14スレ目の74(ななよん)の妄想集@ウィキ

誓いの輝石~Avenge~ > #11 > パートA


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アスが眠りについたのを扉越しに感じ取ったネスは、石畳の通路を会場に向かって歩きだした。
それから間も無くのことである。
ネスの目に前方から慌てて走ってくる案内係の姿が映った。
彼はネスを見つけると大声で彼女の名前を呼びながら走り寄る。

「丁度良かった!!実は・・・」
「・・・試合だろ?大方、相手が棄権したとかで早まったってトコだな?」
「えっ!?・・・ええ、そうですが、なんで分かったのですか?」

自分の言おうとしていたことをずばり言い当てられ、案内係は驚きを隠せなかった。
ネスは彼の疑問に笑顔で答える。

「そりゃぁ、アンタの慌てぶりを見りゃ分かるぜ。それに・・・」
(あんなことまでやってきたんだ。当然、アスの回復を待つ時間はくれねぇよな。)
「それに・・・なんです?」
「・・・気にすんな。それより、急ぐんだろ?さっさと行くぞ。」

さっさと話を切り上げて走り出したネスの後を、案内係は慌てて追いかける。
ネスが入場口から会場内に駆け込むと、大地を揺るがす声援が彼女の入場を歓迎した。
ネスは両手を天高く突き上げて、笑顔で歓声に応えながら舞台上へと急ぐ。

「おっと、アメリア選手の負傷により棄権かと思われていましたが、大丈夫だったようです!」

観客は彼女に続いて相方が現れることを待っていたが、いくら待っても現れる様子がない。
観客がどよめき出した頃、実況者は中々相方が現れない疑問を代表して口にする。

「はて?どうしたことでしょう?一向にアメリア選手が登場する様子がありませんね・・・。」

審判は余裕綽々の態度で構えているネスに一向に現れない相方の行方を尋ねた。

「キミ、棄権ではないということは、相方は大丈夫だったのだろう?どうして来ないのかね?」
「アイツか・・・。アイツは来ねぇよ。控え室で寝てるからな。」
「なんだって!それでは、キミも一人で本選を戦うと言うのか?」
「そのつもりだが?」

ネスは何かを言おうとした審判を手で制すと、大きく息を吸った。

「聞け!アイツは此処には来ない!だが、私は戦う!」

どよめき治まらない観客に対して、ネスは声を張り上げた。
彼女の一言で会場内が瞬時に静まり返る。

「アイツは一人で戦い、そして勝った!それならば、私も一人で戦い、勝つ!アイツにできて、私にできないワケがない!そうだろ!?」

しばしの静寂の後、観客はそれぞれの思いを叫びだす。

「・・・よく言った!!俺はネエちゃんならできると思うぜ!!ガンバレ!!」
「ネス様最高!!カンドーした!!誠心誠意魂込めて応援させてくれぇ!!」

ネスは目を閉じ賞賛と激励の声に暫く身を任せると、審判へと向き直る。

「・・・だそうだ。つーワケで、構わんよな?」
「分かった・・・。いいだろう。・・・まったく、本選試合を何故か棄権する組も出るし、今年の大会はおかしなことが多い・・・。」

審判は相次ぐ異例の事態をぼやきながらも、開始位置に戻り試合開始前の合図をする。

「・・・そういや、彼女の対戦相手ってヤケに小さいが何者なんだ?」
「さぁ?ここまで勝ち残ったんだから強いんだろうけど・・・誰か知ってるか?」

ある観客が、ネスの対戦相手について周りに問いかけた。
その疑問は瞬く間に全体へと広がっていく。

「何か予選でもあのローブを被ったままだったみたいだぜ。」
「それなりに強かったみたいだけど、不戦勝も多かったらしい・・・。」
「さっきの試合も結局不戦勝だったしな・・・。強いのかどうかさっぱり分からねーぜ。」

しかし、集まった情報は殆どなく、それもあまり信頼できるような物ではなかった。
殆ど全ての観客の目が、ネス達の圧倒的強さに釘付けであったせいだった。

(・・・さてと、本選だと言うのにアス一人で倒せるような相手を投下してくるなんて、よくもガッカリさせてくれやがった。)

ネスは突然身体を動かし始めた。

「おや?ネス選手、準備運動でしょうか?にしては、少し動きがおかしいですが・・・。」
「・・・何をやっているのだね?」
「アイツの言うとーり、準備運動ってヤツさっ♪なんせ、今日はまだ殆ど動いてねぇからよ、身体が温まってねぇんだ。」

ネスは準備運動と称した動きをしながら、ラス達の姿を見つけて目で合図をする。

「なぁラス、アレってまさか・・・。」
「・・・ええ、間違いありません。タクトさんが僕に密かに教えてくれた『ぼでぃらんげーじ』というヤツですね・・・。」

タクトはラスと結託し彼女が喜び勇んで首を突っ込もうとするであろう厄介事を事前に回避するため、彼に無声言語の使用を提案していた。
いくら彼女が二つ名に恥じない感覚の持ち主でも、流石に音も無く飛び交う暗号を解読することは無理だろう。
そう考え、彼女が熟睡している隙を突いて二人で密かに取り決めた物であった。

「・・・バレてたんだな。」
「ですね・・・。」

二人は同時に溜め息をつき、彼女から送られてくる指示を解読する。

「――では、行ってきます。タクトさんは此処に残っていてください。」
「ああ、分かった。頑張れよ、ラス。」

ラスはタクトを残し、彼女からの指示を果たすため人込みの中を掻き分け消えて行った。

(・・・それに、あんなんでも一応相方だ。可愛がってくれた礼はきっちり、させてもらうぜ?お偉いさんよ。)

ネスは彼の動きを確認すると動きを止める。
そして、不敵な笑みを浮かべて目の前に居る頭一つ分ぐらい小さな二人組の方へと向き直った。

「では、これよりエイン、アイン組とネス、アメリア=L=リリス組の試合を開始する!」

ネスが二人の間へ真っ直ぐ突っ込んだ。
二人は左右に散開して突撃を回避すると、そのまま前後から彼女を挟み込むように対峙する。

(さて、どんな芸を披露してくれるんだ?お二人さんよぉ!)

