14スレ目の74(ななよん)の妄想集@ウィキ

誓いの輝石~Avenge~ > #09 > パートB


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ゲル・ドランの中央部に位置する円形の大きな建物、その建物こそが競技場でありこの国一番の祭事、格闘大会の会場である。
競技場は今、満天の星空よりも多くの人間が犇き、凄まじい熱気と歓声に包まれその身を戦慄かせていた。
予定時間に合わせて格闘大会の主催者が壇上に上がり、開幕の宣言をする。

「・・・とまぁ、諸般の都合で当初は開催は見合わせる予定でしたが、皆様の熱い声援に答え急遽開催する運びとなりました。」

主催者はまず開催時期が今までと違ってしまった経緯について説明し、お詫びの言葉を述べる。

「・・・1280組2560人もの方にこうして参加して頂き、誠に感謝しております。皆様の御健闘を祈りまして開幕の挨拶と替えさせて頂きます。」

主催者が深く一礼すると拍手の嵐が巻き起こり、同時に派手な色の紙吹雪が会場に降り注いだ。

「すっげ~、こんなに盛大な祭りだとは思わなかったぜ・・・。」
「ジ・パンド全体で見ても、これほど大きな祭事はそうはありませんよ。・・・あっ、ネスさん達です。」

ラスの指差す方向をタクトは目で追った。
そこには退屈そうに欠伸をしているネスと、その様子に頭を痛めている修道着のような服に身を包んだアスの姿があった。
開幕宣言が終わると選手達は係員の案内で其々の控え室に戻る。
そして、予選準備が終わるまでの間、思い思いの最終調整に入った。

「あら、ヒマそうね。予選試合のルールはもう確認されたのかしら?」

長椅子に寝転がって伸びをしているネスに、アスは問いかける。

「んなもん・・・よぉ~は相手をぶっ飛ばせばいいんだろ?」

ネスは天井をぼんやりと見つめながら答えた。

「はぁっ・・・貴女らしい短絡的な解釈ですこと・・・。」
「んだよ、そのとーりじゃねーかっ。」

アスの呆れ果てたような溜め息が癇に障り、ネスは飛び起きながら突っかかる。
アスはやれやれといったポーズを取って首をゆっくり左右に振った。

「まぁ、貴女の出番はありませんから、その程度の解釈でも問題ないですわ。」
「ふふんっ♪残念だったな。出番無しはアンタの方だぜ♪」

ネスが不敵な笑みを浮かべながら言い終わると同時に、係員が組み合わせ結果を伝えに来た。

「・・・と、なりました。この試合、先発はネス選手です。」
「なっ♪」
「なっ!なんですってぇ!ちょっと、どういうことですの!?」

度肝を抜かれたアスは係員の胸倉を掴み激しく揺さぶる。
ネスは係員に食って掛かったアスを無理矢理引き剥がし、得意げに仕掛けを説明しだした。

「なに、簡単だぜ。さっきちょっと出かけた時に、先発の宣言をしておいただけさ。」
「なん・・・ですって・・・。くっ・・・よりによって貴女に出し抜かれるなんて、屈辱ですわっ!」
「カッカッカッ!もっと強かに生きなきゃダメだぜ?アス♪」

