14スレ目の74(ななよん)の妄想集@ウィキ

誓いの輝石~Avenge~ > #04 > パートA


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「・・・うーん・・・?」

タクトはゆっくりと目を開けた。
一瞬、天国に着いたのかと思ったがどうやらそうではないらしい。
どうやら、それなりに弾力性のある背もたれ付きのイスに腰をかけているようだ。
タクトの目には心配そうな顔でタクトの顔を覗き込んでいるラスの姿が映っていた。

「あ、タクトさん!気がついたんですね!」
「あ・・・あれ?俺は・・・あの時刺されたはずだが・・・?」

タクトはまだ少し重たい頭を働かせ記憶を辿りながら話した。
そして、恐る恐るあの男に刺された辺りを手で探ってみる。しかし、何故か傷跡一つ感じられなかった。
夢だったのかとも思ったが、学生服はちゃんと刺された辺りに穴が開いており周囲が赤く染まっている。

「ええ。確かに、刺されました。」
「だよな・・・じゃあ、何で傷口が消えてるんだ?」
「前に話した通り、それが輝石によって召喚された物の持つ特性だからですよ。」

タクトは少し前にラスに聞いた輝石についてのことを一通り思い出してみる。
そして、ようやく自分に起きた出来事を理解した。

「・・・なるほど。そう言えば、そんなことも言ってたっけな・・・。」

輝石によって呼び出された物は、何らかの外部衝撃を受けると存在可能時間を削りそれを中和しようとする。
その結果、存在可能時間が限界を迎えなければ何事もなかったかのように元通りになると聞いていた。

(何だよ・・・。俺の超回復力が目覚めたんだ!って展開になったっていいじゃねぇか・・・。)

輝石の特性によって命が助かったというのに、それが自身の特殊能力というワケではないことを知ってタクトは落ち込んでいた。
タクトの溜め息を、命拾いした安堵感から出た物だと勘違いしたラスは嬉しそうに笑顔を見せた。

「それで・・・こんなことを聞くのもなんですが・・・。」

ラスは突然申し訳なさそうな顔をしてタクトに小声で話しかけた。

「ん?何だよ?」
「その・・あの時、元の世界に帰れそうでしたか?」

タクトは気を失う前の感覚を少しだけ思い出してみる。
咄嗟にラスを突き飛ばし立ち止まったのと、あの男の短剣が腹に突き刺されたのは殆ど同時だった。
先ずは極寒地帯に裸一貫で放り出されたかのような寒気と、目が回りそうなぐらい激しい嘔吐感に襲われた。
それにより意識の大半を削り取られ朦朧【もうろう】としていた所、あの男が短剣を引き抜いた。
すると今度は、引き抜かれた辺りから全身を丸焼きにしてもなお余りあるであろう高熱を感じ、そこで意識が途切れた。

「・・・いや。」

正直、あのまま元の世界に戻れたかどうかは分からない。
だがしかし、今思い返しただけでも背筋が凍り付きそうになる。できればもう二度と思い出したくない。
仮にあのまま元の世界へ戻れるのだとしても、あんな思いをしてまで戻りたくない。
タクトは戻れそうになかったことにした。

「そうですか・・・。分かりました。」
「・・・何で『良かった』って顔をしてんだ?」
「ええ、これで彼女が貴方を刺したりするのを防げそうなので・・・。」
「・・・なるほど。」

確かに彼女ならば、戻れるかもしれないだろうと軽い気持ちで剣を突き立ててきたりしそうである。
今のうちに戻れそうになかったことにしておけば、流石の彼女もそんな無茶なことはしてこないだろう。

「・・・で、その噂の彼女は?」
「後ろの席で熟睡中ですよ。」

ラスに促されタクトは身を捩って後ろの席を見てみる。
そこには自分が今座っているイスと同じイスに横たわって、静かに寝息を立てている彼女の姿があった。
彼女の寝顔は、とても先程まで散々人を振り回しあらゆる物を破壊し暴れ回っていた人物とは思えない。
右目の刀傷やその他の細かい傷跡に目を瞑れば、絶世の美女が静かに寝ているようにしか見えない。
タクトは思わず唾を飲んでいた。

