14スレ目の74(ななよん)の妄想集@ウィキ
パートB
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14sure74
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「で、どーすんだ?諦めるか?」
ネスは口元に勝ち誇った笑みを浮かべて二人に問いかけた。
「・・・誰が!!」
アインがふらりと立ち上がりながらネスを睨みつけて叫ぶ。
そして、エインの制止の声も聞かず全力で地を蹴りネスへと襲い掛かった。
「そうそう、そうこなきゃなっ♪」
ネスはアインの全身全霊を賭けた連撃を笑顔で捌く【さばく】。
「でもまっ、なんだ。1対1なら確かに真価を発揮できるけどな・・・。」
「だぁぁぁーーっ!!」
ネスはアインが気合を入れて放った拳に合わせて反対側の拳を軽く引く。
「見よう見まねじゃ私の身体能力までは真似できねーだろーがっ!」
「うぐっ!!」
そして、アインの拳が届くよりも早く引いた拳を突き入れた。
アインはその場に蹲り、全身を小さく痙攣【けいれん】させながら何度も咳き込む。
「・・・あるんだろ?奥の手がよ。」
ネスは蹲ったままのアインにゆっくりと近づきながら問い掛ける。
「まさか、人真似だけで此処まで伸し上がってきたワケじゃないよな?」
「・・・・・・姉貴。」
「!?」
アインは後ろで二人のやり取りに気圧されているエインを呼ぶ。
彼女の声色で彼女の意を悟ったエインは血相を変えて応えた。
「ダメさっ!アレは使っちゃダメっ、アイン!アレを使ったら・・・彼女が・・・!?」
「・・・『殺してでも優勝を阻止しろ。』って言われてるんだろ?双対悪魔【ダーティデュオ】さんよ。」
「――!?」
エインはネスに自分達に与えられた任務をずばり言い当てられ、驚きのあまりに言葉を失う。
ネスの余裕に満ちた表情に、アインがゆっくりと立ち上がりながら口を開いた。
「・・・オマエの言う通りっす。どんな手を使ってでもオマエを止めるのが、アタイらに与えられた任務っす。」
「ア、アインっ!?」
「だからアタイは、殺してでもオマエを倒す!そうしなきゃ・・・アタイらは、棄てられるっす!!」
「!?」
アインは力強くネスを睨みつけて叫ぶ。
ネスは眉一つ動かさずその視線を正面から受けた。
「アタイらは生まれた時からずっと此処の傭兵っす。此処には任務を果たせない傭兵の居場所はないっす。」
「ほぉ~・・・。」
「棄てられた傭兵に、生きる道なんてないっす。だから、アタイらは必死に戦って、殺して、殺して、殺して・・・。」
アインは一旦言葉を切って俯く。
そして拳を握りながらネスを力強く見据えて叫んだ。
「――アタイは生きたいっす!もっと生き続けたいっす!姉貴と一緒に!!」
アインは今までよりも更に強く地面を蹴り、ネスに飛び掛った。
「だからっ!!死んでもらうっす!!ネぇぇス!!」
「――止めるっさ!!アイぃぃン!!」
「いいぜっ!来いよ!だがな、残念だが私は死なねぇぜ。・・・勝つまではなっ!」
ネスはアインの突撃に合わせる様に突撃した。
「アイン選手!エイン選手との連携を止め単独で激しい連続攻撃を繰り出してますが、ネス選手は余裕の表情で捌いています!」
実況者の言うとおり、ネスは余裕に満ちた表情でアインの連撃を捌いていた。
(・・・『余裕』か。そんなもん、コイツの気配が変わった時点からねぇな・・・。)
その表情とは裏腹に、ネスは全神経を総動員して慎重に捌いていた。
確かに今のアインの連撃を捌くこと自体は、今までよりも数段楽である。
しかし、今のアインにはこれまで感じられなかった凄い気迫が感じられた。
その気迫から、彼女がこれから繰り出そうとしている技に絶対の自信を持っていることは確実だ。
しかし、暗殺が主な任務だった彼女は、その任務の特性上、実態については殆どが謎に包まれている。
つまり何時、どんな技を繰り出すか全く予想がつかない。
だからネスは、一瞬たりとも気を抜くことができなかった。
(――来るっ!?)
唐突に、ネスの戦士としての勘が警鐘を鳴らした。
ネスは自らの勘を信じ、アインを迎え撃つ態勢を整える。
その刹那、アインを取り巻く空気が僅かに変化した。
アインは今までよりも更に激しい連撃を繰り出す。
(・・・正拳突きか!?ちぃっ!これは防ぐしかないか!)