仁王立ちで勝ち誇った笑い声をあげるネスと、苦虫を噛み潰したような顔で拳を強く握り締めるアスであった。

~~~~

予選試合は会場内8箇所に設置された正方形の舞台の上で行われる。
道具や反則技を使わない限りはどんな技を使っても構わず、相手が倒れてから十数える間に立ちあがらなければ勝ちである。
また、相手を舞台の外へ落としたり試合放棄させることでも勝利となる。
なお、3分という制限時間が設けられており、超えた場合は審判による判定となる。

「――と、いうワケですので・・・」
「いいから、さっさと始めようぜ?」

ネスは審判のルール説明を遮り、両腕を大きく回しながら試合開始を催促する。
そして、目の前の男を見て態とらしい大きな欠伸をして挑発した。
ネスと対峙していた筋骨隆々の男は、挑発に乗って叫び出す。

「おう!ネエちゃんよ!ヤケに余裕そうだが、オレ様が誰かわかってんのかぁ?」
「・・・わりぃ、誰?アスぅ~・・・、アイツのこと知ってるかぁ?」

ネスは喚き散らす男を尻目にアスの方に振り返りながら尋ねる。
アスは鼻で軽く笑いながら答えた。

「まったく。貴女と言う女性【ひと】は、そんなこともご存知ないのですか?彼は・・・何方でしたかしら?」
「なんだ。アスも知らねーのか。」
「た、偶々【たまたま】出てこなかっただけですわっ!もう少し考えれば出てきますわよっ!」
「お~お~、そうかい。そうかい。」
「つーか無視すんなゴラァァッ!!」

男の地を揺るがさんがばかりの怒声に、二人は渋々彼の方へと振り向く。

「で、誰なんだアンタ。」
「冥土の土産に教えてやろう!ダオジンと言やぁこの辺りじゃ怪力で有名だぞゴルァ!」
「いいぞぉ~!ダオジンのアニキぃ~!!」
「・・・って、聞けやぁっ!!」

ネスはダオジンの気合の入った自己紹介を無視し、観客席に居るラスとタクトに笑顔で手を振っていた。

「そんなに喚くなって、ちゃんと聞いてたからよ。・・・ようは、強いんだろ?アンタ。」
「う、ま、まぁそうだな!」
「じゃ、始めようぜ?審判、合図してくれ。」
「ですがまだ・・・分かりました。では、試合を始めてください!」

ネスに威圧的な笑顔に負けた審判が溜め息混じりに試合開始の合図を出した。

「フフフ、放棄するなら今のうちだぜ?ネエちゃんよぉ?」
「いいから打ってこいよ?アンタ、打たせてやらねぇと私を捉えることすらできねーし。」
「なん、だと・・・!!」

ネスは構えもせず、首を軽く振って鳴らしながら左手でダオジンを誘う。
ダオジンは遂に怒りが頂点を超え爆発した。

「後悔させてやるぞこのアマァァァッ!!」

一気に距離を詰め、右腕を引き戻す。
そして、全体重を乗せてネスの鳩尾へと右腕を突き入れた。
ネスの身体が衝撃で少しだけ押し戻され、風圧で赤いアンダーテイルが激しく宙に舞う。

「それで?」
「・・・へっ?」

ダオジンの渾身の一撃によって引き起こされた衝撃が収まった頃、ネスは不敵な笑みを口元に浮かべて問いかけた。
問い掛けの意味が分からず、ダオジンは聞き返した。

「そ、それで・・・だぁ?」
「おう。この後、なんか続きねぇの?」

ネスの何かを期待する眼差しにダオジンは思わずたじろいでしまう。

「つ、続きってなんのことだ!?」
「なんだ、ねぇのか。私はてっきり・・・。」

ネスは瞬く間にダオジンの懐に入り込む。

「なっ!?消え・・・」
「こうして・・・」「ぐえっ!?」

ネスの右腕がダオジンの鳩尾に深く減り込む。

「こうやって・・・」「うげっ!!」

前屈みになったダオジンの顎にネスの蹴りが入り、身体ごと宙に跳ね上がる。

「これぐらいはする。」「ぬわああっ!」

ネスの空中回し蹴りが無防備に開け放たれた胴体に直撃し、場外へと凄い速さで吹き飛んだ。

「って、思ってたんだが。」「――ひぎぃっ!」
「ア、アニキィ~~・・・!!」
「・・・ダ・・・ダオジン選手、場外!この試合、ネス、アメリア組の勝ち!」

そのあまりに衝撃的な試合内容に、観客のざわめきがぴたりと止まってしまった。
ネスは硬直している観客に屈託のない笑顔でVサインを送りながら、アスの待つ舞台下へと戻った。

「・・・遅いですわっ!」
「な、なんだよ!藪から棒に!」
「あの連撃、無駄だらけですわ。特に最後、私でしたら絶対反撃していますわよ。」

アスの呆れ返ったような視線が癪に障り、ネスは食って掛かった。

「いいんだよ!あっちの方がカッコイイしな!」
「戦いにカッコイイとか関係ありませんことよっ!今回の貴女の試合時間は約30秒、私でしたら10秒で・・・」
「なんだ、10秒か。偉そーなこと言うから私はてっきり、3秒とか言い出すかと思ってたぜ?」
「さ、3秒・・・ですって・・・!?」

アスの顔が少しだけ引き攣る。
ネスはそれを見逃さず、にやけ顔でアスに追い討ちをかける。

「んっ?無理なのか?まぁ、無理なら別に・・・」
「い、いいですわっ!貴女に3秒で相手が敗北を喫する【きっする】光景を見せて差し上げますわっ!!」
「おーっ!言ってくれたなっ!じゃ、次の試合代わってやるから見せてくれよっ!」