ネスは足を止め、迎撃態勢を整えて二人の出方を待つ。
二人は少しネスの様子を窺った後、突然構えを変える。

「おや?エイン、アイン両選手、同時に構えを変えましたね。しかし、あの構え方は何処かで・・・。」

実況者を始め、二人の見覚えのある構えに観客は首を捻っていた。

「『何処かで』って、目の前に居るじゃねぇか。アレは、あの隙だらけにしか思えない不思議な構えは・・・」

ただ一人、タクトだけは何処で見たかをすぐに思い出していた。
そして、嫌な予感がしてその使用者に視線を送る。
視線の先に居た人物は、相変わらずの余裕に満ちた笑顔で対峙したままだった。

(へぇー・・・中々面白い芸じゃねーか。だがな・・・。)

ネスがゆっくり目を閉じると同時に、二人がゆらりと動き出す。
そして一瞬の内に距離を詰め、拳を真っ直ぐ打ち込んだ。

「私の真似じゃ、私は倒せねぇぜ!お嬢ちゃん達!」
「っ!?」
「な、何が起こったのでしょうか!?一瞬の出来事で、全く捉えることができませんでした・・・っ!?」

ネスは前後から打ち込まれた拳を紙一重でかわし、反撃を繰り出す。
ネスの攻撃は二人の脇を掠め、深く被っていたフードを吹き飛ばした。
二人はその風圧に圧倒され思わず飛び退いて体勢を立て直した。

「な、なんと!エイン、アイン両選手の正体は瓜二つの可愛らしい少女でしたっ!!」

二人は実況者の言うとおり、傍目では全く見分けのつかない奇麗な紫色の髪の少女だった。
ネスの前に居る方は、右側にサイドテールを携え左目が隠れるぐらいに長く垂れ下がっている。
一方の後ろに居る方は、左側にサイドテールを携え右目が隠れるぐらいに長く垂れ下がっていた。
二人は方や黒、方や白の目を覗かせネスを捉えていた。
前方で構えた黒い目を覗かせる少女がネスに叫ぶ。

「た、偶々避けれただけっす!アタイらは完璧に、オマエと同じ動きをしているっす!」
「そうだな。身体能力の差以外は完璧に真似できてるぜ。・・・だから、勝てねぇんだよ。」
「ワケの分かんないこと、言うんじゃないっす!姉貴!!もう一度やるっすよ!!」
「ア、アイン!ちょっと待つさ!」

アインと呼ばれた方の少女は、姉のエインの返事も待たずに再びネスに飛び掛る。
エインは慌ててアインの後に続いて飛び掛った。
二人の息の合った激しい連撃がネスに襲い掛かる。
しかし、ネスは涼しい顔で二人の攻撃を避け続ける。

「アインだっけ?もう諦めた方がいいと思うぜ?エインは感付いてるぞ。」
「五月蝿いっす!避けてばかりのヤツに言われたくないっす!」
「・・・『避けてばかり』、か。」

アインの攻撃が激情に流され勢い任せになった隙を突き、ネスは懐へと飛び込む。

「アインっ!!」
「なっ・・・!?」
「じゃあ、反撃してやんよっ!」
「うぎゃっ!!」

ネスの拳がアインの鳩尾に突き刺さり、数メートル吹き飛んで地面に転がった。
エインが慌ててアインの元に近づいて身体を支える。
アインは蹲り何度も咽び【むせび】ながら、涙目でネスを睨み付けた。

「どーだ?これで諦める気になったか?」
「げほっ!げほっ!・・・くっ・・・ま、まだまだっす!偶然、一発当てただけで・・・いい気になるなっす!!」
「あっ!アイン!もう止めるっさ!!」

エインの制止を振りきり、アインは再びネスに飛び掛る。
アインは戸惑いながらも、彼女を援護するため後に続く。
ネスはアインの闘志に感心しながら、笑顔で激しく降り注ぐ連撃をかわしていた。

「くっ!なんで、アタイらの攻撃が当たらないっすか!?」
「・・・しゃーねぇな、教えてやるよ。」

ネスは呆れた表情で溜め息をつき、徐に両手を翳す。

「なっ!?」「あっ!?」

翳した手に吸い込まれるように、エインとアインの拳が収まる。

「私の戦い方って、一人で戦うことだけに特化してるんだぜ!」

ネスは捕らえた二人の手首を掴んで思い切り引っ張る。
二人は彼女の凄まじい腕力の前に体勢を崩してしまった。

「だからな、アンタらみたいに息の合った連携ができるヤツが使うと返って戦いにくいのさ!」
「うわああーーっ!!」「きゃああーーっ!!」

ネスは前のめりになる二人の間に入り込み、掌で突き飛ばした。
二人は数メートルほど吹き飛ばされ背中から地面に叩き付けられた。

「まっ、真似る相手を間違えたってことだな・・・。」

ネスは軽く溜め息をつきながら両手を何度か軽く叩いた。