に薙【な】いだ。
彼女は倒れていく男の脇をそのまま通り過ぎながら、剣を振り切った時である。

(ちっ!! ホッピングスラスターかっ! 捨て身で囮たぁ、やってくれるっ!)

突然前方で重い破裂音と土煙が巻き起こり、もう1人居た男が凄い速さで飛び出してきた。
彼女は振り切った剣を急いで返し、迎撃をしようとする。

「ぐっ・・・!」

しかし、今までの激戦で蓄積した痛手が彼女の動きを鈍らせた。
男はその隙に彼女の懐まで飛び込む。

「くらえっ!!」
「ぐがっ!! ・・・かっ・・・う゛ぁっ・・・!!」

男は身を屈めて当身をするように得物を突き入れた。
反動で彼女の身体がくの字に曲がり、男の肩に寄りかかりながら一瞬だけ宙に浮く。
彼女の手から剣がずれ落ち、男の背中を掠めて地面へ突き刺さる。
彼女はすぐに身を起し、腕を振り上げる。

「くっ・・・こ・・・の・・・・・・」

彼女が男を殴ろうとした時であった。

「う゛ぎぃっ!!」

全身に痺れるような激痛が走り、彼女の身を直立させる。
男が彼女に突き入れた得物を捻った【ねじった】のだ。

「やって・・・くれ・・・た・・・な゛っ!?」

男が捻った得物を引き抜きつつ突き飛ばした。
再び走った激痛に、彼女は為す術もなく吹き飛ばされる。
そして、後ろに控えていたもう1人の男に捕まった。

「離し・・・やが・・・ぎぁっ!!」

彼女が男の拘束を振り切ろうと肘を引いた時、男の持っていた得物が彼女の脇腹に突き入れられた。
彼女は激痛に身体を反らせ硬直させる。

「あ゛がっ・・・がっ・・・・・・ぅっ・・・」
「ふふっ・・・。手間かけさせやがって・・・このっ!」
「い゛っ!!」

男は突き入れた得物を捻った。
体内を抉られた痛みで、彼女の視点が激しくぶれる。

「このっ! ヤロっ! 思いっ! しれっ!」
「ふぎっ! がぁっ! ぐぅっ! ひぎっ!」

男は憎悪を込めて何度も得物を捻る。
その度に彼女は短い悲鳴をあげ、瞳から光が流れ出る血と供に抜け落ちていく。
何度目かの悲鳴を最後に、彼女はぐったりと男の身体に項垂れた。

「そろそろ終わりにするか・・・。」
「そうだな・・・。」

その光景を見て卑下た笑みを浮かべていた男の言葉に同意し、男は得物をゆっくりと引き抜く。
そして、虫の息の彼女を羽交い絞めにして無理矢理立たせた。

「これで、終わりだっ!」

彼女が前に立った男が振り上げた得物を振り下ろした。

「・・・うげっ・・・!!」

しかし、その刃は彼女の身体を捉えることはなく、そればかりか男は宙に舞っていた。
男はすぐに跳ね上がった首を下ろし原因を確認する。
そして、視界に飛び込んだ光景に戦慄した。

(あっ・・・あいつ・・・何処にあんな力を・・・っ!?)

彼女は突然意識を取り戻し、一瞬の内に拘束を解いて自分を殴り飛ばしたのだ。
そして、羽交い絞めにしていた男をたった一撃で戦闘不能にしてしまった。

(ば・・・化物だぜ・・・アレは・・・!!)

自分がまだ宙に浮いていることを考えると、まだ1秒立たないぐらいだろう。
それだけの時間で彼女は男2人、それも訓練を積んだ戦士を吹き飛ばしたのだ。

「化物・・・・・・めぇぇ・・・っ!?」

彼女は殴り倒した男から得物を奪い取ると、宙に浮いた男に向かって投げ付ける。
得物は真っ直ぐ男の身体へと突き刺さり、男はそのまま背中から地面へと落ちた。

「・・・そう・・・だ・・・私は・・・化物・・・・・・。」

彼女は自分の剣の元へとふらつきながら歩み寄る。

「化物人間【ヒューマノイドモンスター】・・・ネール=A=ファリス・・・だ・・・。」

彼女は崩れるように自分の剣に寄りかかる。
剣は押し倒され、重く鈍い金属音をあげた。
彼女は荒く息をしながら仰向けになる。

(くそっ・・・意識が・・・。)

身体が鉛のように重く感じ、意識が抗いがたい眠気を伴いながら深淵の底へと沈んでいく。
彼女自身の意思とは無関係に、彼女の瞳はゆっくりと閉じられていった。

(・・・なんで・・・・・・アンタが・・・こんな・・・・・・所に・・・・・・?)

