14スレ目の74(ななよん)の妄想集@ウィキ

誓いの輝石~Avenge~ > #06 > パートB


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「・・・で、迷ったワケだが。」

俺は今更後悔しても遅いのは分かっているが、後悔せずには居られなかった。
確かに傾斜はそれほど急ではないし、時折孔明の罠のようなタイミングで出現する崖も突破してきた。

(もういい加減、あの一本道に出てもいいと思うんだがなぁ・・・。)

あれからもう2時間ぐらいは歩いた気がする。
それでも当初目指していた一本道が見えないとは、何処かで進む方角を間違えたのかもしれない。
とはいえ、何処を見ても視界は悪く景色が殆ど同じな現状では確認のしようがない。

(・・・とりあえず、闇雲に動き回っても余計深みに嵌るだけだろうし一旦休むか。)

俺はふと残り存在可能時間が気になってしまい、何となくの理由をつけて手頃な切り株に座り込む。
そして、ラスに渡された”存在可能時間延長用”の輝石を取り出した。
彼の話では、このカラフルな輝石達は其々対応した召喚物があり、その召喚物の存在可能時間の延長に使うための物らしい。
しかし実は、対応していない召喚物に用いてもどの程度延長されるかが分からないだけで、効果自体はあるそうだ。

(この話は一般的にはあまり知られていないとか言ってたが・・・広く知られたらマズそうだな・・・。)

ようは、『~~用』と銘打っているだけで中身は同じなのだ。
中身が同じなのに名前が違うだけで値段まで変えられていたなんてことが広く知れ渡れば、協会の信用は地に堕ちるだろう。
実質的にジ・パンドを統治している協会の失墜は、世界の混乱をも招きかねない。
俺は世界情勢とかそう言うのはあまり詳しくないが、なんとなくそんな気がした。
とりあえず、注意深く周りを見回してから輝石に意識を傾ける。
俺の手にあった輝石は少しの間淡い光を発したかと思うと、溶ける様に消えてしまった。

(うーん・・・何だか効果があるような・・・ないような・・・っ!?)

その時、茂みの向こう側で何かが蠢いた。
草木の揺れ方から、風の悪戯というワケではなさそうだ。

(やばい!?見られたか!?)

普通に考えればこんな所で人に出会うはずがないのに、俺が最初に心配したのは人にこの瞬間を見られていないかだった。
俺の正体を知らない人間には、『男の掌にあった輝石が突然光って掌へと吸い込まれた』と映るだろう。
そんな手品のような光景を、こんな森の中で目撃して動揺しない人間はそうはいまい。
反射的に身動いで【みじろいで】しまっても不思議ではないだろう。
俺は茂みの向こう側を調べるため、慎重に近づいた。

「・・・って、なんだよ。ウサギか。」

茂みを掻き分けて覗き込んだ先には一匹の野ウサギがいた。
野ウサギは何故か逃げる素振りを見せず、此方をじっと見つめてきている。

(あっ・・・なんか、可愛い。)

思えばこの世界に来てからこうして心が和む出来事に出くわした記憶がない。
トラブルメーカーな彼女と、それに振り回される彼のおかげで毎日が騒々しかった。
俺はこの世界に来て初めて味わう安息の一時を、目の前の愛くるしい野ウサギと分かち合っていた。
しかし、突然野ウサギと俺の二人だけの世界に土足で踏み込む者が現れる。

「死にたくなきゃ伏せるんだっ!!」
「――えっ?うわぁっ!?」

言われるがままに伏せたその直後、風を切る音と鈍い音が頭上で鳴る。
俺はゆっくりと顔を上げ、何が起こったのかを確認してみた。

「ウ、ウサギちゃん!!」

俺が顔を上げるのと殆ど同時に、目の前にあの野ウサギが落ちてきた。
野ウサギの小さな頭には深々と矢が刺さっていて、愛くるしさの欠片も残されていない。
俺はこんな仕打ちをしたあの声の主に怒りがこみ上げてきて、素早く起き上がり振り向いた。

