碁を打つ亡霊

いつの日のことだったか、外から一人の亡霊が幻想郷にやって来た。
彼は大層美しい亡霊だった。
細い身に白い狩衣を纏い、頭には立烏帽子をかぶっていた。
漆黒の長髪は背にまで届き、白皙の美貌は女と見紛うほどだった。

聞くところによると彼は棋士の亡霊なのだという。
非業の死を遂げ、未練を抱いて碁盤に宿り、一千年程の亡霊生活の間に二人の弟子を持ったとか。
一人目の弟子は病で早逝するも後の世において棋聖と称され尊敬された、と最近外から来た御柱が言っていた。
なんでも当時、その棋聖のファンだったらしい。
二人目の弟子は囲碁界期待の二つの新星の一人として注目されている、と最近外から来た風祝が言っていた。
アキラ×ヒカルも良いけどやっぱりヒカル×アキラですよね、とのことだが意味が良く解らなかった。

ところで、彼の名前を聞いた竹林の案内人はなにやら苦い顔をしていたという。
そういえば姓が同じだが、ひょっとして生前に何か縁のある人物だったのだろうか。
ところで、彼の名前を聞いた永遠邸の姫君はなにやら遠い目で微笑んでいたという。
まるで古い友人の消息を風の噂に聞いたかのようだったそうだが、生前に面識でもあったのだろうか。

彼は幻想郷のあちこちを見て回った後、現世に留まらず、白玉楼に落ち着いたという。
曰く、外で最も強かった名人との対局を弟子に見せたことで自分の使命は終わった、
神の一手を極めるという夢は後の人々に託す、とのことである。

閻魔様の話では、一度輪廻から外れた亡霊を再び輪廻の流れに乗せるにはそれなりの手続きが要るという。
そのため、彼はしばらくの間冥界に留まっているとのことだ。
囲碁の腕に自身のある方は、冥界に遊びに行った際、一手指南を受けてみるのも良いかもしれない。


「ヒカルの碁」より藤原佐為が幻想入り






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最終更新:2009年03月27日 23:05
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