14スレ目の74(ななよん)の妄想集@ウィキ

誓いの輝石~Avenge~ > #11 > パートD


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陰気臭い石造りの建物の奥深く、少女の声が響く。

「いつまで閉じ込めて置くっすかぁ!!せめて、姉貴だけでも出してやれっす!!」

声の主、アインは分厚い鉛の板で拘束された両手を何度も扉に打ちつけて叫ぶ。
しかし、返ってくるのは扉の発する重低音とアインの叫び声のみだった。

「アイン・・・私達・・・このまま死ぬのさね?」
「姉貴!?」

エインは壁に寄り掛かりながら、呟くようにアインに問う。
アインは両足の重い枷【かせ】を引き摺りエインの傍へと向かった。

「姉貴、何言ってるっすか!姉貴は死なないっす!死なせないっす!」
「でも、あの後すぐ此処に連れて来られて、それから誰一人来ないさね・・・。」
「だいたい!なんであの時アタイを置いて逃げなかったっすか!どうして、捕まったっすか!?」

反則負けという形でネスとの試合を終えた直後、傭兵組織の者達があの場のどさくさに紛れて二人の元に現れた。
数でこそ負けていたが実力ではエインの方が圧倒的に上で、抱きかかえていたアインを見捨てれば簡単に逃げることができた。
しかし、エインはそれをしなかった。
アインの精一杯の抗議を無視して、彼らに促されるまま後についていった。
そして、その結果がこの状況である。
あれから数時間、二人は薄い下着一枚以外の全てを没収され、光も殆ど差し込まない石造りの牢の中に監禁されていた。
空気は澱んで【よどんで】いて生臭く、ボロボロの藁が少しだけ敷かれた場所が隅に1つある以外は何もない所だった。

「アインを棄てて逃げるなんて・・・私には・・・。」
「だからって何で一緒に捕まる必要があるんすか!!」
「それは・・・」

アインの精神は既に限界を迎えていた。
傭兵として過酷な任務をこなしてきた彼女と言えど、ほの暗い閉鎖空間に長時間監禁されたことは初めてである。
中々答えないエインの態度に、アインは遂に積年の鬱憤が爆発した。

「姉貴は・・・姉貴はいつだってそうっす!アタイのためとか言って!いつもアタイの足を引っ張るっす!」
「ア、アイン!?」

エインの驚愕の声を聞き、アインは今し方自分の言ったことを初めて認識した。
アインは躊躇うが、一度決壊した心の堤防に激情を防ぐ手立てはもはやなく、流されるままに言葉を続けた。

「今だってそうっすよ!姉貴が捕まらなかったらアタイは、姉貴を助ける方法を考えなくてもいいのに!」
「そんな・・・アイン・・・。」

二人の間に両足の枷よりも遥かに重い静寂が漂う。
その静寂を切り裂いたのは数人分の靴音だった。
二人は扉を注視する。
靴音はどんどん大きくなり、扉の前で止まる。
それからすぐに扉が開かれ、一目で傭兵と分かる無骨な体躯の男を先頭に数人の男が流れ込んできた。

「な、なんすか!?オマエ!それに後ろのヤツらは!?」
「俺は貴様らの処分をしにきただけだ。」
「しょ・・・ぶん・・・?」
「その歳になって処分の意味も知らぬか?・・・まぁ、平たく言えば殺しにきたということだ。」
「なっ・・・!?」

任務を果たせなかった傭兵は棄てられる。
二人は幼い頃からそういい聞かされていた。
棄てられるというからには身包み剥され放り出される程度のことで、まさかこうして監禁された挙句殺されるとは考えてもいなかった。

「ハハハッ。残念だったな。『棄てられる』ってのはな、大した情報も力も持って無いクズ中のクズ野郎だけだ。」
「そ・・・そんな・・・。」
「貴様らみたいにこの国にとって重要な情報を持つ者は、商品価値を失えば秘密を守るためにこうして処分されているのが真相さ。」
「秘密・・・って、まさか!私達のしてきたことって・・・!!」
「中々察しがいいな。当然、協会の許可などない。そんなものを取ったら、傲慢な協会の連中に体よく利用されるだけだからな。」