「ふぅ~、危なかったなあんた♪」
「危なかっただと!?お前!なんてことを!!」

声の主はあまり手入れのされていないボサボサの金髪と金色の瞳が特徴の少年だった。
背丈や雰囲気から見て、俺よりも年下だろう。
その右手には弓が握られており、彼があの野ウサギを見るも無残な姿に変えた犯人であることはまず間違いないだろう。
彼はあんな仕打ちをしたことを悪びれる様子もなく、俺の傍へと駆け寄ってきた。

「って、なんだよ、助けてやったのに何で怒ってんだ、あんた・・・?」
「何でって、あんな可愛い小動物をいきなり射るヤツがあるかよ!」
「はぁっ!?アレが可愛いって・・・あんた、何言ってんだ?」

俺は当たり前のことを言ったはずである。
それなのに、彼は俺の言動がさぞ意外であったらしく口をポカンと開けて目を丸くしていた。
彼の反応を見て俺は、此処が俺の居た世界の常識が必ずしも通じる世界ではないことを思い出した。
このまま怒りに任せて反論したら、俺が別の世界から来た人間であるかもしれないことがバレてしまうかもしれない。
俺はとりあえず、今まで気が動転していたことにした。

「えっ!?・・・・・・あっ・・・すまん、ちょっと動転してた・・・。」
(やっべぇ~。俺、演技力ねぇから、返って不自然かも・・・。)
「・・・そっか♪なるほど納得♪まっ、無事でなによりってネッ♪」
「お、おう。・・・ありがとな♪」
(よ、良かったぁ~・・・!!)

どうやら彼は俺の演技に何ら疑問を持たなかったらしい。
俺は心の中でホッと胸を撫で下ろした。

「・・・俺はカインっていうんだ。あんたは?」
「俺、タクト。よろしくな。」
「でさ、タクト・・・。」
「ん?何?」
(いきなり呼び捨てっすか・・・。)

俺は17年間生きてきて、年下のヤツに名乗った後の第一声で呼び捨てにされたのは初めてだ。

「あんた、此処で何やってたの?」
「えっ。えっと・・・だな・・・。」

まさか、道に迷ったなんて流石に恥ずかしくて言えない。俺はなんとか誤魔化す手立てを考え始めた。
しかしその思案が彼にとって、俺の考えを察知する糸口になってしまったらしい。

「・・・はっは~ん、さては道に迷ったんだな~?」
「ぎくぅ!」
「大方この辺りに森林浴とか何とか言って旅行に来た帰りに、カーゴが限界迎えたとかで。」
「ぎくぎくぅ!」
「で、歩いて帰ろうとしていた途中で近道とか考えて入ったはいいが、方角が分からなくなったってトコだろぉ~?」
「・・・8割方、正解です。」

この辺りに来た目的以外はずばり言い当てられている。8割どころか九分九厘正解だ。
俺は肩を落として大きく溜め息をついた。
彼は何処か勝ち誇った笑みを浮かべ、俺の肩を叩きながら話しかけてくる。

「まっ!そーいうことなら任しとけ!俺が近くの集落まで連れてってやるよ♪丁度、俺も行く所だし。」
「・・・そうしてくれると助かる。」

何も言い返せない俺は大人しくカインの後についていくことにした。
道中、カインは自分のことを話しだした。
それによれば、彼はこの辺りの森でほぼ自給自足生活を営んでいて、森で集めた資材や食材を近くの集落で他の生活物資と交換しているらしい。
そして、この辺りは知る人ぞ知る森林浴の穴場スポットであり、時折こうして森に迷い込む者も居るらしい。
彼はそんな者を見つけては、近くの集落まで送る役目もこなしているそうだ。

(正直、興味ないんだが・・・ま、一応命の恩人っぽいし付き合ってやるか・・・。)

俺をまるで旧知の仲のように呼び捨てにする辺りからも、彼が人付き合いが好きな性格であることが窺い知れる。
彼にとって俺は久しぶりの話し相手なのだろう。本当に楽しそうに喋っている。
俺は彼の語る様々なエピソードに全く興味が無かったが、テキトーに相槌を打つことにした。

