14スレ目の74(ななよん)の妄想集@ウィキ
パートB
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14sure74
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(・・・どうやら彼、身のこなし以外は大したことなさそうですわ。これなら、油断しなければ十分勝てますわね。)
アスは意図的に隙を作ってある連撃で揺さぶりをかけ、目の前の小男の実力を量りつつ相手の出方を見ていた。
ガルンと呼ばれた小男は、少し狂気染みた笑顔のまま終始無言でアスの攻撃を避ける。
そして、時折小さく奇声のような掛け声を発しては反撃を行ってきた。
見た目こそ手数が多く強烈な印象のある連撃ではあるが、間に混ざる数発の本命打以外は我武者羅に放っているだけの見掛け倒しである。
恐らく彼は不用意に仲間に近づかれないよう、相手を自分に釘付けにするのが役割なのだろう。
反撃の仕方や後ろに控えている仲間、バランとの立ち位置も含めアスは彼の役割をそう推測した。
(でも、相方には不気味なぐらいに動きがありませんわね・・・。)
アスはバランを一瞥する。
ガルンが執拗【しつよう】に陽動を仕掛け、彼に近付けまいとしているのだ。
彼にはきっと、是が非でも一発必中させたい大技があるのだろう。
戦士としての勘も、彼がこれから何かを行おうとしていることを伝えている。
しかし、彼は何やらじっと精神集中をしているだけで此方の隙を窺っている様子がない。
(何をするつもりかは不明ですが、彼が何かをしようとしているのは間違いないですわね。・・・それならば、この状況で私が取るべき行動は1つ。)
アスはガルンの攻撃を紙一重でかわして懐へと踏み込む。
(今の内に1対1へと持ち込まさせていただきますわっ!)
アスはガルンの頬を目掛けて右拳を突き出した。
アスの攻撃は彼自身の勢いも加わってかなりの速度で彼へと打ち込まれた。
「あぁーっとぉ!!アメリア選手の攻撃がガルン選手の顔へ決まりましたぁぁっ!!」
「――つぅっ!?」
しかし、苦痛に顔を顰めたのはアスの方だった。
ガルンは衝撃で数歩後退り、殴られた頬を手の甲で拭いながらゆっくり体勢を整える。
その顔は最初の時と変わらない少し狂気染みた笑顔のままだった。
アスはその笑顔を恨めしく睨みつけながら右手を庇うように覆って飛び退く。
(なっ!?なんですのっ!?この、まるで鉄の塊を叩いたような感じ・・・彼、本当に人間ですのっ!?)
「な、何が起こったのでしょうか!?何故か攻撃を行ったアメリア選手の方が辛そうな表情を見せていますっ!?」
アスはガルンの動きを注意しながら、右手の調子を確認する。
(・・・どうやら、骨は折れてないようですわね。でも、まだ少し痺れが残ってますわ・・・。)
あくまで人間を相手にしているつもりで拳を放っため、殴った物の予想外の硬さにアスの右手は一時的な感覚麻痺に陥っていた。
アスが右手の調子を確認していた時、ガルンが突撃を敢行【かんこう】してきた。
アスはガルンの突撃に何か嫌な予感を感じながらも避ける。
(――何かが来るっ!?)
その直後、後方でバランが突然両手を前に翳す。
それと同時に拳大ぐらいの透明な丸い歪みが物凄い勢いで飛びだした。
アスは咄嗟に腕を十字に組んでその何かを受け止めた。
「ぐぅっ!?」
(衝撃の割りに痺れが酷いですわっ!?いったい、何を飛ばしたと言うんですのっ!?)
アスの右腕をまるで超重量級の戦士が放った拳を受け止めた後のような痺れが襲う。
骨や筋肉に損傷がないのが不思議なぐらいの事態に、アスの思考は引っ掻き回されていた。
その様子を好機と見たのか、ガルンが間髪居れず連撃を放った。
その隙間を縫うようにしてバランの放つ透明な歪みがアスを襲う。
「ガルン選手の猛攻にアメリア選手、手も足も出ないのか大きく身をかわしています!!いったいどうしたと言うことでしょうか!?」
アスは透明な歪みの弾道も計算して大きく避けざるを得なかった。
しかし、実況者を始め観客にはバランの飛ばす透明な歪みが見えておらず、アスの動きに違和感を感じ次第にどよめき出した。
そして、そのどよめきが叱咤と失望の声に変わっていくのにさほど時間は掛からなかった。
(・・・くっ!何故、痺れが取れないんですのっ!?兎に角、何とかしなくては・・・このままではジリ貧ですわっ・・・!)
