現在の研究関心

 歴史教育へ関心が移っています。エストニアの歴史政策は経済政策同様「リベラル」だと思いますが、それゆえに「民族主義的」になっていることが特徴であると思います。

(過去の関心:現在でも関心を持って現状を追いかけてはいますが)
 エストニアでは1991年の独立回復後、急激な社会変革が起こっており、社会的格差の拡大を引き起こしています。そうした中で、2004年5月以降EU市民となったエストニア国民(民族的な意味でのエストニア人、ロシア人およびその他の人びと)とEU市民になれない無国籍者およびロシア国籍者とのあいだで、法的権利だけでなく、意識や社会問題のあらわれ方に違いがあるのかなど、検討すべき問題群は多様です。また、そうした状況の中で、歴史認識は人々にどのような影響を与えているのか、ということにも関心を持っています。
 エストニアを事例としたヨーロッパにおける重層的なシティズンシップの理論と実践についての研究も重要な課題です。

業績

編著
  • 2012 『エストニアを知るための59章』明石書店 
  • 2007 『地域のヨーロッパ;多層化・再生・再編』(宮島喬・若松邦弘との共編)人文書院

著書

  • 2014 『バルト三国の歴史ーーエストニア・ラトヴィア・リトアニア 石器時代から現代まで』(翻訳)明石書店
  • 2009 『エストニアの政治と歴史認識』三元社
  • 2007 『日本・ノルウェー交流史』早稲田大学出版部
  • 2005 『ノルウェーの歴史--氷河期から今日まで』早稲田大学出版部、翻訳
  • 2002 『バルト諸国の歴史と現在』東洋書店、共著(橋本伸也)
  • 2002 『アイスランド小史』早稲田大学出版部、翻訳

論文等
  • 2015「再国民化と脱国民化に直面するエストニアの歴史教育―教科諸比較の視座から―」『早稲田教育評論』第29巻第1号、151-165頁。
  • 2015「規範の交錯するバルト海―エストニアとラトヴィアの『国民』」竹中克行編『グローバル化と文化の境界―多様性をマネジメントするヨーロッパの挑戦』昭和堂。
  • 2015「『北欧』の境界地域における国民形成―フィンランドとエストニアの国民観を事例として」岡澤憲芙編『北欧学のフロンティア―その可能性と限界』ミネルヴァ書房、80-95頁。
  • 2014「エストニア学生協会と民族知識人の醸成」橋本伸也編『ロシア帝国の民族知識人』昭和堂、104-127頁。
  • 2011「『マイノリティ』と国民国家-エストニアの歴史的経験からの一考察」『マイノリティという視角』関西大学マイノリティ研究センター中間報告書、255-279頁。
  • 2011「エストニアとラトヴィアの政党政治比較-歴史的要因としてのロシア語系住民問題を軸に」林忠行・仙石学『ポスト社会主義期の政治と経済』北海道大学出版会、203~231頁(査読あり)。
  • 2010「バルト三国の言語政策」山本忠行・河原俊昭『世界の言語政策』第3集、くろしお出版、29-54頁。
  • 2010「民族性原理はなぜ採用されるのか-エストニアの少数民族文化自治法」小森宏美編『リージョナリズムの歴史制度論的比較』地域研、CIASディスカッションペーパーNo. 17、22-30頁。
  • 2008「地域アイデンティティの形成――エストニアの場合に見る功罪」『地域研究』第8巻第1号、100-115頁
  • 2008「だれの言語権か――エストニアとラトヴィアの場合」『月刊言語』2月号、34-39頁
  • 2008「ヨーロッパ人になろう!――「祖国」としてのエストニアと地域認識――」『スラブ・ユーラシア学2;地域認識論――多民族空間の構造と表象』宇山智彦編、280-309頁
  • 2007 「エストニア型多文化主義の理論と実践--第一次社会統合プログラムの総括を中心に『多言語社会研究会年報』
  • 2006 Eesti uurimisest Jaapanis, ÕES aastaraamat 2004-2005, Tartu, 83-93頁
  • 2006 「政治への歴史家のかかわりに関する一考察--エストニア人歴史家ハンス・クルースの思想と実践」『ヨーロッパ史の中のエリート--生成・機能・限界』井内敏夫編、太陽出版、387-406頁
  • 2006 「EUの対外政策とエストニア」『ヨーロッパの東方拡大』羽場久美子・小森田秋夫・田中素香編、岩波書店、222-232頁
  • 2006 「小国の言語戦略--エストニアの言語事情」『北欧世界のことばと文化』岡澤憲芙・村井誠人編、成文堂、227-246頁
  • 2005 「EUの中のロシア語系住民--エストニア北東部ナルヴァ市の事例から」『国政政治』第142号、113-126頁
  • 2005 「バルト・ドイツ人の再移住--国民国家形成期のエストニア人とバルト・ドイツ人の関係」『中央ヨーロッパの可能性』大津留厚編、昭和堂、173-201頁
  • 2004 「EU加盟という『選択』――エストニアとラトヴィアを事例として」『地域研究』第6巻第2号、173-192
  • 2004 「ノルウェー・日本経済交流100年」『ノルウェーの経済』岡澤憲芙・奥島孝康編、早稲田大学出版部、176-189頁
  • 2004 「ノルウェー・日本修好史」『ノルウェーの政治』岡澤憲芙・奥島孝康編、早稲田大学出版部、204-219頁
  • 2004 「国境の変容とヨーロッパ連合の拡大-エストニアを事例として」『ヨーロッパの分化と統合-国家・民族・社会の史的考察』小倉欣一編、太陽出版、321-342頁
  • 2004 「両大戦間期エストニアの知識人」『ロシアとヨーロッパ』鈴木健夫編、早稲田大学出版部、141-165頁
  • 2004 「EU加盟を目指すエストニアにおける言語法改正とその背景」『ことばと社会 別冊1 ヨーロッパの多言語主義はどこまできたか』三元社、121-134頁
  • 2004 (項目執筆)『新版ロシアを知る事典』平凡社
  • 2003 「バルト三国の安保戦略とEU・NATO加盟」『海外事情』拓殖大学海外事情研究所、76-89頁
  • 2001 「両大戦間期エストニアの権威主義体制に関する研究動向」『東欧史研究』23
  • 1999 「両大戦間期エストニアの極右運動」『早稲田大学大学院文学研究科紀要』44(4)
  • 1998 「エストニア・ラトヴィアにおけるロシア語系住民問題」『北欧史研究』15
  • 1998 『ポーランド・ウクライナ・バルト史』山川出版(分担執筆)
  • 1997 「エストニアにおける権威主義体制(1934-1940)」『西洋史学』187
  • 1996 「エストニアの権威主義体制における検閲・宣伝機関の考察」『北欧史研究』13
  • 1993 「両大戦間期のエストニア-独裁体制の考察」『西洋史論叢』15
  • 1993 「旧エストニア共和国における3つの憲法―その内容と成立背景」『通信』78