(てか、そんなに人恋しいなら集落で暮らせばいいのにな・・・。)

俺は彼が何故森の中で暮らしているのか疑問に思ったが、長くなりそうなので聞かないでおくことにした。

「――っと、着いた着いた♪」
「だな。助かったぜ、カイン。」
「別にいいってことよ♪こんぐらい朝飯前だしな。」

俺がカインの案内で集落に着いた頃、辺りは夕暮れで真っ赤に染まっていた。
元々あまり人気の無い集落なのだろう。
外に出歩く人影は殆どなく点在している民家は夕食の仕度に追われていた。
俺はカインが今日の食材を交換しに行くという店までついて行った。
カインが主人と交渉している間、俺は店のテーブル席でぼーっとしていた。
すると、俺の耳に聞き覚えのある一組の男女の話し声が聞こえてきた。

「なぁ~、もうやめようぜ~?」
「いいえ、そういうワケにはいきませんよ。」
「おいちゃんもタダでいいって言ってくれてたんだしよぉ~。」
「アレは元々、貴女が蒔いた種ですよ。彼はそれを知らないだけです。」

どんどん此方に近づいてくるソレは、半日ほど前に離れ離れになってしまった、忘れたくても忘れられない声。

「・・・ネス!ラス!」
「タ、タクトさん!どうして此処に?!」
「おっ!タクトじゃねーか、よく此処が分かったな♪」

俺が店の扉を開けて外に出てみると、店の名前が入った木箱を3段ほど山積みにして歩くラスと、その数倍の量を片手で運ぶネスの姿があった。
俺を見つけてまるで生き返った故人を見るような目で驚くラスと、いつも通りのノリで手を上げるネスだった。

「――すみません!すみません!本当にすみません!」
「だから、もういいって。・・・でさ、何やってんの?」
「えっ!えっと、そのですね・・・・・・・・・。」

~~~~

「ネスさん!起きてください!ネスさーん!!」
「・・・・・・ふわぁ~・・・お、ラス。元気そうだな。」

ネスは大きく伸びをして寝惚け眼を擦りながら、隣で走っているラスに手を上げる。

「『元気そうだな。』じゃあありませんよ!と、兎に角後部座席の窓開けてください!ドアについてるスイッチです!」
「ん?ああ、これか?」

ネスはラスに言われるがまま、ドアノブの隣についていたスイッチを押す。
後部座席の窓が仕舞われてできた隙間にラスはすかさず手を突っ込み、リアバンパーへ足を引っ掛け乗り上げた。

「おっ♪流石私の相棒、やるじゃん♪」
「いいから早くブレーキを踏んでください!!」
「分かったよ。えいっ!」

ネスは思いっきりペダルを踏んだ。
しかし、ライトカーゴは更に速度を増していく。

「ネスさん!それアクセルです!」
「あっ、わりぃ。間違えた!」
「と言うか、何で加速するんですか!?さては、シフトレバーを弄りましたね!?」
「ん?ああ、暇だったからテキトーに弄ってたが・・・まずかったか?」
「・・・兎に角!ブレーキを踏んでください!!」

ネスは隣のペダルに足を移して再び思い切り踏んだ。

「・・・あ、あれ?ラス。止まらないぞ?」
「な、なんですってー!本当にブレーキ踏んでますか!?」
「おう!ちゃんと踏んで・・・あ、床抜けてらぁ。」
「そ、そんな!!・・・ネスさん!前!前ぇ!!」
「おぉーっと!?」

二人の乗ったライトカーゴの前に山肌が迫る。
ラスの必死の叫びに合わせネスが素早くハンドルを切り、二人は間一髪衝突を間逃れた。

「ふぃ~!あぶねぇあぶねぇ~!」
「と、兎に角、僕が代わります!」
「まぁまぁ、兎に角とめりゃぁいいんだろ?任せとけって♪」
「ネスさん!?何を!?」

ネスは運転席のドアを開けると素早く天井に上った。
そして、天井を蹴ってライトカーゴの前へと躍り出る。

「ラス!降りろ!」
「ええっ!?」

ネスの言うとおりにラスは飛び降りる。
そして・・・。

「いよっ!・・・どっせぇぇぇぇぇぇい!!」
「・・・ラ、ライトカーゴがぁぁぁーーっ!!」

ネスは突っ込んでくるライトカーゴへ走りよると、フロントバンパーを掴み勢いに任せて空高く放り投げた。
あまりに衝撃的な出来事に、ラスはその場に力なくへたり込んでしまう。

「なんてことを・・・・・・してくれたんですか・・・・・・。」
「・・・・・・あっ。わりぃ。つい、な。」

ネスはばつの悪そうな顔で頭を掻きつつ、ラスの元に近寄る。

「あれでは、僕やタクトさんが必死に押してきた意味が・・・。」
「だ、だからわりぃって!・・・ってか、タクトは?」
「この坂を上りきった所に待たせてあります。・・・って、話を逸らさないでくださいよ!」
「あっ!」
「・・・今度は何です?」

突然何かを思い出したかのように手を叩くネスに、ラスが呆れた表情で問い掛ける。

「あのカーゴが飛んでった先にさ、集落あった気がするんだが・・・。」
「・・・・・・・・・ネスさん!!」
「ほいきた!」

ネスはラスの首根っこを掴んで、ライトカーゴが飛んで行った方へと走り出した。

「って、どうして僕まで!?」
「いいからいいから!」