傭兵は協会傘下の地域では非合法的な物として見られることもあるが、立派な職業である。
それらを育成し派遣するのも何ら違法性のない仕事である。
但し、これらは事前に許可を受けなくてはならない物であり、無許可であることが知られた場合は厳罰に処されてしまう。
無許可であるかどうかを判断する手っ取り早い方法の1つは、今まで果たしてきた任務を振り返ることだ。
本当に許可を受けているのであれば、敵対する組織への派遣はないはずである。
しかし、今にして思えば、二人には思い当たる節が幾つもあった。
ただ、その時の二人は生き抜くことだけで精一杯で、とてもそこまで気が回らなかったのだ。

「そんなの・・・うそっす・・・アタイらは・・・アタイらを育ててくれたこの国のために・・・。」
「うむ、貴様らはよく尽くしてくれたとのことだ。これで大人しく処分されてくれれば、この国も安泰だ。」
「そんな・・・酷い・・・酷すぎるさ・・・。」
「そして喜べ、なんと貴様らは処分されることで最期の奉仕ができるのだ。」
「えっ?」

最期の奉仕。
つまり、外部に無許可であることを知られなくなる以外に、何か彼らにとって利益になることがあるということだ。
しかし、他にどんな利益があるというのだろう。
二人が思案に暮れていると、彼がその理由を語り始めた。

「此処におられるお得意様方がな、貴様らが処分されるのを見物したいと申し出てくれたのだ。」
「けん・・・ぶつ・・・!?」
「喜ばしいことに、見物料の支払いにも快く応じてくれた。」
「な・・・なんだって・・・!?」
「つまり、貴様らはゲル・ドランの傭兵施設始まって以来、初の処分する時も利益を齎す人材ということになる。光栄に思え。」
「ふ・・・ふざけるなっす!!」

一度に沢山の残酷で理不尽な事実を突きつけられ、身体を戦慄かすエインの肩を抱きながらアインは叫ぶ。

「おカネ払って、人が殺されるトコを見たいだなんて。・・・・・・狂ってるっす!人じゃないっす!」
「貴様!お得意様に向かってなんてことを!!」
「いいからさっさと始めんか!ここは生臭くて堪らん!」

処分役の後ろで激臭に顔を顰めていた男達の内、一人が処分役を怒鳴りつけた。
処分役は深々と一礼をして、処分の準備を始める。

「では、如何なさいましょう?」
「うーむ・・・よし、そっちの怯えてる方から始めろ。皆もそれでよいな?」
「・・・ひっ!?」

全員のぎらついた視線を一身に浴び、エインは情けない声と供に身体を竦ませる。
処分役が何かを取ろうとした時、アインが叫んだ。

「ア、アタイが受けるっす!姉貴の分も全部・・・だから、姉貴だけは!」
「アッ、アイン・・・。」

アインの申し出に処分役は立ち止まり、お得意様方の顔色を窺う。

「美しき姉妹愛だ・・・。いいだろ、全て受けきったら姉は見逃そう。」
「ホントっすね?約束・・・っすよ。」

処分役に目で合図を送ると、彼は入ってきた時に部屋の片隅に置いた物を取り出した。

「うっ・・・!?」
「怖がることはない、お買い上げの印だ。死ぬほど熱いがな・・・。クククッ。」

処分役の手には先端が真っ赤に染まった棒が握られていた。
末広がりの先端部分は一辺がアインの肩幅の半分ぐらいはあり、中には何やら文字が彫られていた。

「喜べ、これもお得意様が普通の大きさの刻印では満足できないと、特別注文してくださったのだ。」
「うっあぁ・・あぁぁ・・・くっ・・・。」

毒々しい輝きと圧倒的熱量を放つ赤い棒を前にして、流石のアインも言葉を失う。
一瞬でも気を抜けば全身が震え、無様な姿を彼らの前に晒してしまう。

(そんなの・・・死んだってイヤっす!!)

アインは歯を食いしばり、爪が食い込むぐらいに強く拳を握り処分役を、その後ろに居る男達を睨みつける。

「では、早速行うぞ。精々、良い声で囀るんだな。」
「・・・くっ!!」

処分役の焼印を向けられ、思わずアインは目を閉じる。
しかし、予想した衝撃は来なかった。
その代わりに響いたのは肉の焦げる音と彼女の良く知る声・・・。

「うっぎぁああぁぁぁぁぁぁあああああぁぁあああーーっ!!」
「あっ、姉貴ぃぃぃぃぃっ!?」

アインが目を開けると、エインが覆いかぶさるように重なっていた。
エインは荒々しく息をしながら、アインを見つめる。

「姉貴!?どうして!!」
「アインは・・・どうして・・・!」
「えっ?」
「どうして!私に・・・守らせてくれないのさ・・・!?アインは・・・、私を・・・頼りないと思ってるさね!?」
「あ・・・姉貴・・・。」