ネスはアインの正拳突きを受け止めるために身を固めた。
「――っ!?」
(なんだ!?イヤな予感がしやがる・・・間に合うかっ!?)
その瞬間、アインの口元に僅かではあるが笑みが浮かんだ。
ネスの身に悪寒が走り、急遽受け流す体勢に切り替える。
「つッ!?」
アインの正拳突きを、ネスは右下腕で外へと払うように受け止める。
「!!?!」
突然、受け止めた部分に激痛が走る。
まるで肉を抉られ骨を砕かれたかのような痛みに、ネスは咄嗟にその場から飛び退く。
「ぐっ・・・うっ・・・ふっ・・・づぁっ!」
(なっ!?なんだってんだっ!!受ける衝撃は最小限にして防いでいるはずだぞ?!何がどうなってやがるっ!?)
ネスは左手で激痛の発生箇所を庇う。
そして、歯を食いしばりながらアインを真っ直ぐ見据えた。
「これが・・・アンタの奥の手か・・・。」
「ちぃっ!咄嗟に右腕を犠牲にするとか、流石っすね!でも!次はないっすよ!!」
「・・・・・・フフッ。・・・そう、来なきゃな・・・張り合いがねぇぜ!」
アインの容赦ない追撃をネスは後退りながら避ける。
(くっ、痛みが退かねぇ・・・。流石は奥の手ってヤツだ、何度も受けるワケにはいかねぇな・・・。)
ネスは右腕の調子を確かめつつ、反撃の糸口を掴むため意識を集中する。
(僅かだが、拳に今までとは違う気配を感じる・・・。足をさっきよりも使わなくなった所も含めると・・・、あの技は拳限定か?)
アインの連撃には、足技があまり組み込まれていなかった。
勿論、油断を誘うため態と使用していない可能性もある。
しかし、自分の真似をしていた時や、勢い任せで仕掛けてきた時も使用頻度は少なかった。
そのことを踏まえると、彼女は足技が不得意だと見てよいはずである。
奥の手を不得意な部位からも放てるとは考えにくい。
ネスはアインの蹴りを誘うように距離を調整して機会を待った。
(――かかった!)
ネスの誘いに乗り、アインは蹴りを放つ体勢に入る。
ネスは体勢を移行する一瞬の隙を突いて反撃に出た。
アインはネスの反撃に気付き防ぐ態勢に入ろうとする。
「遅いぜっ!!」
「――しまっ・・・がはっ!!」
ネスの蹴りがアインの脇腹に鋭く突き刺さった。
ネスは間髪入れず追撃をする。
「これで・・・終わりだっ!!」
「くっ・・・!!」
追撃の蹴りがアインの眼前まで迫った時、何かが彼女を突き飛ばした。
「ぎゃふっ!!」
「あ・・・姉貴・・・!?」
突き飛ばされ地面に身を投げ出したアインが、呻き声のした方を確認するとエインの姿があった。
エインはネスの蹴りを受け、前屈みになりながらよろめく。
「くっ、やって・・・くれるじゃねぇか・・・エインっ!」
「これ以上・・・アインを・・・傷付けさせないさっ!」
ネスは蹴りに使った左足を軽く地面につけ、エインを睨みつける。
(ちぃっ!アイツ、初めっから・・・自分を犠牲に足を潰すつもりできやがった!!)
