14スレ目の74(ななよん)の妄想集@ウィキ

誓いの輝石~Avenge~ > #07 > パートA


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男は一人、静まり返った部屋に鎮座【ちんざ】していた。
赤く鋭い眼は昏い闇の底をただじっと見つめている。
男はまるでその場所にずっと置いてある像のように、身動ぎ一つせず何かを待ち続けていた。

「・・・彼女が、来たか。」

突然、音も無く現れた者に彼は全く動じる素振りも見せず問う。
その者は短く肯定の言葉を残し、再び何処かへと消えて行った。
その様子を見届けた男はゆっくりと立ち上がる。
そして、部屋の外へと向かうため扉に手をかけた。
男が扉を押し開けると、無数の小さな星と明るく大きな星の輝きが男を出迎えた。
その眩しさに男は少しだけ眼を細めながら部屋の外へと出る。

「ようやく、この退屈な仕事も終わる、か。」

男は軽く首を捻って音を鳴らしながら呟く。そして、少しだけ前に歩くと何かにそっと手を触れた。

「君ならばこの程度、大丈夫だとは思うが・・・・・・。」

男はそれを軽く撫でながらまたぽつりと呟く。その口元は嘲笑【ちょうしょう】の形に歪んでいた。

「努々【ゆめゆめ】、油断してくれるなよ?」

男の手に触れている物、それは何の変哲も無い不恰好な鉄の塊。

「見事打ち倒して、『また過小評価してくれた』と憤慨する姿を私に見せてくれ。ネール=A=ファリス君。」

星明りの下、男は不恰好な鉄の塊の傍らで笑う。
男の低く不気味な笑い声が不自然なまでに静まり返った夜空に何時までも響いていた。

~~~~

「ラスぅ~・・・集落まだぁ~・・・?」

ネスは生欠伸が混じった情けない声をだしてラスに問い掛けた。

「もうそろそろですよ。ですが、小さな集落ですから、ネスさんの期待するようなことがあるかどうかは・・・。」
「そっか、まぁ早く行こうぜ。兎に角、私ヒマで仕方ねぇ~よ・・・。」

ネスはラスの台詞を途中で遮る。
ラスはバックミラーを覗き、後部座席でだらしなく座る彼女を見て何か言いたそうな表情をする。
しかし結局何も言うことはなく、ラスは小さく溜め息を一つついてから運転に集中することにした。
ネスは後部座席からトランクルームに手を回して、何かを取り出そうとする。
しかし予想に反してそこには何も無く、ネスは慌てて身を捩り後部座席からトランクルームを確認する。

「お、おい!タクト!アレは!?」
「アレ?・・・ああ、この前ネスがヤツらのアジトから奪って・・・もとい、頂戴した食い物か?」

ネスは隣でぼーっと外の景色を眺めていたタクトの肩を掴んで訊ねる。
タクトは特に驚く様子も見せず、淡々と答えた。

「そう、それだ!」
「それなら、この前アンタが食ったので最後だったぜ?」

ネスは対狩人【カウンターハンター】での一件を始め、時折来る追手が何れも張り合いの無い雑魚だらけであったことが気に入らなかった。
そして先日、遂にその怒りが爆発し、必要物資の補給も兼ねて追手の一人から聞き出したアジトを襲撃していたのである。
その時、アジトにあった食料を全て頂戴していた。普通の人間ならば1ヶ月ぐらい食い繋げる量はあったはずである。

「な、なんだってー!」
「まっ、ネスにしてはもった方だったな。いつも通り放っていたら1週間もせず無くなってたろうし。」
「くぅぅぅぅぅ~~~・・・っ!!この私が、珍し~くチマチマ喰ってやってたのにぃぃぃ~~・・・っ!」

ネスがヤツらから奪った1ヶ月分の食料は、2週間程度でほぼ全て彼女の胃袋の中に収まっていた。
本当はいつも通り心行くまで食べたかったが、ラスが珍しく殺気立ったプレッシャーを掛けてきたのでネスは我慢していた。
ネスは心底悔しそうに拳を握り、悔し涙を浮かべ歯軋りをしていた。

「ラス!アクセル全開だ!!早く行けぇぇ!!」
「うわっ!む、無理言わないでくださいよ!」

ネスは身を乗り出し、運転席に居るラスの頭を掴んで揺らす。
そのせいで三人の乗るライトカーゴが少しだけ蛇行するが、ラスが慌ててハンドルを握り直し事なきを得た。

「無理なもんかぁ!コイツはもっと速度出るはずだろぉ~!」