瞳が瞼の裏の闇に呑まれる直前、この騒動に巻き込んでしまった男の姿が映った。
しかし、事実を確かめる間もなく彼女の意識は深淵の底へと堕ちてしまった・・・。

~~~~

「・・・・・・ぅっ・・・くっ・・・。」
「・・・あっ、気が付きましたか。・・・良かった。」

彼女が意識を取り戻したのを確認したラスは笑顔を見せる。
彼女は周囲に視線を泳がし、状況を確認してからゆっくり口を開いた。

「・・・医療施設か。・・・また、世話になった・・・みたいだな。」
「あれだけの人数に追われるなんて、貴女はなにをやらかしたんですか・・・。」
「色々と・・・な。・・・てか、アンタは何故・・・あそこに?」
「そ、それは・・・。」

ラスは少し間をおいてから、再び口を開く。

「・・・あのままあの場に居たら、色々と面倒なことになりそうでしたから。」

ラスは騒ぎを聞き駆けつけてきた治安部隊の、質問責めに遭いたくなかったからということにした。
彼女が心配だったという方が圧倒的に比重が重いが、その理由も確かにあったからだった。

「貴女を見つけたのは偶然ですよ・・・。」
「・・・・・・そうか。・・・すまねぇな。」
「別に気にしてませんよ・・・って!」

ラスは彼女が起き上がろうとするのを慌てて押さえ込んだ。

「どうして無理をするんですか!」
「・・・何故、私に構う? 私と、アンタは関係ない・・・だろ?」
「そっ、それは・・・っ!」

二人の間に静寂が訪れる。
ラスは静寂を払うように、態と大きく深呼吸をしてから切り出した。

「・・・・・・関係はあります。僕はこれから、貴女の相棒になる人間です。」
「・・・相棒、だと?」
「はい。・・・壊れたお店を直す資金を稼ぐため、僕は暫く旅をしようと思います。」

ラスは彼女を真っ直ぐ見据えて言葉を続ける。

「そこで、貴女がいつか返すと言っていた借り、貴女の旅に僕を付き合わせるということで返して貰いたいのです。」
「私の旅に・・・アンタを・・・?」

彼女にとってよほど意外な申し出だったのか、彼女は目を丸くしてラスに聞き返した。

「はい。僕としても護衛のファイターさんを探す手間が省けますし、お願いしたい・・・」
「断る。私は、一人で十分だ。・・・心配しなくても、借りは必ず返してやるよ。」

ラスは大きく溜め息をついてから言葉を続けた。

「・・・そうですか。仕事一つ、満足に請けられなかった貴女に代わって僕が仕事を請け負ってあげるつもりだったのですが。」
「なん・・・だと・・・。」
「あの追手達の服装、何処かで見たことがあると思いましたが、この辺りで悪名高い斡旋屋が護衛に雇っている私兵じゃないですか。」
「っ!?」

ラスは以前聞いたことがある噂を元に適当に言っただけであったが、彼女の反応はそれが事実であるという物であった。
ラスは噂が本当であったことに驚きつつも、さも最初から知っていたかのように平素を装って続きを話す。

「大方、不当な条件を突きつけられたかなにかで揉め事になったのでしょう?」
「うっ・・・。」
「あんな重い剣を振り回す貴女の腕力では、軽く小突いただけでも斡旋屋は重体だったのでは?」
「うぐぐっ・・・。」
「それで、そのまま逃げておけば良かったのに、その場に居た護衛も全滅させて色々と盗って行ってしまったのですね?」
「・・・8割方、当たってるよ。ついでに白状すれば、アイツの放った追手も既に何度かぶっ飛ばしてる・・・。」

彼女は観念の溜め息をついた。

「あんな彼ですが、この辺りではそれなりに有力な斡旋屋です。この辺りでは貴女は暫く仕事を請けられないでしょうね。」
「・・・だろうな。・・・・・・分かったよ、アンタのカネ稼ぎに付き合ってやるよ。」
「はいっ、よろしくお願いしますっ♪」

態と大声で承諾した彼女に、ラスは笑顔で礼の言葉を述べる。

「とりあえず、今日は此処に泊まって、傷を癒してください。僕はこれから、旅の仕度を済ませてきます。」
「・・・そうさせてもらうぜ。」

彼女はゆっくりと目を閉じた。
それから間もなくして、静かに寝息を立て始める。
ラスは彼女が眠りについたのを確認してから部屋を出た。

~~~~

「・・・おーい、着替え終わったぞ。」
「そ、そうですか。」

翌朝。
彼女はベッドの上で着替えを済ませ、背中を向けたままのラスに声を掛けた。
ラスはゆっくりと振り返る。

「『着替え終わるまで後ろを向いてるから、終わったら声をかけろ。』って、面倒なことを頼むヤツだな・・・。」
「め、面倒って・・・貴女・・・。」

ラスのたじろぐ様子を、彼女は不思議そうに見つめた。

「・・・ま、いいや。私は好きにやらせて貰うぜ?」
「構いませんよ。・・・僕は、貴女が生きていてくれさえいれば・・・。」
「なにか言ったか?」
「い、いえっ! なにもっ!」

慌てて首を横に降るラスに、彼女は呆れたような表情をみせた。

「・・・ホント、面白いヤツだな。・・・ネスだ。」
「えっ?」
「私の名前、ネスだ。」
「あっ、ああ・・・ラグ=F=アルガスです。知り合いからは、ラスと呼ばれて・・・」
「――っ!?」

ネスは急に真剣な表情でラスに掴みかかった。

「お前っ!! その呼び名、誰につけて貰ったっ!? 蒼くて長い髪の若い男かっ!?」
「だっ、誰にって言われても知りませんよっ! 何時の間にかそう呼ばれてましたっ! それに、そんなに珍しい付け方でもないでしょう・・・っ!?」
「・・・・・・そう、だよな。・・・すまねぇ。」

ネスはゆっくりとラスを離した。

「・・・ある人の知り合いに、同じ呼び名の人がいたから、ついな・・・。」
「・・・そう、でしたか。」
「・・・まぁ、よろしく頼むぜ。ラス。」
「はい、此方こそよろしくお願いします。ネスさん。」

二人は笑顔で軽く握手を交わした。
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