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かまぼこ -Kamaboko- その2

かまぼこ -Kamaboko- その2


 それから三ヵ月後・・・。
 かまぼこでたっぱりと儲けた半漁人は、海を離れ、大きな家を建てて住んでいた。
 静かな田舎の中の一角にたたずむ、現代的なデザインの立派な豪邸だ。
 まったく妖怪には似合わないが、半漁人は大満足だ。
半漁人「うっうっ・・・おらぁ、前からこういう生活がしてみたかったんだ・・・!」
 うれし泣きしながらそうそう呟く半漁人は、うろこだらけの体の上に背広を着て、すっかり人間になりきっていた。
 陸の上での暮らしは、思っていたよりもずっと楽しい。
 掃除の行きとどいた家の中で、テレビを見たり音楽を聴いたりしながら、のんびりと過ごす日々は、こたえられないもの。
 それに、食べ物にも困らない。
 海に居た時みたいに魚やウミガメを追いかけまわさなくても、すぐにお金で買えるのだ。
 そんな半漁人の好物はと言うと・・・、魚やウミガメでもない。
 ゆでた豆と切った果物を盛り合わせて、甘い蜜を垂らしたデザート・・・「蜜豆」だった。
 半漁人は毎日、家で蜜豆を食べて暮らしていたのだ・・・そんなに食べたら糖尿病になりそうだが、彼もお化けだから病気は無い。
 ただし、その蜜豆を作るのは、半漁人ではなく、メイドの仕事だ。
半漁人「おいアンタ!、蜜豆を持ってきてくれ」
 今日も半漁人は背広姿で、メイドの少女に偉そうに命令する。
少女「はい・・・」
 少女はすぐに返事すると、蜜豆を作るために台所へと向かった。
少女「私、どうしたらいいんでしょう・・・・・・。逃げるに逃げれないわ・・・」
 沈んだ声で独り言を言いながら、少女はおとなしく豆をぐつぐつゆで始めた。
 この少女は元々、「メイド募集」の広告だけを見て、その主人が半漁人だとは知らずにやってきたのだ。
 なので主人がうろこだらけの恐ろしい妖怪だと知った時は、思わず震えあがった。
 しかも非道な半漁人は、ことあるごとに少女を脅してくる。
半漁人「お前、おいしい蜜豆を作らなかったらかまぼこにすっからな」
 半漁人にそう言われてしまうと、少女の方も怖いから、言うことを聞くしかない。
 何しろ相手は妖怪だ、冗談ではなく、本当に彼女をかまぼこにしてしまうのだ。
 それでも少女は、蜜豆を作りながら思い切って半漁人に訪ねた。
少女「あの、ご主人様。私はいつまでここにいなければならないのですか?」
半漁人「いつまでって、ずっとだよ?」
少女「でも・・・でも私はここには三ヵ月だけ働く約束で来たのに、もう四ヶ月ですよ」
半漁人「しょうがないじゃん、代わりがいないんだもん」
少女「代わりが居ないのは代わりを頼まないからじやないですか・・・」
 少女は涙目になりながら悲しそうに言う。
 自分がこの家に来てから後、半漁人が広告だかお金をケチって、新しいメイドを募集してないのをちゃんと知っているからだ。
 しかし、半漁人は知らぬ顔だ。
半漁人「どうせいまどき、人が居ないよ」
 そう言って、少女の話など聞く耳も持たない。
 だが2人がそんな話をしていると、いきなり玄関の方から・・・
???「ごめんください」
 と、二つの声が聞こえてきた。
少女「あら?、誰か来たわ」
 突然のお客に少女が蜜豆を作る手を止めた。
 しかし半漁人はそれが面白くない。
半漁人「あぁ、君は出なくていいよ。代わりに俺が行くから、早く蜜豆を作るんだ」
 そう言い残し、玄関の方へペタペタ歩いていく。
 するとそこには、2人の女の子が居た。
 一人は頭にピョコンと飛び出た・・・つまりアホ毛にリボンを付けて、水玉模様の真っ赤なワンピースを着た女の子だ。