エインはその身でネスの蹴りを受けた瞬間、掠らせるように奥の手を使ったのである。
掠っただけのせいか右腕で受けた物よりも痛みはない。
しかし、それでも暫く左足に負担がかけられないことに変わりはない。
ネスは舌打ちをしながら、エインを注視した。
「――っ!?」
エインの突撃は予想よりも速く、満足に動けないネスは避けることだけで精一杯であった。
「ヅっ!・・・しまった!!」
ネスが足の痛みで体勢を崩した隙を突き、エインがネスの懐に潜り込む。
そして、ネスの胸元に向かって拳を打ち込む体勢を整える。
「・・・・・・何、してやがる?」
しかし、エインは放とうとしなかった。
その代わりに飛んできたのは彼女の声。
「・・・試合放棄して欲しいさ。」
「はぁっ?」
エインは呟くようにネスに試合放棄を促した。
ネスは怪訝な表情で答える。
「なに、言ってやがる。さっさと打てよ。」
「このまま打てばアンタ。確実に・・・死ぬさっ。」
「確かにそうかもな。だが生憎とな、試合放棄するワケにはいかねーんだよ。・・・絶対勝つって約束、しちまったからな。」
「そんな約束・・・命より重い約束じゃないさねっ!」
「約束に重いも軽いもねぇよっ!自らした約束は何があっても守る!それだけだ!」
ネスの決意に満ちた表情に、エインは言葉に詰まる。
「打たなきゃ・・・打つぞ。勝つためにっ!」
ネスは距離を離しつつ反撃をする体勢に入る。
「――うぐっ!?」
しかしそれよりも早く、エインの拳が胸元に放たれる。
ネスは数歩後退って崩れると、左手で胸を押さえて蹲る。
「がっ!・・・うっ!・・・くっ・・・ぎぁっ!・・・かはっ・・・!!」
心臓をきつく締め上げられるような感覚にネスの全身に脂汗が浮かぶ。
全身を痙攣させ歯を欠けそうなぐらいに食いしばり、意識が暗闇の世界に飲み込まれないよう耐える。
ネスは背を向けて遠ざかるエインの姿を睨み付けた。
「今の内に・・・止めっす!」
ふらりと立ち上がり息を整えたアインが、止めを刺そうとエインの脇を通り過ぎようとする。
「待つさっ!アイン!!」
「な、なにするっす!姉貴!」
エインはアインの腕を掴み、強引に引き戻す。
予想外の行動にアインは驚きを隠せなかった。
「どうして止めるっすか!姉貴!!」
「彼女はもうじき気絶するさ・・・。そしたら、私達の勝ちさね。」
「き、気絶!?姉貴、手加減して打ったっすか!?じゃあ、尚更・・・」
「アインっ!!」
エインの嘗てないほどに気迫の篭った声に、アインは思わず身体を撥ねさせる。
「私達、生まれて初めて・・・人を殺さなくても生きていけるさねっ!!」
「あ、姉貴・・・。」
「さ・・・帰るさねっ。今日は、初めて・・・イヤな夢を見なくて済みそうさっ♪」
エインは心の底から湧き上がる喜びを笑顔に変換してアインへと伝えようとする。
変換しきれなかった喜びは、涙となってエインの頬を伝った。
ネスは口元に勝ち誇った笑みを浮かべて二人に問いかけた。
「・・・誰が!!」
アインがふらりと立ち上がりながらネスを睨みつけて叫ぶ。
そして、エインの制止の声も聞かず全力で地を蹴りネスへと襲い掛かった。
「そうそう、そうこなきゃなっ♪」
ネスはアインの全身全霊を賭けた連撃を笑顔で捌く【さばく】。
「でもまっ、なんだ。1対1なら確かに真価を発揮できるけどな・・・。」
「だぁぁぁーーっ!!」
ネスはアインが気合を入れて放った拳に合わせて反対側の拳を軽く引く。
「見よう見まねじゃ私の身体能力までは真似できねーだろーがっ!」
「うぐっ!!」
そして、アインの拳が届くよりも早く引いた拳を突き入れた。
アインはその場に蹲り、全身を小さく痙攣【けいれん】させながら何度も咳き込む。
「・・・あるんだろ?奥の手がよ。」
ネスは蹲ったままのアインにゆっくりと近づきながら問い掛ける。
「まさか、人真似だけで此処まで伸し上がってきたワケじゃないよな?」
「・・・・・・姉貴。」
「!?」
アインは後ろで二人のやり取りに気圧されているエインを呼ぶ。
彼女の声色で彼女の意を悟ったエインは血相を変えて応えた。
「ダメさっ!アレは使っちゃダメっ、アイン!アレを使ったら・・・彼女が・・・!?」
「・・・『殺してでも優勝を阻止しろ。』って言われてるんだろ?双対悪魔【ダーティデュオ】さんよ。」
「――!?」
エインはネスに自分達に与えられた任務をずばり言い当てられ、驚きのあまりに言葉を失う。