エインは焼印を無理矢理引き剥がされた痛みに涙を見せつつも、アインの身体をきつく抱きしめて言葉を続ける。

「私、確かに・・・アインのためにと言ってるくせに、最後は躊躇ってばかりだったさ・・・。そうやって嫌なこと全部・・・アインに押し付けたさ。」
「姉貴・・・アタイは・・・。」
「でも、今日!あの人に教えられたさ!『大切な人を本当に守りたいなら躊躇うな』って!だから、私はもう躊躇ったりしないさね!」
「姉貴・・・アタイ・・・アタイ・・・!!」

アインはエインの首の後ろにゆっくりと手を回す。
そして、抱きしめようとした時だった。

「邪魔が入ったか・・・まぁいい。順番が変わっただけだ。」
「・・・えっ?アタイが全部受ければ・・・姉貴は・・・見逃すって・・・。」
「バカめ。約束はな、相手が守らざるを得ない状況で交わしてこそ守られるものだ。」
「っ!!」

アインは卑下な笑い声を上げる男達を睨みつけ、怒鳴りつける。

「違うっ!!約束は何があっても守るものっす!!アタイは、今日!それを貫いた人を見たっす!!」
「フッ、フハハハハハ!!ソイツはお笑い種【おわらいぐさ】だ!是非会ってみたいものだなぁ!!」
「――――此処にいるぜ?そのお笑い種がよ。」

突然声のするはずのない方向から声が聞こえ、全員が一斉に振り向く。
そこには満面の笑顔を見せる女性の姿があった。

「へぇ~、結構いい趣味じゃねーか・・・。」
「な、何者だ!?どうやって入ってき・・・うぎゃっ!!」
「ホント・・・あの男が好みそうな、いい趣味を持ってるぜ、アンタらっ!」

処分役が手に持っていた鉄棒を振り上げるよりも早く、ネスは拳を叩き込んだ。
処分役は派手に吹き飛び、壁に激突してずれ落ちる。
それからネスは、身の危険を感じ逃げようとした男達をあっという間に叩き伏せると二人の元へと歩み寄った。

「ぃよっ♪元気そう・・・じゃなさそうだな。」
「オ、オマエっ!?此処に何しにきたっすか!?」
「何って・・・此処を潰しにだが?」
「潰すって・・・此処には常時百人以上の傭兵が居るさねっ!」
「でも、その百人以上の中でアンタらが一番強いんだろ?私はそれに勝ってんだ。なら、此処に居るヤツらなんて目じゃねぇよ。・・・だろ?」
「そ、そんな・・・。」

確かに、彼女の強さは直接戦ったから良く分かる。
とはいえ、たった一人でこの傭兵施設を潰すなんて流石に不可能だ。
今は『相手を殺してはいけない』という、この施設の傭兵にとっては面倒な取り決めのない状態だ。
初めから全員が殺すつもりで襲い掛かってくるだろう。
しかも、あの技による傷も完全には癒えていないはずである。
流石の彼女でもそんな状態で百人以上を相手にするのは無謀過ぎる。

「ダーイジョブだって、相方が居るからよっ♪」
「あ、相方って・・・それでも二人っす!無理っすよ!」
「・・・姉貴と一緒に生きたいんだろ?だったら、信じろよ。なっ?」
「うっ・・・。」

ネスの一切の反論を認めない笑顔に、二人は言葉を失う。
二人の沈黙を承諾と受け取ったネスは、素早く二人の枷を砕いた。

「・・・えっ?どうして?」
「心配すんなって、アンタらが逃げだす時間ぐらいは稼いでやるからよ♪」
「そんなの、頼んで・・・」
「・・・行くさね、アイン。」
「姉貴?」
「此処から出てその後、どうすればいいか、分からないけど・・・兎に角、此処は彼女の言うとおり逃げるさね。」
「・・・・・・分かったっす。」

エインはアインの手をとり起き上がる。
そしてアインに肩を借りてゆっくりと歩き始めた。

「・・・エイン。」
「はいさ?」
「しっかり、守れよ。大切な人をよ・・・。」
「・・・はい。・・・ありがとうさ。ネス姉さん。」

ネスは二人に此処から少し離れた物陰に、自分達が使っていたライトカーゴが隠してあると告げる。
そして、この国から北西に進んだ所にあるミリアリアの宿を紹介した。
それからネスは、二人が向かった方向とは逆方向、人の気配が多い方へと駆け出した。