職歴
日本学術振興会特別研究員(1994-1996)
在スウェーデン日本大使館専門調査員(1996-1999)
フェリス女子大学国際交流学部非常勤講師(2001-2002)
国立民族学博物館地域研究企画交流センター助手(2002-2006)
早稲田大学第一文学部非常勤講師(2000-2010)
東京医科歯科大学教養部非常勤講師(2005-)
京都大学地域研究統合情報センター助教(2006-)
同上・准教授(2009.1-2011.3)
早稲田大学教育・総合科学学術院・准教授(2011.4-2014.3)
同上・教授(2014.4-)

口頭発表等
  • 2014「世紀転換期におけるエストニア人の政治的変容―分水嶺としての1905年革命を中心に」史学会
  • 2011「エストニアの安全保障観とNATO」国際政治学会
  • 2010「バルト三国の言語政策」比較政治学会
  • 2009「境界のアイデンティティ――エストニア人の「祖国」と「民族」を手がかりに」大阪大学世界言語研究センター主催「コトバの活断層-「民族」認識の座標軸」、2009年2月23日、千里ライフサイエンスセンター
  • 2006 「エストニア型多文化主義の理念と実践--第1次社会統合プログラムの総括を中心に」多言語社会研究会第4回大会
  • 2006 「バルト三国に見るロシア語の位置の変遷--エストニアを中心に」ロシア・東欧学会/JSSEESS合同研究大会シンポジウム
  • 2004 Baltic Studies in Japan, The 4th International Academic Conference of KACEES, at Tartu University(2004.7.13-14)
  • 2003 「ソ連崩壊後の国籍問題―バルト諸国を事例として-」地域研ワークショップ(合同共同研究会)(2003.3.20)
  • 2002 「加盟を目指すバルト三国における言語法の改正とその背景」 日欧シンポジウム『ヨーロッパの多言語主義はどこまできたか』多言語社会研究会(2002.1.27)
  • 2001 「エストニアの体制転換-国民国家形成を巡る基本的争点-」 日本国際政治学会(2001.5.19)
最終更新:2015年04月18日 08:46