14スレ目の74(ななよん)の妄想集@ウィキ

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14sure74

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あれから数日、タクト達はダイア・スロンの追手やら別口の追手やらを跳ね除けながら都へと進んでいた。
幾つかの集落や国を経由したタクト達は、ある国へと差し掛かっていた。

「タクトさん。」
「ん?」

運転中、ラスが小声で助手席のタクトに問いかける。
タクトはラスの様子から内緒話であることを悟り、少し身を寄せて耳を傾けた。

「ネスさんは・・・どうしてますか?」
「ネスか・・・熟睡中だな。」

タクトはそっと後部座席の様子を確認して答える。
ラスは安堵の溜め息を漏らした。

「よかった・・・これで、迂回できますね。」
「迂回って、このまま先に行くとなんかあるのか?」
「ええ。この先にはゲル・ドランという・・・」
「都みたいに集落1つが国になってる飯が旨いトコがあんだよなっ♪」
「そうなんですよ。・・・って、ネスさん!?」

タクト達が驚いて首を向けると、ネスは後部座席から顔を覗かせていた。

「ハラ減ったし、当然寄るよな?」
「ですが・・・直前の補給分で都までは行けますし・・・。」
「いいじゃねーか、ラス。俺もちょっと興味あるし、少し見て回るだけなら大して時間も掛からないだろ?」
「うっし♪多数決で決定な♪」
「・・・分かりました。・・・・・・はぁっ。」

ラスは溜め息を1つついてゲル・ドランへとライトカーゴを走らせた。
それから程なくして一行はゲル・ドランへと辿り着いた。

「おっ!?ラス!見てみろ!!丁度いい時に来たぜ♪」
「・・・・・・これは、夢ですか?」

車を一旦停め、塀の張り紙に目を通すタクト達。
タクトは何故ラスがこの国に立ち寄ることを敬遠したのか疑問に思っていたが、この張り紙で何となく理由が想像できた。
そして、観光客向けの駐車スペースにライトカーゴを停めたタクト達は、一番大きな通りを進んでいた。

「おーい!ラス!早く来いよー!募集終わっちまうぞー!」
「分かってますよぉ~!・・・はぁっ・・・今年は開催しないという噂でしたから、大丈夫だと思ってましたが・・・。」
「・・・まぁ、運が悪かったと思うしかねぇな。」

人波を掻き分けてさっさと先に進んでいたネスは、時々振り返って大声でラスを招く。
ラスは何度も溜め息をつき、重い足取りでネスの後を追っていた。
タクトはラスの肩を軽く叩きつつ、先に見かけた張り紙と同じ内容の案内広告に目を落とす。

「・・・あれ?ラス、この大きく描かれてるヘンな絵って何だ?」
「ヘンな絵ですか?・・・ああ、コレですか。コレは、少し古い言葉で『闘神の国へようこそ。』と書いてあります。」
「えっ!?コレが・・・文字なのか!?」

どう見ても記号の羅列のようにしか見えない絵が文章である。
タクトは驚くと同時に、今まで気にしていなかった疑問が沸いてきた。
ラスも彼の反応で同じ疑問を抱いたのだろう、二人は申し合わせたように同じ疑問を口にした。

「そういえば、今までなんで普通に読み書きできたんだろう?」
「そうですね・・・。この世界の文字の読み書きに関しては全く教えていないのに、自然に読み書きできていましたよね・・・。」

タクトはよく目を凝らして案内広告を見てみた。
すると、今まで何の苦労もなく読めていた文章が、見たことも無い記号の羅列にしか見えなくなってきた。
それからタクトは試しに自分の名前を指で書いてみる。
頭の中では漢字で書いているつもりなのに、指は自然と先の羅列を描いていた。

「これも・・・輝石の効果なんだろうか?」
「そうかもしれませんね。タクトさんが読み書きできている言語は今ジ・パンドで一番使われている言語ですし。」
「言語の勉強しなくていいって、これは楽でいいな。」
「しかし、この言語は古い文献では良く見られる言語ですから・・・」
「・・・結局、勉強しなきゃダメってことですか、そうですか。」

タクト達が立ち止まって話し合っていると、先で待っているネスが騒ぎ出した。
二人はこの疑問についてこれ以上話し合うことをやめ、駆け足で彼女の元へと向かった。

「・・・なるほど、この格闘大会ってのでネスに振り回されるのを警戒していたんだな。」
「ええ、そういうことです。」
「いいじゃねーか、ネス一人に暴れさせとけば・・・。優勝商品も中々魅力的だし。」

タクトは優勝商品の欄を見ながら答えた。
そこにはミニバン型の車ような挿絵付きで、優勝商品にボックスカーゴを進呈と書かれていた。

「もう少し、下を見てください・・・。」
「ん?なになに・・・『参加条件、心身供に健康な二人組。』・・・OK、把握した。」

考えてみれば彼女一人が参加するだけならば彼が此処まで敬遠するはずがなかった。
現状、どう考えても付き合わされるのはラスであり、様子からみて既に一度は付き合わされたのだろう。
タクトはネスに促され厭々歩みを進めるラスに小さく胸元で十字を切って手を合わせた。