「・・・そういや、此処は何処だ?何だか動いている感じもするんだが。」
「ラインズカーゴ・・・、近隣の町を定期的に往復している『くるま』の中です。」
「なるほど・・・。」
(バスみたいなもんか・・・。)

どうやら自分が気を失っている間に、ラスの余り使いたくない当てを訪ねる為に移動を開始していたらしい。
治安部隊の接近により結局あの男との決着は付かず仕舞いであることもタクトは聞かされた。

(いずれまた、あんな怖ぇ男と遭うかもしれんと思うと・・・気が重いぜ。)

タクトは思い切り肩を落としていた。
ほぼ同時に、ラスが隣で同様に肩を落とす。
恐らくは自分とは別の理由で、それも多分あの理由で肩を落としているのだろうと思ったタクトはラスに尋ねる。

「・・・なぁ、そんなにイヤなのか?」
「いえ!そんなことは・・・。」
「・・・イヤなんだな?」
「・・・すみません。」

とても申し訳なさそうに謝るラスに、タクトは軽く溜め息をついてからその理由を尋ねてみた。

「で、そんなにイヤがる当てっていったい何なんだ?」
「・・・僕の、”先生”なんです。」

ラスの”先生”、それなら確かに良い当てだと思える。
彼ほどの男が”先生”と呼ぶほどの人物だ、タクトは彼女が頼るのも分かる気がしていた。

「”先生”?・・・怖いのか?」
「いえ!とても優しくて良い人ですよ!ただ・・」
「ただ・・・何だよ?・・・おーい・・・。」
(・・・ま、いっか。)

ラスはその先を口にしたくないと言わんばかりに俯き【うつむき】黙ってしまった。
タクトは実際に会ってみれば分かると思い、無理に聞き出そうとはしなかった。
それから暫くは特に会話をすることも無く、窓の外では陽が地平線の彼方へとその姿を落とそうとしていた。
赤く柔らかな光が、見渡す限りの草原を染めあげる。
時折すれ違う車のヘッドライトにタクトは目を細めていた。

(なんつーか、異世界というか田舎町の光景だな・・・。)

タクトは隣から時々聞こえる溜め息と後ろから聞こえる微かな寝息、室内に低く反響する走行音をBGMに元の世界を思い出していた。

(今頃、俺の居た世界はどうなってんだろうな。)

何時ものように親父と口論をして飛び出してきたこと。
学校に行く気になれずファミレスで時間を潰していたこと。
そしたら事故に巻き込まれ、気付けばこんな世界に居たこと。
タクトの頭の中で今日一日の流れが回想された。