~~~~

――此処はそこら中に自然美が溢れていた。
この辺りには本来ならばそれを目当てに多くの観光客が訪れていたのだが、何故か急にはたりと途絶えてしまった。
そのあまりに突然の出来事に集落全体が震撼し、ここ数日は原因究明に躍起になっていた。

「・・・はぁ~。今日も観光客は無しかぁ~。」

観光客が途絶えたことも確かに大問題だが、彼の店では別の大きな問題が発生していた。
彼の店は観光客に対してこの辺りの自然食材を使った料理を振舞う小さな飯屋であったが、観光客が途絶えたことによりかなりの量の食材が余ってしまった。
取り扱う食材が新鮮さがとても重要な食材であることや、店自体が小さいこと等の理由で長期保存が難しいのだ。
このままでは大量の食材がその本分を果たすことができなくなってしまう。
数少ない得意先への出前の帰り、本来なら観光客でそれなりの賑わいのある通りで彼は深い溜め息をつき何気なく空を見上げていた。
その時である。彼は上空に本来存在するはずのない物を見つけてしまう。

「ラ、ライトカーゴが飛んでる?いったい、世ン中どーなって・・・って、こっちに落ちてくる!?」
「・・・ラス!アイツ頼んだ!!」
「任せてくださ・・・うわぁっ!!」
「な、何だ!?うわっ!!」

彼はネスによって投げられたラスと衝突し、尻餅をついてしまう。
そして、彼が何が起こったのかと目を開けて確かめようとした瞬間。

「ぃよいっしょぉぉ!・・・ふぅ~。」
「うわぁっ!?お、落ちてきたライトカーゴを受け止めた!?ネェちゃん、あんたは・・・」
「いたたた・・・だ、大丈夫ですか?」
「お、おお・・・。何だか知らんが・・・ニィちゃん達に助けられたみたいだな・・・。」

彼と衝突して同じく尻餅をついていたラスに、彼は戸惑いながらも立ち上がって手を差し伸べる。
ラスは一度は躊躇うものの、彼の好意を無碍に扱うのも忍びないと感じ手を取った。