ネスの余裕に満ちた表情に、アインがゆっくりと立ち上がりながら口を開いた。
「・・・オマエの言う通りっす。どんな手を使ってでもオマエを止めるのが、アタイらに与えられた任務っす。」
「ア、アインっ!?」
「だからアタイは、殺してでもオマエを倒す!そうしなきゃ・・・アタイらは、棄てられるっす!!」
「!?」
アインは力強くネスを睨みつけて叫ぶ。
ネスは眉一つ動かさずその視線を正面から受けた。
「アタイらは生まれた時からずっと此処の傭兵っす。此処には任務を果たせない傭兵の居場所はないっす。」
「ほぉ~・・・。」
「棄てられた傭兵に、生きる道なんてないっす。だから、アタイらは必死に戦って、殺して、殺して、殺して・・・。」
アインは一旦言葉を切って俯く。
そして拳を握りながらネスを力強く見据えて叫んだ。
「――アタイは生きたいっす!もっと生き続けたいっす!姉貴と一緒に!!」
アインは今までよりも更に強く地面を蹴り、ネスに飛び掛った。
「だからっ!!死んでもらうっす!!ネぇぇス!!」
「――止めるっさ!!アイぃぃン!!」
「いいぜっ!来いよ!だがな、残念だが私は死なねぇぜ。・・・勝つまではなっ!」
ネスはアインの突撃に合わせる様に突撃した。
「アイン選手!エイン選手との連携を止め単独で激しい連続攻撃を繰り出してますが、ネス選手は余裕の表情で捌いています!」
実況者の言うとおり、ネスは余裕に満ちた表情でアインの連撃を捌いていた。
(・・・『余裕』か。そんなもん、コイツの気配が変わった時点からねぇな・・・。)
その表情とは裏腹に、ネスは全神経を総動員して慎重に捌いていた。
確かに今のアインの連撃を捌くこと自体は、今までよりも数段楽である。
しかし、今のアインにはこれまで感じられなかった凄い気迫が感じられた。
その気迫から、彼女がこれから繰り出そうとしている技に絶対の自信を持っていることは確実だ。
しかし、暗殺が主な任務だった彼女は、その任務の特性上、実態については殆どが謎に包まれている。
つまり何時、どんな技を繰り出すか全く予想がつかない。
だからネスは、一瞬たりとも気を抜くことができなかった。
(――来るっ!?)
唐突に、ネスの戦士としての勘が警鐘を鳴らした。
ネスは自らの勘を信じ、アインを迎え撃つ態勢を整える。
その刹那、アインを取り巻く空気が僅かに変化した。
アインは今までよりも更に激しい連撃を繰り出す。
(・・・正拳突きか!?ちぃっ!これは防ぐしかないか!)
ネスはアインの正拳突きを受け止めるために身を固めた。
「――っ!?」
(なんだ!?イヤな予感がしやがる・・・間に合うかっ!?)
その瞬間、アインの口元に僅かではあるが笑みが浮かんだ。
ネスの身に悪寒が走り、急遽受け流す体勢に切り替える。
「つッ!?」
アインの正拳突きを、ネスは右下腕で外へと払うように受け止める。
「!!?!」
突然、受け止めた部分に激痛が走る。
まるで肉を抉られ骨を砕かれたかのような痛みに、ネスは咄嗟にその場から飛び退く。
「ぐっ・・・うっ・・・ふっ・・・づぁっ!」
(なっ!?なんだってんだっ!!受ける衝撃は最小限にして防いでいるはずだぞ?!何がどうなってやがるっ!?)
ネスは左手で激痛の発生箇所を庇う。
そして、歯を食いしばりながらアインを真っ直ぐ見据えた。
「これが・・・アンタの奥の手か・・・。」
「ちぃっ!咄嗟に右腕を犠牲にするとか、流石っすね!でも!次はないっすよ!!」
「・・・・・・フフッ。・・・そう、来なきゃな・・・張り合いがねぇぜ!」
アインの容赦ない追撃をネスは後退りながら避ける。
(くっ、痛みが退かねぇ・・・。流石は奥の手ってヤツだ、何度も受けるワケにはいかねぇな・・・。)
ネスは右腕の調子を確かめつつ、反撃の糸口を掴むため意識を集中する。
(僅かだが、拳に今までとは違う気配を感じる・・・。足をさっきよりも使わなくなった所も含めると・・・、あの技は拳限定か?)
アインの連撃には、足技があまり組み込まれていなかった。
勿論、油断を誘うため態と使用していない可能性もある。
しかし、自分の真似をしていた時や、勢い任せで仕掛けてきた時も使用頻度は少なかった。
そのことを踏まえると、彼女は足技が不得意だと見てよいはずである。
奥の手を不得意な部位からも放てるとは考えにくい。
ネスはアインの蹴りを誘うように距離を調整して機会を待った。
(――かかった!)