「無理ですって!ただでさえ、積載量超過で走っているんですよ!」
「・・・えっ?積載量超過?ラス。どういうことだ?」

二人のやり取りを窓の外を見つめて聞き流していたタクトが、疑問に思ってラスに問い掛けた。
車内は1ヶ月分の食料などを積んでいた頃よりは大分軽くなっているはずである。
自分の居た世界では、この手の車でも人間3人と少しばかりの生活物資程度ならば積載量に十分な余裕がある。
タクトは恐らくこの世界でも似たような性能のはずだと思っていた。

「見た所、別に重い物を積んでないと思うんだが・・・。」
「・・・ネスさんの剣、”ブレイカー”ですよ。」
「えっ?」

タクトはラスの意外な回答に、思わず彼女の傍らに立て掛けてある剣に視線を移した。
彼女の持つ剣は何度も間近で見ているが、今見てもやはり刃の色が特殊なだけの普通の剣である。
大きさや長さはこの世界に来てから何度となく見てきた剣と変わりない。
タクトはとてもではないがこの剣が積載量超過の原因とは思えなかった。

「・・・持ってみれば分かりますよ。」
「えっ!?あ、そ、そうなのか。」

ラスは自分の回答が彼には大凡信じられないだろうと思っていたので、予想通りの反応を示すタクトを促す。
自分が疑っていることが見透かされ、タクトは心臓を鷲掴みされたような気分になり、心の中でひっそりと侘びを入れていた。

「私の剣が原因たぁ~、言ってくれるじゃねぇーかラス!!」
「うわっ!そ、そんなこと言われても事実ですしぃーっ!痛い痛い!止めてください、ネスさん!」

ネスはラスのこめかみを握り拳でグリグリと責め立てていた。

「・・・で、持ってみていいか?」
「さぁ早く全速力を・・・ん?ああ、いいぜ。・・・兎に角、早く行け!私はヒマでハラ減ってて、不機嫌なんだ!」

タクトは自分の申し出を今はそれ所ではないと言わんばかりにあっさり承諾するネスに驚いていた。
この剣はネスの大事な商売道具であり、命より大切な物と言っても差し支えない代物のはずである。
アニメとか漫画とかではこういう場合、大概『おいそれと他人に触れさせる物ではない!』という感じに断られる物だ。
タクトは自分の思い描いていた剣士像と違う反応を示したネスに、少し落胆しながら彼女の剣に手を掛けた。

(・・・ん?あれ?う、動かねぇ?)

見た目はやはり刃の色が違うだけの普通の剣である。
自分がこの世界で手に入れた剣と殆ど差異は無い。
それなのに、彼女の剣はいつも自分が剣を持つ時に入れる力ではビクともしなかった。
タクトは両手でしっかりと柄を握って思い切り引っ張ってみることにした。

「せーの・・・よいしょぉーーっ!!・・・っと、うわぁぁっ!?」
「・・・タクトさん!?大丈夫ですか!?」

タクトは彼女の剣をなんとか垂直に立てた所でバランスを崩し、彼女の剣の下敷きになってしまい動けなくなってしまった。
ネスはその様子を見てケラケラと楽しそうに笑う。

「な、何だよコレ!こんなん片手で持ち歩けるかよ!両手でもキツイじゃねーか!」
「アハハハハ!タクトぉ~、なっとらんぞ~?まったく最近の若いもんは、根性がなくていかんなぁ~。」
「何でもいいから、助けてくれぇ!潰れるぅ!」

ネスは片手で剣をひょいと拾い上げると元あった通りに立て掛ける。
タクトは窓を降ろし、九死に一生を得たかのような表情で外気を吸い込んだ。

(彼女、あんなクソ重い物を片手で振り回してたのかよ・・・。ホント、化物だ・・・。)

~~~~

陽も地平線の彼方へと落ち始めた頃、タクト達は集落へと辿り着いていた。

「ラス、早く行こーぜ。私、ハラ減ったぞー・・・。」
「では、少しの間留守をお願いしますね。タクトさん。」
「おう、任せとけ。」

存在可能時間の限界が近いため入口付近の路肩に一旦駐車し、ネスとラスは今日の宿を探して集落内を散策することにした。
小さな集落であるためこの時間帯に早々人が通るとは思えないが、一応悪戯等を防止するためタクトが車内に残ることになった。
タクトは助手席からフロントガラス越しに二人を見送った。
少しでも早く食事にありつきたいのか、血のような色合いのアンダーテイルを風に棚引かせネスは走りだす。
ラスは手を引かれ前のめりになりながら彼女に続いた。