アスの右腕を襲った痺れは依然として回復の兆しを見せない。
寧ろ少しずつ痺れが増してきているような気さえ感じていた。
このままではいずれ疲労が溜まり、攻撃を避けるのすら危うくなるのは明白だ。
何か打開策を講じるのならば、まだ体力に余裕のある今の内に講じておくべきだろう。
(仕方ありませんわね・・・。)
アスはガルンの攻撃を紙一重の距離でかわした。
「づぁっ!!――ぐっ!!」
(右腕ぐらい・・・くれて差し上げますわっ!!)
かわした先に待っていた透明な歪みを右腕を無理矢理振り上げて受け止める。
もう殆ど力が入らなくなってしまった右腕を垂らしながらもそのままガルンの脇を通り過ぎ、バランを目指して地を蹴る。
(その代わり、貴方に倒れていただきますわよっ!!)
「遅いですわっ!はぁぁーーっっ!」
慌てて防御を固めようとしたバランよりも早くアスは飛び蹴りを繰り出す。
バランの受け止めようとした手を掠めてアスの左足がバランの胸へと突き刺さった。
バランは苦悶の表情を見せ短く呻き声を上げる。
(ふっ、寸での所で身を捩って急所を庇うとは流石ですわ。それならばもういっ・・・――っ!?!!?)
着地しようとした矢先、アスは突然左足を襲った痺れと激痛に体勢を崩し背中から地に落ちてしまった。
そして、素早く寝返りを打って横になると身を丸めて左足を庇って悲鳴を上げた。
「うぁぁぁあああぁああぁぁぁっ!!」
「なっ!?なにが起きたと言うのでしょうかっ!?アメリア選手、蹴りを放った左足を庇って苦痛の悲鳴をあげています!!」
「あああっ!・・・くっ!・・・ふっ!・・・うあっ!」
(『何が起きたのか』って・・・、私が聞きたいぐらいですわっ・・・!!どうして、筋肉すら傷めていないのにこんなに痛みと痺れがっ!?)
アスは左足を少し伸ばしながらうつ伏せになり、四つん這いになろうと左腕と右足を地に突き立てる。
その時、頭上に気配を感じ、腕と足の力で無理矢理その場を飛び上がって脇にかわした。
一瞬遅れて、アスの居た場所に上空からガルンが勢いよく落ちてきた。
アスはその様子を確認しつつガルンの横へと着地する。
「つっ!?」
左足を地面に軽くつけた瞬間、アスの身体に頭上に突き抜けるような痛みと痺れが走る。
「あっ――」
その痛みに気を取られ体勢を崩した隙をガルンに突かれてしまった。
アスの懐に飛び込んだガルンはアスの右腕を掴むと乱暴に引き寄せた。
ガルンは前のめりに体勢を崩すアスの胴体目掛けて拳を叩き込む。
「ぐぇっ!!・・・うぁっ!!」
仰け反って衝撃を受け流そうとするアスの身体を無理矢理引き寄せる。
「かっ、ふぁっ・・・!?」
その直後、あの透明な歪みがアスの喉元に当たり、アスは呼吸を止められてしまった。
新鮮な空気が肺へ十分に届けられず、全身の細胞が悲鳴をあげる。
「ぅぁっ・・・がはっ!!」
ようやく外気を取り込めたかと思った刹那、再びガルンの拳が胴体に突き刺さった。
アスは折角の空気を否応なく吐き出す羽目になり、その衝撃で再び仰け反る。
「うぇっ!!・・・ぎゃふっ!!・・・あぅっ!!・・・いぎっ!!・・・かはっ!!」
「ああーっと!?ガルン選手の容赦ない連続攻撃に、アメリア選手為す術もなく翻弄されていますっ!?」
酸欠状態のまま何度も激しく前後に身体を揺さぶられ、アスの意識がグチャグチャに掻き回されていく。
「・・・ぅぐっ!!」
ガルンは一段と力を入れてアスの身体を引き寄せると、蛙の様に飛び上がりながらアスの顎へと拳を突き上げた。
アスの身体は弓なりにしなりながら上空へと浮き上がる。
「おごぉっ!?・・・ぉ・・・ぉぉ・・・っ」
その無防備に開かれた胴体に透明な歪みが連続で打ち込まれた。
腹筋を襲った痺れで強制的に空気と意識が吐き出されていく。
その間に背中に回り込んでいたガルンが、アスの背中に飛び蹴りを放った。
「あ゛ぅっ!!」
蹴り飛ばされたアスは、正面に居たバランに捕まった。
