14スレ目の74(ななよん)の妄想集@ウィキ

誓いの輝石~Avenge~ > #03 > パートC


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「・・・何というか、派手にやったみたいだな。」
「そうですね・・・。」

タクトとラスは目の前に広がる惨状【さんじょう】に開いた口が塞がらなかった。
たった10分でまるで局地的な天変地異が起こった後のような光景が、それもたった一人の人物の手によって作られたのだ。
タクトは背筋が凍るような思いに駆られていた。
あの後、タクトはラスから彼女が化物人間【ヒューマノイドモンスター】と呼ばれる屈強な戦士であることは聞いていた。
しかし、これほどまでに凄い物であるとは思っていなかった。

(一緒に居ることにして・・・よかったぜ・・・。)

更に、タクトは自分を呼び出した輝石についても聞いていた。
輝石によって呼び出された物には”存在可能時間”と呼ばれる制限時間があって、その時間が過ぎると消滅してしまうこと。
存在可能時間を過ぎて消滅した後の行方は誰にも分かっていないこと。
生物、それも人間が輝石によって呼び出されたのは彼の知る限りジ・パンド初のことであること。
それ故に、自分の正確な存在可能時間は誰にも分からないということ。
他にも幾つか聞いていたが、要約すれば以上のような内容だった。

(彼の言うことが本当なら、俺の正体がバレるとトンでもないことになるってことだな・・・。)

自分の居た世界でも、世界初と言われるような物は関係者の注目を集めている。
この世界においてもそれは例外ではないだろう。
きっと、根掘り葉掘り色々なことを一日中詰問されるに違いない。
それだけならまだマシで、非人道的な実験やら何やらをされる可能性だって否定はできない。
彼はそういう輩から自分のことを保護することも兼ねて改めて同行を申し出てくれた。

(何っつうか、こういう時って隠された能力みたいのがあってもいいよな。Lvが上がると魔法が使えるようになるとかさ・・・。)

タクトは自身の置かれた状況を実に楽観的に見ていた。
そんな折、かつては堅牢な門であった物の向こう側から元気な声が聞こえた。
タクトとラスは門の残骸を跨いで【またいで】声の主の下へと向かっていった。

「また、派手にやらかしましたね。」
「これでも結構穏便に済ませたつもりだぜ?・・・ほい、コレ。」

ラスの皮肉にも全く動じず、ネスは集めてきた輝石を袋ごと投げ渡す。
受け取ったラスは袋の中身を覗き込んだ。タクトも何となく一緒に覗き込んで見る。

「アサルトガンが6丁に、ハンドガンが8丁、それからチャフ12個ですか・・・。結構な収穫ですね。」
「そっかぁ~?私、その5倍は手に入れる予定だったぞ。」
「・・・そんなに要りませんって。」

タクトは恐らくは召喚できる物の名前であろう単語を次々と口にするラスが不思議で仕方なかった。
タクトには単なるカラフルな石にしか見えなかったからだ。

「ってか、石の状態のままでもどれが何だか分かるのか?」
「ん?・・・ラス、アンタ何やってたんだよ。それぐらい説明しとけよな。」
「ああ、すみません。忘れてましたね・・・。」

ラスはタクトに、輝石を召喚可能な状態にできる者はリンカーだけであるということ。
リンカーは輝石を見ただけで何を召喚できるかが分かるということ。
これは門外不出の専門知識と確かな選別眼があるからできることで、リンカー以外の人間ではまず判断ができないことを伝えた。

「なるほどな・・・。って、ネス。それは?」
「おう、アンタにやるよ。」

ネスが輝石の入った袋の他に手に持っていた細長い物をタクトに投げ渡す。
タクトは慌てて受け取った。細長い物の正体は、その重さや長さから見て鉄製の剣のようだ。
真ん中ぐらいに青い布のような物が巻きつけてある。
タクトはそれを解いて広げてみる。その正体は青いローブであった。

「アンタの格好、結構目立つからよ。とりあえずそれでも羽織っとけ。剣も一応持っておいた方が様になるだろ。」
「お、おう。ありがとな。」
「いいってことよ♪」

タクトは言われた通りにローブを羽織って、とりあえず剣を右腰に鞘についていたベルトで留めた。
ネスはその様子を満足げな顔で見届けた後、大きく息を吸った。

「さて!いい加減そんな所に突っ立ってないでこっちに来たらどうだ!?」

ネスが突然、誰に向かってでもなく叫んだ。
タクトは驚いて周りを見回すが誰も見当たらない。
首を傾げていると、突然ラスに手を引っ張られた。
タクトは倒れこむようにラスに誘導され、近くの物陰に連れ込まれた。