「おう、アンタ。無事みたいだな。」
「ん、ああ。おかげでな。」
「では、僕達はこれで・・・ネスさん、タクトさんを迎えに・・・・・・。」

ラスの言葉を途中で遮って重低音が辺り一帯を包み込む。
その音量の割りに情けない音に、彼は笑いを抑えることができなかった。

「なんだニィちゃん、ハラ減ってんのか?」
「い、いえ!そ、そういうワケでは・・・」

彼の指摘に、ラスは身を小さくしてしまう。
その顔は恥ずかしさで真っ赤に染まっていた。

「おう。実は私ら、ここ数日ロクなモン食ってねぇーんだよ。」
「ネ、ネスさん!!」
「そうか。それなら丁度いい、俺ンとこ来いよ。助けてもらった礼も兼ねてハラいっぱい食わせてやるよ。」
「い、いえけっこ・・・」
「おおー!話分かるじゃん!ラス、行くぞ♪」
「ちょっと!ネスさん!ネスさんってばーっ!!」

~~~~

「・・・で、結局ご馳走になったからこうして働いてたと?」
「はい・・・。元はと言えば彼女の蒔いた種ですし。・・・本当にすみません、タクトさん。」
「いいって、こーして再会できたしさ。」

ラスはとても申し訳なさそうに深く頭を下げる。
特に怒るつもりのないタクトはラスの顔を上げさせた。

「じゃあ、またよろしくおやっさん!・・・おっ、タクト。そのお二人さんと知り合いかい?」
「おう。旅の仲間だ。途中ではぐれちまってさ。」

タクトがラスと話していると、店の主人との物々交換を終えたカインが外へと出てきた。
カインの問い掛けにタクトは彼の方に振り返りつつ答える。

「ん?タクト。アンタの知り合いか?」
「ああ、カインだ。俺を此処まで連れてきてくれたヤツさ。」
「そうですか・・・。カインさん、ありがとうございます。」
「ありがとなっ♪助かったぜ♪」
「いやぁ~いいってコトよ♪」

カインは少しだけ恥ずかしそうに頭を掻きながら笑顔で親指をビシっと立てる。
そして、頭を下げるラスにすっと近寄って小突いた。
ラスは顔を上げて何事かとカインに尋ねる。

「なぁなぁ、ニイちゃんってあのネエちゃんの恋人?」
「な、なな、なななナニ言ってんですかぁ!?ぼぼ、僕は仕事上の相棒ですよ!」
「へぇ~~、ホントぉ~~?」
「ホントですってば!!ねぇ、ネスさん!」

疑いの眼差しで見つめてくるカインを何とか納得させるため、ラスはネスに助けを求めた。

「ん?ラス、なんかようか?」
「僕は、貴女の相棒ですよね!?」
「なに言ってんだよ。当たり前じゃねーか。」
「ほぉ~・・・まっ!そうだよなぁ~。ニイちゃんとあのカックイーネエちゃんじゃ釣り合わねぇもんな♪」
「そ、そうですよ。カインさん。あははは・・・。」
(ええ、そうです・・・分かっています。僕は”相棒”であって、”想い人”ではありません。彼女の心には今も・・・。)

彼女の胸中にある存在のことはある程度は知っている。
彼女にとって、それは取り替えの利かない物であることも分かっている。
だから、自分の感情を押し殺して彼女に”相棒”として付き合うことにした。
それを決めたのは他ならぬ自分だ。
しっかりと割り切っているつもりなのに、いざこうして”相棒”と肯定されると何故か歯がゆい。
カインの追及を間逃れホッと胸を撫で下ろすラスは、同時に人知れず強く拳を握っていた。

「・・・じゃ、俺はこれで。タクト、今日は色々と話せて楽しかったぜ♪」
「おう。こっちこそありがとな♪」
「あっ、カインさん。何かお礼を・・・。」
「いいってことよ♪あんなカックイーネエちゃんから感謝されただけで十分さっ♪」

すっかり陽も落ちて辺りが暗くなった頃、タクト達はカインと別れた。
元気に手を振って夜の闇へと溶け込んでいく少年に、三人は手を振って見送っていた。
その翌日、集落には途絶えていた観光客が少しずつではあるが戻ってきていた。
どうやら、先日ネス達が解決した対狩人【カウンターハンター】の一件が一枚咬んでいたらしい。
タクト達は世話になった店の主人に別れを告げると、賑わいを取り戻していく集落の様子に気が大きくなるのを感じながら、一路都を目指してライトカーゴを走らせた。

~つづく~