バランは自分の身体に寄り掛かったアスの腰の後ろに手を回すと、きつく締め上げた。
その途端、アスの全身を左足を襲った激痛と痺れが駆け巡る。
「――ひぎぃあああああああああぁぁあぁあああああぁあああああぁあああーーっ!!」
「ア、アメリア選手!?バラン選手の締め上げに絶叫しています!?だ、大丈夫なんでしょうか・・・!?」
実況者はアスのあまりに凄絶な叫び声に思わず運営本部の顔色を窺った。
審判も流石に止めに入るべきではないのかと思ったらしく運営本部の顔色を窺う。
しかし二人の意に反して、運営本部からの指示は試合続行だったため、二人は動くに動けなかった。
そうしている間にもバランの締め上げは更にきつくなり、アスの体内を駆け巡る痛みと痺れはより激しさを増した。
「―――――――――・・・・・・っ!!」
アスは背骨が折れそうなぐらいに仰け反り、全身を痙攣させながら天を仰ぎ見る。
蒼く奇麗な虹彩が一気に絞られ、身体の痺れに合わせて激しくぶれる。
開きっぱなしの瞳が乾き、反射的に流れ出した涙が頬を伝う。
アスは息が切れて声が出なくなっても叫び続けた。
「ぁぁ・・・・・・ぅ・・・・・・ぁ・・・・・・っ・・・・・・。」
アスの断末魔の叫び声に圧倒され会場内が完全に静まり返った頃、バランはゆっくりとその縛めを解く。
アスはバランの身体を伝いゆっくりと地面へとずり落ちた。
(か・・・らだが・・・うご・・・・・・かない・・・・・・。)
アスの四肢が時折小さく痙攣し、瞳から涙の雫と供に光が急速に抜け落ちていく。
(たたかわ・・・・・・なくては・・・・・・いけま・・・・・・のに・・・・・・。)
全身に抗いがたい倦怠感【けんたいかん】が圧し掛かり、アスを深淵の眠りへと誘う。
(わた・・・・・・くし・・・・・・・・・は・・・・・・・・・もう・・・・・・・・・)
アスは意図的に隙を作ってある連撃で揺さぶりをかけ、目の前の小男の実力を量りつつ相手の出方を見ていた。
ガルンと呼ばれた小男は、少し狂気染みた笑顔のまま終始無言でアスの攻撃を避ける。
そして、時折小さく奇声のような掛け声を発しては反撃を行ってきた。
見た目こそ手数が多く強烈な印象のある連撃ではあるが、間に混ざる数発の本命打以外は我武者羅に放っているだけの見掛け倒しである。
恐らく彼は不用意に仲間に近づかれないよう、相手を自分に釘付けにするのが役割なのだろう。
反撃の仕方や後ろに控えている仲間、バランとの立ち位置も含めアスは彼の役割をそう推測した。
(でも、相方には不気味なぐらいに動きがありませんわね・・・。)
アスはバランを一瞥する。
ガルンが執拗【しつよう】に陽動を仕掛け、彼に近付けまいとしているのだ。
彼にはきっと、是が非でも一発必中させたい大技があるのだろう。
戦士としての勘も、彼がこれから何かを行おうとしていることを伝えている。
しかし、彼は何やらじっと精神集中をしているだけで此方の隙を窺っている様子がない。
(何をするつもりかは不明ですが、彼が何かをしようとしているのは間違いないですわね。・・・それならば、この状況で私が取るべき行動は1つ。)
アスはガルンの攻撃を紙一重でかわして懐へと踏み込む。
(今の内に1対1へと持ち込まさせていただきますわっ!)
アスはガルンの頬を目掛けて右拳を突き出した。
アスの攻撃は彼自身の勢いも加わってかなりの速度で彼へと打ち込まれた。
「あぁーっとぉ!!アメリア選手の攻撃がガルン選手の顔へ決まりましたぁぁっ!!」
「――つぅっ!?」
しかし、苦痛に顔を顰めたのはアスの方だった。
ガルンは衝撃で数歩後退り、殴られた頬を手の甲で拭いながらゆっくり体勢を整える。
その顔は最初の時と変わらない少し狂気染みた笑顔のままだった。
アスはその笑顔を恨めしく睨みつけながら右手を庇うように覆って飛び退く。
(なっ!?なんですのっ!?この、まるで鉄の塊を叩いたような感じ・・・彼、本当に人間ですのっ!?)