「な、何すんだよいきなり!?」
「すみません、説明する暇がなかったんです。」
「どういうことだ?」
「・・・見れば分かりますよ。」

ラスの言葉に従って、タクトは物陰から少しだけ顔を覗かせて辺りの様子を窺った。
ネスの視線の先には何時の間にか一人の男の姿があった。
銀色の髪に赤く鋭い瞳の男は余裕の表情を浮かべネスと対峙している。
タクトは10メートルぐらいは離れているのにも関わらず、あの男から身体の芯から凍り付くような寒気を感じずには居られなかった。

「だ、誰なんだ・・・?」
「そうですね・・・。彼は彼女が旅に出た理由で、彼女が各地で騒動を巻き起こす目的で、彼女が間違えて貴方をこの世界に呼び出した原因です。」
「はぁっ?何だよそりゃ・・・。」

此処からでもあの男がある意味ではネス以上の危険人物であることが感じられる。
そんな男が彼女に、ひいては自分に関係がある人物であるとは正直信じたくはない。
しかし、ラスの表情からこれがウソではないということは容易に感じ取れる。

(俺、もしかしてすっげーヤバいことに巻き込まれたんじゃねーか?)

タクトは今更ながらに自分の置かれた状況が相当危ないことを知り、大きく溜め息をついていた。

「・・・遅かったじゃねーか。大事な依頼主が殺されたら、報酬貰えないだろ?」
「そうだな。君の言う通り、遅かったようだな・・・。」

ネスの問い掛けに、男は答える。
残念そうな口振りではあるが、その表情は全くそう思っているようには見えない物だった。
ネスは男のそんな態度も気にせず言葉を続ける。

「・・・5年、捜したんだぜ。」
「ほぉー。全身傷だらけになってまで、よくもまぁ飽きずに捜してくれたな。」
「自分でもそう思うぜ。でもな・・・。」

男の返答にネスは軽く鼻で笑いながら少しだけ顔を俯かせた。

「いい加減、飽きて来たから今日で終わりにさせてもらう!」

ネスは剣を引き抜きつつ一気に男との距離を詰める。
男は身構える様子も無く、その場に突っ立ったままだった。

「お前を討ってな!オルグ!」

ネスは彼に斬り掛かった。
しかし、ネスの薙ぎ払い【なぎはらい】は彼の身体を捉えることはなく、代わりに短剣を1本斬り飛ばすに留まった。

「何だ!覚えていたのか!」
「いや、忘れたさ。その剣が化物染みた破壊力を持ってること以外はなぁ!」
「そうか、じゃあ全部思い出させてやるぜ!感謝しな!!」

オルグと呼ばれた銀髪の男は、ネスの連続攻撃を間一髪の所でかわしながら後退する。
そして、一度大きく後退して距離を離した所で短剣を投げ付けた。
ネスはそれを飛び退いてかわす。

「どうした?もっとよく狙えよ。殺人機械【キリングマシーン】の名が泣くぞ?」
「私は正確に狙っているさ。君が化物なだけだ。」
「それは悪かったな!」
「所で、先程からあの物陰から私の隙を窺おうと必死になってる男性は誰だい?君の新しい・・・」
「違うなっ!相棒だ!」

オルグが何かを言いかけた所で、ネスが叫びつつ再び彼との距離を詰める。
ネスの連続突きを紙一重でかわしつつオルグが何か細長い物を投げ付ける。
ネスはそれを右手で受ける。ネスの右腕に勢い良く巻き付いたそれは鉄製の鎖であった。

「何だ?鎖付きデスマッチでもやろうってのか?」
「ふふっ、まぁそんな所だな。」
「面白い!これでお前を逃がすこともないというワケだ!」

ネスは右腕の鎖を思い切り引きながら斬り掛かった。
オルグはバランスを少しだけ崩しながらもサイドステップでかわす。
ネスはその勢いを利用するように鎖を振り回す。
オルグの身体が勢い良く宙に舞い、そして地面に叩き付けられた。

「や、やってくれたな・・・。」
「喋ってる暇があるたぁ、余裕だな!」

間髪居れず飛び掛るネスの一撃を避けつつ、オルグはもう1本鎖を投げ付けた。
ネスは当然のように右腕でもう1本の鎖を受ける。

「何だ?1本だけじゃ不安か?」
「まぁ、そういうことだ。」
「そうか。私も千切れそうで心配だった所だ!」

ネスは2本目の鎖を右手で握り直しつつ、連続攻撃を加える。
オルグは何故か余裕の笑みを見せつつ攻撃をかわしていた。
ネスが更に一歩踏み込み突きを繰り出そうとしたその時、オルグは徐に腰の後ろに左手を回した。

「がぁっ!?」

オルグが飛び退きながら腰の後ろで何やら手を動かした瞬間、ネスの身体がビクりと跳ね上がりそのまま前のめりに倒れ込む。
ネスには何が起きたのか全く分からず、突然身体が硬直し呼吸ができなくなったことに混乱していた。

「ふはは!掛かったな!君の負けだ!」
「くっ・・・あがっ・・・うぁぁっ・・・・・・!?」
(な、なんだ!?何が起こってる!?何をしやがった・・!?)