ネスの誘いに乗り、アインは蹴りを放つ体勢に入る。
ネスは体勢を移行する一瞬の隙を突いて反撃に出た。
アインはネスの反撃に気付き防ぐ態勢に入ろうとする。
「遅いぜっ!!」
「――しまっ・・・がはっ!!」
ネスの蹴りがアインの脇腹に鋭く突き刺さった。
ネスは間髪入れず追撃をする。
「これで・・・終わりだっ!!」
「くっ・・・!!」
追撃の蹴りがアインの眼前まで迫った時、何かが彼女を突き飛ばした。
「ぎゃふっ!!」
「あ・・・姉貴・・・!?」
突き飛ばされ地面に身を投げ出したアインが、呻き声のした方を確認するとエインの姿があった。
エインはネスの蹴りを受け、前屈みになりながらよろめく。
「くっ、やって・・・くれるじゃねぇか・・・エインっ!」
「これ以上・・・アインを・・・傷付けさせないさっ!」
ネスは蹴りに使った左足を軽く地面につけ、エインを睨みつける。
(ちぃっ!アイツ、初めっから・・・自分を犠牲に足を潰すつもりできやがった!!)
エインはその身でネスの蹴りを受けた瞬間、掠らせるように奥の手を使ったのである。
掠っただけのせいか右腕で受けた物よりも痛みはない。
しかし、それでも暫く左足に負担がかけられないことに変わりはない。
ネスは舌打ちをしながら、エインを注視した。
「――っ!?」
エインの突撃は予想よりも速く、満足に動けないネスは避けることだけで精一杯であった。
「ヅっ!・・・しまった!!」
ネスが足の痛みで体勢を崩した隙を突き、エインがネスの懐に潜り込む。
そして、ネスの胸元に向かって拳を打ち込む体勢を整える。
「・・・・・・何、してやがる?」
しかし、エインは放とうとしなかった。
その代わりに飛んできたのは彼女の声。
「・・・試合放棄して欲しいさ。」
「はぁっ?」
エインは呟くようにネスに試合放棄を促した。
ネスは怪訝な表情で答える。
「なに、言ってやがる。さっさと打てよ。」
「このまま打てばアンタ。確実に・・・死ぬさっ。」
「確かにそうかもな。だが生憎とな、試合放棄するワケにはいかねーんだよ。・・・絶対勝つって約束、しちまったからな。」
「そんな約束・・・命より重い約束じゃないさねっ!」
「約束に重いも軽いもねぇよっ!自らした約束は何があっても守る!それだけだ!」
ネスの決意に満ちた表情に、エインは言葉に詰まる。
「打たなきゃ・・・打つぞ。勝つためにっ!」
ネスは距離を離しつつ反撃をする体勢に入る。
「――うぐっ!?」
しかしそれよりも早く、エインの拳が胸元に放たれる。
ネスは数歩後退って崩れると、左手で胸を押さえて蹲る。
「がっ!・・・うっ!・・・くっ・・・ぎぁっ!・・・かはっ・・・!!」
心臓をきつく締め上げられるような感覚にネスの全身に脂汗が浮かぶ。
全身を痙攣させ歯を欠けそうなぐらいに食いしばり、意識が暗闇の世界に飲み込まれないよう耐える。
ネスは背を向けて遠ざかるエインの姿を睨み付けた。
「今の内に・・・止めっす!」
ふらりと立ち上がり息を整えたアインが、止めを刺そうとエインの脇を通り過ぎようとする。
「待つさっ!アイン!!」
「な、なにするっす!姉貴!」
エインはアインの腕を掴み、強引に引き戻す。
予想外の行動にアインは驚きを隠せなかった。
「どうして止めるっすか!姉貴!!」
「彼女はもうじき気絶するさ・・・。そしたら、私達の勝ちさね。」
「き、気絶!?姉貴、手加減して打ったっすか!?じゃあ、尚更・・・」
「アインっ!!」
エインの嘗てないほどに気迫の篭った声に、アインは思わず身体を撥ねさせる。
「私達、生まれて初めて・・・人を殺さなくても生きていけるさねっ!!」
「あ、姉貴・・・。」
「さ・・・帰るさねっ。今日は、初めて・・・イヤな夢を見なくて済みそうさっ♪」
エインは心の底から湧き上がる喜びを笑顔に変換してアインへと伝えようとする。
変換しきれなかった喜びは、涙となってエインの頬を伝った。