「ほらっ!もうじき締め切りだぜ!早く来いって!」
「分かってますから、前見てくださいよー!誰かとぶつかったら、相手が大変なことになってしまうじゃないですかぁー!」
「大げさだなぁ!この私が人とぶつかるワケ・・・――あっ?」「――えっ?」

ネスが交差点を走って横断しようとしたその瞬間であった。
建物の影から勢いよく飛び出してきた人物と衝突してしまった。

「・・・ってぇなぁ・・・ったく。」「・・・イタタタぁ・・・まったく。」
「何処見て歩いてやがるっ!私は今急いでんだよ!」「何処見て歩いているんですのっ!私【わたくし】は今急いでいますのよっ!」

地面に打ち付けた部分を撫でながら二人は同時に相手を睨み付けた。
二人の気迫溢れる怒声に周囲に居た者達の時間が止まってしまう。
暫くの沈黙後、人々は止まっていた其々の時間を取り戻すかのように足早にその場を去って行った。

「ぶつかってきたのは貴女ですわ!早く謝って頂けませんこと!!」
「知るかっ!アンタがいきなり飛び出してきたのが悪いんだろーが!!」
「なんですってぇぇ~~っ!?」「なんだよ!?やるならやってやんよっ!?」

二人はじっと睨み合って動こうとしない。
行き交う人々はその様子を見て見ぬふりをしてただ足早に通り過ぎるだけだった。
微動だにしない二人の間に割って入ったのは、駆けつけたラスであった。

「ネスさん!何があったので・・・」
「ちょっと待ってろ!今取り込み中だ!」
「そうですわ!何処の何方かは存じませんが口出しは・・・あっ・・・。」

この時、彼女は初めて恋に落ちた。
目の前の柄の悪い不良女との口論中に突然現れた緑色のマントを身に纏った男性。
紫色の整った髪と正しく着こなされた服装は彼の誠実さが良く現れていて、緑色の少し情けない瞳は母性本能を擽る。
彼女は顔が真っ赤になっていくのを感じて思わずそっぽを向いてしまった。

「・・・あの、大丈夫でしたか?ケガはありませんか?」
「・・・へっ!?わわわわっ!?私なら、だだだ大丈夫ですわっ!?」
「そうですか、それは良かった・・・。」

彼の少し高くて柔らかな声が心地良く、優しい笑顔がとても眩しい物に見える。
彼女は眩しさのあまりつい顔を伏せてしまった。
彼女の様子が何処かおかしいことに気付いた彼が心配そうに尋ねる。

「本当に大丈夫ですか?なんだか、様子がおかしいですけど・・・。」
「あっ!?い、いえっ!ホントに大丈夫ですわっ!これぐらい、どうってことありませんものっ!」

心配そうに覗き込んでくる彼の顔が愛くるしい物に見え、完全に彼女の頭の中は彼一色に染まってしまった。
しかし、振って沸いた彼女の至福の時をぶち壊す声がする。

「そりゃそーだろっ。完璧に受身とってりゃあんぐらいどーってことねぇよな。」
「えっ?受身って・・・」
「ちょっ!ちょっと貴女!いい所でしたのに邪魔しないでくださるっ?!」
「いい所って、あの・・・」
「はっ!?・・・なな、なんでもありませんわっ!」

彼女はこれ以上彼を見ていると全身が熱で蕩けてしまいそうに感じて、慌てて踵を返した。
そして、話題を変える為大きな独り言を呟く。

「そ!そうでしたわ!早く行かないと格闘大会の締め切りに間に合いませんわっ!」
「おっと、そうだった!すっかり忘れてたぜ!早く行かねーとっ!」
「・・・って、なんだとぉっ!?」「・・・って、なんですってぇっ!?」

二人は再び顔を合わせて驚愕の声を上げた。

「おいおい、見物の間違いじゃねぇのか?一人じゃ出れないんだぜ?」
「それぐらい知っていますわ。ですから、雇っておいた相方とこの先で合流する予定ですわ。」
「へぇーそうかい。まっ、丸腰で何処までやれっか楽しみにしといてやるぜ、ブーストガンナーのお・じょ・う・サ・マ。」
「貴女こそ、力押しが何処まで通用するか楽しみにさせて頂きますわ、ファイターのゴ・ロ・ツ・キ・さ・ん。」

蒼いクロークに身を包んだ女性は服と同じ色の髪を風に靡かせてネス達の前を歩き出した。
ネスは少し早く歩いて後ろから追い抜く。
ネスに追い抜かれた彼女は少し歩く速度を速めて抜き返す。
それがどんどん繰り返されて行き、仕舞いにはお互い全速力で走りだし抜きつ抜かれつの徒競走へと発展してしまった。