(もしあのまま俺は死んだことになってたら、ユウトのヤツ悲しんでるだろうか?それとも・・・)
「俺、元の世界へ帰りたいような帰りたくないような・・・。」

気が付けばタクトは独り言を呟いていた。
ラスが気付いて何事かと言った顔をして振り向くが、タクトが軽く手を振って特に用事が無いことを示すと何も言わず再び俯いた。

~~~~

大きな陽がその姿の大半を地平線の彼方へと隠した頃、タクト達一行は目的の町に着いていた。
辺りは薄暗くなり、通りに面した店や民家の灯りに混じって街灯が柔らかい光を放っていた。
街灯の光源は微かに揺れていることから、透明のカバーの中では火が燈っていることが分かる。
それなりに大きな町のようで、色々な服装をした人々が不思議そうに周りを見回すタクトを気にすることも無く行き交っていた。

「さて!早いトコ行こうぜ!私、腹減ってるしねみぃんだ。」
「いえ、流石にもう陽が落ちますし、此処は一旦宿に泊まってからでもいいと思いますが・・・。」
「何言ってんだよ、タダで飯と寝床が確保できんだぜ?泊まる必要ねぇだろ。」

ネスはまだ踏ん切りのつかない様子のラスを笑顔で急かす。
タクトはその様子を申し訳ない気持ちで見守っていた。

「それによ、あちらさんは私達が来るのを待っていたようだぜ?」
「・・・えっ?」

タクトがネスの視線の先を目で追ってみると、紫色の髪をしてショッキングピンクの煌びやか【きらびやか】なタイトドレスに身を包んだ人物が此方に走ってくるのが見えた。
笑顔で手を振りながら走ってくる人物はやたら厳つい体型で、女物の服装を身に着けているがネスとは別の意味で女性には見えない。
ふとラスに視線を移してみると、その人物を見つめたまま顔面蒼白で凍り付いていた。
タクトは彼の反応から此方に走り寄ってくる人物が恐らく彼の言っていた”先生”なのだろうと考えた。

「・・・せ、先生・・・お久しぶりで・・・うわぁっ!?」
「ラァァスちゃぁあああん!vvvv逢いたかったわぁぁん!!vvvvv」

ラスの挨拶を遮って彼に飛びついた人物は、見た目通りの図太さを持った猫なで声を出して頬擦りをしていた。

「もぉ!vvv来るなら来るって連絡してくれれば迎えに行ったのにぃん!vvv」
「ちょ!・・・ちょっと!・・・やめてください、先生!・・・皆が見てますから・・・!」
「いいじゃなぁ~い!vvv私とラスちゃんのラヴを見せ付けてやりましょうよぉ~ん!vvvv」
「は、恥ずかしいですよ!先生!」
「だからぁん、『せんせい』じゃなくて『マッチ』って呼んでっていってるじゃなぁ~い!もぉ!vvvv」
「先生は先生ですし・・・って、ちょっと!苦しい!苦しいですってば、せんせぇ!ひぎぃぃ!」

タクトは二人のやり取りをただただ呆然と突っ立って見ているしかできなかった。

(な、なるほど・・・これは確かに・・・会いたくない。)

ラスの助けを求める視線に気付いたタクトは咄嗟に視線を逸らして顔を俯かせていた。

(す、すまん!ラス!俺には・・・どうすることもできねぇ!)

タクトはきつく目を閉じながらラスの断末魔の叫びを全身の血が抜かれるような思いで聞いていた。

「よっ!相変わらずだなマッチ!」
「あらっ、ネスちゃんじゃない!貴女も相変わらず、生傷の絶えないコねぇ~。」
「んっ、まぁな!」
「もぅ、勿体無いわよぉ?貴女、結構美人さんなんだしぃ~。」
「そっかぁ?」

ネスは真っ白になってぐったりとしているラスに構うこともなく、親しげに件の人物と笑いあう。
ネスと笑いあっていたその人物は呆然としていたタクトの姿を見つけネスに問い掛けた。

「で、そこでポカーンとしている彼は?」
「ん?ああ、タクトってんだ。」
「・・・あ、芹沢タクトだ。よろしく。」
「ふ~ん・・・。可愛いコね♪ラスちゃんには負けるけど!vv」
「そ、そうか・・・。」
(よかった!何か負けたけどすっげぇ嬉しい!)

タクトは背中に嫌な汗がだらだら垂れてるのを感じながらも愛想笑いをしてみせた。

「私、マックス=W=ダイニングよ。マッチって呼んでねっ♪」
「あ・・・ああ。早速なんだが・・・マッチ。」
「ん?なーに?タクトちゃん。」
「タ・・・タクト『ちゃん』って・・・。・・・あのさ、そのラスが・・・。」

タクトはたじたじになりながらも、ゆっくりとラスを指差す。
ラスはまるで魂の抜けた人形のように真っ白になっていた。

「きゃああああああ!ラスちゃん!しっかりしてぇぇ!!」

マックスと名乗った人物はその様子を見た途端、泣きながら彼を物凄い早さで揺すっていた。
その隙にタクトはこっそりとネスに尋ねる。

「あのさ、ネス。マッチって・・・」
「ん?男だぞ。女っぽく見えるけどな。」
「つーか、男にしか見えません・・・。」

タクトは激しく揺さぶられているラスに向かって十字を切っていた。
ネスはその様子を他人事のように笑って見ていた。