~~~~

「――と、いうワケですので、申し訳ありませんがこの試合、3秒で終わらせて頂きますわ。よろしくて?」

アスは対峙した坊主頭で長身の青年に笑顔で問いかける。

「・・・よろしい、ワケねぇだろーがっ!!」

青年は頭に青筋を沢山浮かべながら答えた。
そして、審判の試合開始の合図と同時にアスへと飛び蹴りを入れた。・・・つもりだった。

「よ、避けられたぁ!?」
「いい飛び蹴りですわ・・・。でも、速度不足ですわっ!」「ぐふぅっ!!」

アスは青年の飛び蹴りを紙一重でかわしながら、擦れ違い様に背中へ拳を叩き込んだ。
勢いの乗った拳は青年の飛び蹴りの勢いも借りて、青年の頭を激しく揺さぶりながら場外へと吹き飛ばした。

「・・・後、跳躍距離と跳躍高度不足ですし、狙いも不正確すぎですことよ。」
「――この試合、ネス、アメリア組の勝ち!」

アスはどよめく観衆には目もくれず、乱れた衣装を軽く整えてから舞台下で観戦していたネスの傍に歩み寄った。

「なんだ。3.22秒じゃねーか。」
「私の攻撃は3秒丁度でしたわ。0.22秒は彼の技の未熟さが招いた結果ですわ。」
「はいはい、そーいうことにしといてやるよ。まっ、私なら相手が誰であれ3秒切れるけどなっ♪」
「言ってくれますわね・・・。では、見せて頂きますわよ。」

その後、二人は交互に試合に出場しては相手を3秒以内に倒すのを目標に戦い続けた。
二人の圧倒的強さに始めは度肝を抜かれて静まり返っていた観客も、次第に彼女達の強さに惹かれていった。
そして気付けば二人は一番の人気コンビとなり、登場する度に大きな歓声が巻き上がるようになっていた。

「――この試合、ネス、アメリア組の勝ち!従って、本選出場決定!」
「ワアアアァァァーーッ!」「いいぞぉーっ!ネエちゃん達ぃぃーっ!」「こっち向いてくれぇーっ!!」

鳴り止まない祝福の拍手と口笛、会場全体を揺るがす大歓声にネスは満面の笑みで拳を突き上げて応えた。
その隣でアスは額に手を当て俯きながらも、満更ではない様子で口元に笑みを浮かべていた。

~~~~

「結局、お互い3秒の壁は越えられずか。・・・まっ、平均は私の方が早かったけどな♪」
「あら、私の3.01秒は予選最速記録でもありますわよ?」

二人は本選出場者のために用意された仮眠室で、今日の試合結果を振り返っていた。
二段ベッドの上であぐらを掻きながら笑うネスに、仰向けになって上段のベッドの底を見つめながら答えるアスだった。

「・・・所で貴女。以前にこの大会、もしくはこの国で何か問題起こしたりしていませんこと?」
「えっ?なんだよ急に。」
「いいから、答えなさい。」
「んーっと・・・ああそういや、すっかり忘れてたが、私は去年の大会で優勝した気がするぜ。」

ネスは上段のベッドから首を出して下段のベッドを覗き込む。
アスは見向きもせず言葉を続ける。

「・・・納得ですわ。貴女、完全に狙われてますわよ。」
「・・・道理で、各地で名の知れたヤツらがやたら私らと当たったワケだな。」
「あら、どうやら思っていたよりは頭が切れる女性【ひと】ですこと。」

ネスは首を引っ込めるとうつ伏せになり、窓から見える夜景をぼんやり見つめる。
アスは軽く伸びをした後、上段にいるネスへと話しかけた。

「・・・その様子だと、この大会の真の目的もご存知のようですわね。」
「自国で育てた傭兵の一大見本市だろ?一般参加の腕自慢達を得意先の連中が見てる前でぶっ倒させてんだ。」
「その通りですわ。去年は貴女が優勝してしまったせいで恐らくは大赤字だったでしょうね。」
「そーだろうな。今年は私を警戒してやらないかとも思ってたんだが・・・」
「・・・貴女、まさか。」
「おう♪今回出場すれば本気で潰しに掛かってくるだろうと思って、期待してたんだぜ♪」

アスは高笑いをするネスに暫く唖然としていた。
そして大きな溜め息をついて気を取り直すと、言葉を続ける。

「・・・貴女って、バカなのかバカじゃないのか分からない女性【ひと】ですわね。」
「まぁまぁ、アンタもつえぇヤツと戦うのは、好きだろ?」
「貴女みたいな粗野な方とは違いますわっ。・・・でも、否定はいたしませんわ。」

少しの静寂の後、二人の不敵な笑い声が重なった。

(明日の本選、楽しみだぜ♪)(明日の本選、楽しみですわ♪)

二人は明日行われる本選にどんな強敵が用意されているか期待に胸を膨らませながら眠りにつくのだった・・・。

~つづく~