「な、何が起こったのでしょうか!?何故か攻撃を行ったアメリア選手の方が辛そうな表情を見せていますっ!?」
アスはガルンの動きを注意しながら、右手の調子を確認する。
(・・・どうやら、骨は折れてないようですわね。でも、まだ少し痺れが残ってますわ・・・。)
あくまで人間を相手にしているつもりで拳を放っため、殴った物の予想外の硬さにアスの右手は一時的な感覚麻痺に陥っていた。
アスが右手の調子を確認していた時、ガルンが突撃を敢行【かんこう】してきた。
アスはガルンの突撃に何か嫌な予感を感じながらも避ける。
(――何かが来るっ!?)
その直後、後方でバランが突然両手を前に翳す。
それと同時に拳大ぐらいの透明な丸い歪みが物凄い勢いで飛びだした。
アスは咄嗟に腕を十字に組んでその何かを受け止めた。
「ぐぅっ!?」
(衝撃の割りに痺れが酷いですわっ!?いったい、何を飛ばしたと言うんですのっ!?)
アスの右腕をまるで超重量級の戦士が放った拳を受け止めた後のような痺れが襲う。
骨や筋肉に損傷がないのが不思議なぐらいの事態に、アスの思考は引っ掻き回されていた。
その様子を好機と見たのか、ガルンが間髪居れず連撃を放った。
その隙間を縫うようにしてバランの放つ透明な歪みがアスを襲う。
「ガルン選手の猛攻にアメリア選手、手も足も出ないのか大きく身をかわしています!!いったいどうしたと言うことでしょうか!?」
アスは透明な歪みの弾道も計算して大きく避けざるを得なかった。
しかし、実況者を始め観客にはバランの飛ばす透明な歪みが見えておらず、アスの動きに違和感を感じ次第にどよめき出した。
そして、そのどよめきが叱咤と失望の声に変わっていくのにさほど時間は掛からなかった。
(・・・くっ!何故、痺れが取れないんですのっ!?兎に角、何とかしなくては・・・このままではジリ貧ですわっ・・・!)
アスの右腕を襲った痺れは依然として回復の兆しを見せない。
寧ろ少しずつ痺れが増してきているような気さえ感じていた。
このままではいずれ疲労が溜まり、攻撃を避けるのすら危うくなるのは明白だ。
何か打開策を講じるのならば、まだ体力に余裕のある今の内に講じておくべきだろう。
(仕方ありませんわね・・・。)
アスはガルンの攻撃を紙一重の距離でかわした。
「づぁっ!!――ぐっ!!」
(右腕ぐらい・・・くれて差し上げますわっ!!)
かわした先に待っていた透明な歪みを右腕を無理矢理振り上げて受け止める。
もう殆ど力が入らなくなってしまった右腕を垂らしながらもそのままガルンの脇を通り過ぎ、バランを目指して地を蹴る。
(その代わり、貴方に倒れていただきますわよっ!!)
「遅いですわっ!はぁぁーーっっ!」
慌てて防御を固めようとしたバランよりも早くアスは飛び蹴りを繰り出す。
バランの受け止めようとした手を掠めてアスの左足がバランの胸へと突き刺さった。
バランは苦悶の表情を見せ短く呻き声を上げる。
(ふっ、寸での所で身を捩って急所を庇うとは流石ですわ。それならばもういっ・・・――っ!?!!?)
着地しようとした矢先、アスは突然左足を襲った痺れと激痛に体勢を崩し背中から地に落ちてしまった。
そして、素早く寝返りを打って横になると身を丸めて左足を庇って悲鳴を上げた。
「うぁぁぁあああぁああぁぁぁっ!!」
「なっ!?なにが起きたと言うのでしょうかっ!?アメリア選手、蹴りを放った左足を庇って苦痛の悲鳴をあげています!!」
「あああっ!・・・くっ!・・・ふっ!・・・うあっ!」
(『何が起きたのか』って・・・、私が聞きたいぐらいですわっ・・・!!どうして、筋肉すら傷めていないのにこんなに痛みと痺れがっ!?)