あの男が勝ち誇った表情でゆっくりと近づいてくる姿がぼんやりと見える。
このままではまずいと全身に回避指令を出すが、全く言うことを聞いてくれない。
そればかりか呼吸すらままらなくなっている。酸欠で気をやられるのも時間の問題だ。
こんな状態で気を失えば、確実に二度と起き上がることはできまい。
ネスは歯を食いしばり辛うじて意識を繋ぎ留めていた。

「ネスさん!?」
「あっ、おい!ラス!」

その様子を見てラスは反射的に飛び出していた。
タクトは慌ててその後を付いて飛び出した。

「・・・おや、ようやく相棒の登場か。」
「彼女に何をしたのですか・・・?」

ラスの声に明らかに怒りと敵意の色が見て取れる。
タクトは彼が初めて見せる激情に圧倒され、その場から全く動けなかった。
しかし、オルグは彼のその様子に動じることもなく不敵な笑みを浮かべていた。

「答えてください。彼女に、何をしたのです?」

ラスはハンドガンを構え、オルグを睨みつける。

「さて、何をしたのかな。・・・所で、後ろの君はこの辺りでは見かけない顔だな。」
「話を逸らさないください!」

ラスの叫びと供に乾いた音が数回響く。
彼の撃った弾丸は、オルグの身体を捉える事なく虚しく空を切り裂いた。

(あ、あれは、まさか・・・。)

タクトはオルグがラスの発砲を避けた時に僅かにできたマントの隙間から小さな箱を見つけていた。
少しの間しか見えなかったので良くは分からなかったが、鎖はどうやらその箱に繋がってるようにも思えた。
落ち着いて観察すると彼は鎖を握っている方の手だけに軍手のような物をつけている。
ファッションの可能性も否定はできないが、それにしては些か不恰好な印象も受ける。
それに鎖を素手で受け止めているネスが突然動けなくなったこと、その鎖があの箱に繋がってるように思えることも踏まえると・・・。

(バッテリー、なのか!?あのサイズで!?)

何せ車や銃があるような世界だ。車用のバッテリーがあったって不思議ではない。
自分が知っている物よりは幾分小さい印象も受けたが、現状バッテリー以外の物であるとは考えにくい。

「ラス!鎖だ!鎖を切るんだ!」
(ええい!兎に角、鎖を切ってみれば分かるっ!)

どうやらラスもそのつもりだったらしく、タクトの叫ぶ声と同時に鎖を1本撃ち抜いていた。

「ちぃ!しかし、幾ら彼女でももう手遅れだろうな!」

鎖を断ち切られ、オルグは手に持っていた鎖を投げ捨てる。
その顔にほんの少しであったが初めて焦りの色が見られた。
そして、ラスの射撃を器用にかわしつつ彼との距離を詰める。

「くっ!」
「そう言うことだから、先に逝って彼女を待ってやるんだな、相棒君よ!」
「危ねぇ!ラス!!」「タクトさん!?」

タクトは咄嗟にラスを突き飛ばしていた。
その直後、オルグとの距離が一気に縮まる。

「・・・ぐっ、がふぅ・・・。」
「タ、タクトさん!!」
「ちっ、外したか・・・。まぁ良い、順番が逆になっただけだ。」

タクトの腹にオルグの短剣が深く突き刺さっていた。
そして、前屈みになるタクトの肩を押さえて一気に短剣を引き抜いた。
鮮血と供に地面に倒れこむタクトの姿も確認せず、オルグはラスの方へと向き直る。
ラスが怒りを露わにしてハンドガンを向けたその時であった。

「くっ!?」
「ふふっ・・・止めは、ちゃんと刺さないとな?」

ラスとオルグの間にネスが割って入っていた。
少し荒々しく肩で息をしているがその目には闘志が十分漲っていた。
ネスはすれ違いざまの不意打ちで、オルグの左肩に手傷を負わせていた。

「ネスさん!無事だったんですね!」
「バ~カ・・・。あんなよく分からん物で・・・、殺されてたまるかよ。」

ラスの少し泣きそうな声に、ネスはそのままの体勢で答えた。
オルグは左肩に手を当てながら不敵な笑みを零す。

「そうだったな、どうやら少々君を過小評価していたようだ。」
「そうだな、次は本気で殺しに来い。でないと、お前が死ぬぞ。」
「次はそうさせてもらおう・・・。」

オルグの言葉が終わるとほぼ同時に周囲を煙が包みだした。
以前に彼の投げた短剣の柄に、時限式の発煙装置が内臓されていたのだ。
白い煙の中、ネスは構えを解いて振り返る。
そして、唖然としているラスを小突いた。

「何ボサっと突っ立ってんだ、私達も退散するぞ。」
「えっ!?・・・分かりました。」

遠くにざわめき感じたラスは、ようやく先の二人の会話が意味する所を理解した。
ラスは地面に横たわって気を失っているタクトを抱きかかえると、ネスと供にその場を後にした。

~つづく~