―その様子を物陰から見る者が数人。

「・・・来たぞ。血のような赤い髪、顔の傷、間違いない。」
「結構、美しい女性【ひと】だが集落のためだ。仕方ない・・・。」
「しかし、どうする?無理矢理捕まえるのは何だか怖いし・・・。」
「・・・あの、皆さん。」

ひそひそと彼女を捕まえる算段を考える男性達の後ろから少女の声がした。
突然話しかけられ驚いた彼らは一斉に少女の方へ振り向く。
そして、安堵の溜め息を漏らしつつ少女に話しかけた。

「何だ、ミリアリアじゃないか・・・。脅かすんじゃない。」
「あ、ごめんなさい・・・。」
「で、何の用だ?」
「・・・あの、やっぱり止めませんか?」

ミリアリアと呼ばれた少女の一言に、再び彼らは驚いた表情で彼女を見る。
ミリアリアは全員の視線を受けて少しだけたじろいだが言葉を続けた。

「彼女には何の罪も無いですし・・・。いくら集落のためだからってそんな人を巻き込むのは・・・。」
「じゃあ、どうしろと?」
「私達だけで、何とかしましょうよ・・・。」
「・・・ミリアリア。キミも見ただろ?」

彼らの内の一人が呆れた表情でミリアリアを諭した。
ミリアリアは彼の言葉に促されその時の光景を思い出す。

――今朝方、集落の長に呼び集められた彼女らの前に一人の怪しげな男が現れた。
黒いローブを身に纏った彼は、現れるなり傍に居た長にハンドガンを突きつける。
そして彼はどよめく民衆を一瞥【いちべつ】すると、薄ら笑いを浮かべながら長の片足を撃ち抜き一言告げる。

「・・・君達、死にたくなければ協力してもらおうか。」

フードを深く被ってるせいで顔はよく分からないが、赤く鋭い瞳はその男の持つ狂気を伝えるに十分な輝きを放っていた。
その凍り付くような狂気に討たれ、ある者はその場にへたり込み、ある者は恐怖に身体を戦慄かせて【わななかせて】いた。
男はそれを軽く嘲る【あざける】と、言葉を続ける。

「なに、簡単なことだ。今日、恐らくは陽が落ちる前にある一団が此処に来るはずだ。」

民衆は固唾を呑んで男の言葉を聞く。

「その一団から赤い髪をした顔に大きな傷のある女性を、この先の競技場址まで生きたまま連れて来い。期日は翌朝までだ。」

どんな非情な要求がされるかと身構えていた民衆は、男の意外にも規模の小さい要求に思わずざわめく。
男はゆっくりとハンドガンを天に突き出し咆哮させた。
そして、ざわめきが治まるのを待ってから男は最後に一言告げる。

「もし、連れて来れなかったり投げ出そうとしたら・・この集落が地図から消えると思っておくことだ。では、失礼する。」

・・・ミリアリアの脳裏にあの男の赤く鋭い眼が過ぎり、あの時感じた圧倒的恐怖が再び押し寄せる。
ミリアリアは身体が震え出し、立っているのが辛くなりその場にしゃがみ込んでしまった。

「あんな眼ができる男だ。本当にやりかねない・・・。」
「でも・・・皆で協力すれば・・・。」
「ミリアリアも知ってるはずだ。長だって元は治安部隊に居た勇敢な戦士だったんだぞ。その彼が従うしか無かったんだ・・・。」

その時である。件の彼女が一際大きな声で話し始めた。

『あーあ、ハラ減ったー!どっか安く泊めてくれて旨い飯を喰わせてくれる宿ねぇかなー!』

その言葉で彼らの内一人が何かを閃き、肩を抱いて震えているミリーに話しかける。

「ミリアリア、お前はこれから彼女達を私の宿に連れてくるんだ。」
「・・・えっ?何を・・・するつもりですか?」
「なに、手荒な真似はしない。兎に角、連れてくるんだ。いいね?」
「・・・分かり・・・ました。マスター。」

ミリアリアは店の主人の真剣な表情に気圧されて渋々承知した。