「あ~あ、もう見えなくなっちまったよ・・・。」
「・・・そうですね。」

風を切って棚引く赤いアンダーテイルと蒼いクロークを見送りながらタクトが呟き、ラスが同意する。
二人は呆然とその様子を見ているしかなかった。

「あのさ、あの二人って・・・。」
「あっ、タクトさんもそう、思います?」

二人は彼女達が走り去って行った方へ歩きながら同時に口を開いた。

「仲良くなれそうだな・・・。」「仲良くなれそうですね・・・。」

~~~~

「・・・っしゃあああっ!!私の勝ちぃぃっ!!」

ネスは左の拳を天高く突き上げて勝ち鬨【かちどき】をあげた。

「くっ!じ、字数の差ですわっ!書き始めたのは私の方が先でしたわっ!!」
「負け惜しみなんか言って、みっともないぞ♪潔く負けを認めなって♪」

ネスは悔しそうに地面に何度も拳を打ち付ける彼女の前で勝ち誇った笑みを見せる。

「えぇっと・・・ネス様、アメリア=L=リリス様の2名で登録ですね。」
「・・・え゛っ。」

受付係の声に二人は驚いて同時に振り向き、受付係から登録名簿を奪い取ると二人して覗き込んだ。
そこにははっきりと二人の名前が隣同士に書かれており、二人がチームであることを示していた。

「ちょっと!どういうことですの!?」
「ど、どういうことと聞かれましても・・・貴女方が書かれたワケですし・・・。」
「アイツと組めって言うのか!変更できねーのかよ!!」
「そう言われましても、もう締切時間は過ぎてますし・・・。」

受付係の両肩を掴んで激しく前後に揺さぶるネスと、後ろで激しく食って掛かるアメリアと呼ばれた女性だった。
結局、後からやって来たラスとタクトに止められるまで二人はずっと抗議し続けていたが、要求が通ることは遂になかった。

「・・・なるほど、そういうワケですか。」
「ああ、そうなんだよ。私、アレと組むのはごめんだぜ!」
「わっ!私だって、貴女みたいな粗野な方と組むのはごめんですわ!」

二人はお互いに睨み合った後、同時にそっぽを向いた。
ラスはこのままでは収拾がつかないと考え、とりあえず二人を宥めることにした。

「まっ、まぁ、ネスさん。僕と組んでたとしても、貴女一人で戦うつもりだったのでしょう?」
「んっ?まっ、まぁそうだが・・・。」
「でしたら、予定通り貴女一人で戦えばいいではありませんか。それとも、彼女では何か不都合がありますか?」
「うっ・・・ラス、今日は何だか珍しく主張するな・・・。分かったよ、組めばいいんだろっ?」

ラスが珍しくずいずいと迫ってくるので、ネスは渋々彼の提案を聞き入れた。
ラスはその様子に笑顔を見せ、同じくそっぽを向いたままの女性へと振り返る。

「と言うワケですから・・・」
「イヤですわっ!どうして私があのよう・・・うっ・・・。」
「そこを・・・何とかなりませんか・・・?」
「うぅっ・・・・・・。」
(そんな、今にも泣きそうな目で私を見つめないでっ!お願いですわぁぁっ!)

ラスの困ったような視線に彼女は居た堪れない気持ちで胸がいっぱいになってしまった。

「わ、分かりましたわっ!そこまで言うのでしたら、組んでさしあげてもよろしいですわよ・・・。」
「そうですか。ご迷惑お掛けします。えっと・・・」
「アメリア=L=リリスよ。」
「ありがとうございます。アメリアさん。」

結局、アメリアと名乗った女性はラスの安堵の笑顔に完全に絆され、彼の提案を聞き入れた。

「・・・まっ、そーいうワケだからよ。」「・・・そういうワケですから。」
「よろしくなっ♪アスっ!」「よろしくですわ、ネスさん。」

二人はラスの手前、仕方なく手を取り握手を交わした。

「ア、『アス』・・・ですって?」
「おう、アンタのことだ。」
「ヘンな呼び方は止めてくださらないかしら?私は・・・」
「では!ネスさんのことお願いしますね。アメリアさん。」

放っておけば再び険悪な雰囲気になりそうだったので、ラスはすかさず二人の会話に割って入った。

「はっ、はいっ♪分かりましたわ、えっと・・・。」
「ラグ=F=アルガス、ラスでいいですよ。」
「この猛獣みたいな方の首輪はちゃんと握っておきますわ、ラスさん。」

アスは猛獣呼ばわりされて猛反発するネスを引っ張りながら、選手専用の入場口へと入って行った。

「・・・あの二人、大丈夫なのか?」
「・・・ま、まぁケンカするほど仲が良いとも言いますし。」

後に残されたラスとタクトは、二人の仲を心配しながらも見物席へと向かうのだった。
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