アスは左足を少し伸ばしながらうつ伏せになり、四つん這いになろうと左腕と右足を地に突き立てる。
その時、頭上に気配を感じ、腕と足の力で無理矢理その場を飛び上がって脇にかわした。
一瞬遅れて、アスの居た場所に上空からガルンが勢いよく落ちてきた。
アスはその様子を確認しつつガルンの横へと着地する。
「つっ!?」
左足を地面に軽くつけた瞬間、アスの身体に頭上に突き抜けるような痛みと痺れが走る。
「あっ――」
その痛みに気を取られ体勢を崩した隙をガルンに突かれてしまった。
アスの懐に飛び込んだガルンはアスの右腕を掴むと乱暴に引き寄せた。
ガルンは前のめりに体勢を崩すアスの胴体目掛けて拳を叩き込む。
「ぐぇっ!!・・・うぁっ!!」
仰け反って衝撃を受け流そうとするアスの身体を無理矢理引き寄せる。
「かっ、ふぁっ・・・!?」
その直後、あの透明な歪みがアスの喉元に当たり、アスは呼吸を止められてしまった。
新鮮な空気が肺へ十分に届けられず、全身の細胞が悲鳴をあげる。
「ぅぁっ・・・がはっ!!」
ようやく外気を取り込めたかと思った刹那、再びガルンの拳が胴体に突き刺さった。
アスは折角の空気を否応なく吐き出す羽目になり、その衝撃で再び仰け反る。
「うぇっ!!・・・ぎゃふっ!!・・・あぅっ!!・・・いぎっ!!・・・かはっ!!」
「ああーっと!?ガルン選手の容赦ない連続攻撃に、アメリア選手為す術もなく翻弄されていますっ!?」
酸欠状態のまま何度も激しく前後に身体を揺さぶられ、アスの意識がグチャグチャに掻き回されていく。
「・・・ぅぐっ!!」
ガルンは一段と力を入れてアスの身体を引き寄せると、蛙の様に飛び上がりながらアスの顎へと拳を突き上げた。
アスの身体は弓なりにしなりながら上空へと浮き上がる。
「おごぉっ!?・・・ぉ・・・ぉぉ・・・っ」
その無防備に開かれた胴体に透明な歪みが連続で打ち込まれた。
腹筋を襲った痺れで強制的に空気と意識が吐き出されていく。
その間に背中に回り込んでいたガルンが、アスの背中に飛び蹴りを放った。
「あ゛ぅっ!!」
蹴り飛ばされたアスは、正面に居たバランに捕まった。
バランは自分の身体に寄り掛かったアスの腰の後ろに手を回すと、きつく締め上げた。
その途端、アスの全身を左足を襲った激痛と痺れが駆け巡る。
「――ひぎぃあああああああああぁぁあぁあああああぁあああああぁあああーーっ!!」
「ア、アメリア選手!?バラン選手の締め上げに絶叫しています!?だ、大丈夫なんでしょうか・・・!?」
実況者はアスのあまりに凄絶な叫び声に思わず運営本部の顔色を窺った。
審判も流石に止めに入るべきではないのかと思ったらしく運営本部の顔色を窺う。
しかし二人の意に反して、運営本部からの指示は試合続行だったため、二人は動くに動けなかった。
そうしている間にもバランの締め上げは更にきつくなり、アスの体内を駆け巡る痛みと痺れはより激しさを増した。
「―――――――――・・・・・・っ!!」
アスは背骨が折れそうなぐらいに仰け反り、全身を痙攣させながら天を仰ぎ見る。
蒼く奇麗な虹彩が一気に絞られ、身体の痺れに合わせて激しくぶれる。
開きっぱなしの瞳が乾き、反射的に流れ出した涙が頬を伝う。
アスは息が切れて声が出なくなっても叫び続けた。
「ぁぁ・・・・・・ぅ・・・・・・ぁ・・・・・・っ・・・・・・。」
アスの断末魔の叫び声に圧倒され会場内が完全に静まり返った頃、バランはゆっくりとその縛めを解く。
アスはバランの身体を伝いゆっくりと地面へとずり落ちた。
(か・・・らだが・・・うご・・・・・・かない・・・・・・。)
アスの四肢が時折小さく痙攣し、瞳から涙の雫と供に光が急速に抜け落ちていく。
(たたかわ・・・・・・なくては・・・・・・いけま・・・・・・のに・・・・・・。)
全身に抗いがたい倦怠感【けんたいかん】が圧し掛かり、アスを深淵の眠りへと誘う。
(わた・・・・・・くし・・・・・・・・・は・・・・・・・・・もう・・・・・・・・・)