 ただ、何故か前かがみが左側だけが伸びて、左目を隠している。
 もう一人は金髪のポニーテールで、肌が人形のように白く、透き通った水色の目を輝し、顔はかなりの別嬪だ。
 そして、薔薇のブローチを付けてどこかの国の人形が着る赤い洋服を着ている。
 この2人はまるでそう、鬼太郎と真紅みたいだ。
金髪の女の子「ごめんくださいまし・・・あら困ったわ、お留守でしょうか?」
 真紅によく似た少女に言われて、半漁人は急いで返事をした。
半漁人「居るよ居るよ、あんたたちはいったい誰だね?」
片目の女の子「はじめまして、私たち、ここのメイドとしてお仕事をしたいのですが・・・」
半漁人「あら?、それほんと?」
金髪の女の子「本当ですわ、そうでございませんでしたらここまで来る必要はありませんわ。おほほ」
 半漁人が驚いて話しかけると、右の金髪の子はお嬢様口調で言い返す。
 思わぬところへやってきた2人のメイドに、ついデレッと頬を緩めてしまった。
 その途端に、半漁人は金髪の女の子の手を握ったのだ、どうやらかなりの美しさに惚れこんでしまったのだ。
半漁人「ねぇあんた、俺のお嫁さんにならない?」
 いきなり半漁人は彼女に結婚宣言をしたのを、片目の女の子は驚いた。
 しかし、金髪の女の子はムスッと表情を変え、自分の手を握っている半漁人を払いのけた。
金髪の女の子「失礼ですわね!、レディの手をいきなり握るなんて・・・破廉恥にも程があります!。それに私は仕事で来ましたので、お婿様探しに来たのではありません!」
 金髪の女の子はは厳しく言うと、半漁人を睨む、だが片目の女の子に窘められた。
 一方の半漁人はきょとんと佇んでいた、普段なら「嫁にならないならかまぼこにするぞ」と脅しかけてくるも、何かのプレッシャーに押されて脅すにも脅せなかった。
 こうして、突然現れた2人の女の子は、前のメイドと交代し、その日から半漁人の家で働き始めた。
 片目の女の子は優秀なことと言ったらない。
 家事は何でもきちんとこなし、良く気が利いて、半漁人のやってほしいことを何でも先回りしてやってくれる。
 それに何より、彼女が作る蜜豆がとても美味だ。
半漁人「うん、うめぇや」
 片目の女の子が作った蜜豆を食べるたびに、半漁人はにっこり笑う。
 ・・・・さて、金髪の女の子はと言うと
  ガッシャーン!!
金髪の女の子「あぁっ!!」
 片目の女の子とは正反対に、家事をやってもダメ、蜜豆を作ろうとしても・・・
半漁人「ちょっ・・・おまっ!、焦げてる焦げてる!!」
金髪の女の子「大丈夫ですわご主人様、よく言いますわよ?。料理はちょっと焦げた方がおいしいと・・・」
半漁人「確かに焦げたら美味いがどんな料理でも焦げてれば美味いってもんじゃねーよ!!、黒い煙が毒ガスみたいに出てるじゃねーかァァァ!!」
 あっという間に、彼女が作るとその蜜豆は蜜豆だった物に変身してしまう・・・。
 これに関しては半漁人は脅すにも脅せず、逆に呆れかえってしまうのだ。
 脅そうとするも・・・
金髪の女の子「ご、ごめんなさい・・・ご主人様ぁ」
 美人なのが幸いか、涙目になりながら半漁人に謝る金髪の女の子の姿は本当に可愛らしかったので、半漁人は脅せなかった。
 そして、彼はふとこう思った。
半漁人「(なるほど、これが巷に聴く「ドジっ娘」か・・・)」
 そのたび、金髪の女の子が失敗しても、すぐに片目の女の子が金髪の女の子の代わりでやってくれる。
 だが、片目の女の子を手伝おうと金髪の女の子がモップを持ってこようとした時には、半漁人が彼女を止めることもある。
金髪の女の子「あの、ご主人様・・・私は何をすればよいのでしょうか?」
半漁人「何もしなくていいよ!、見つめてるだけでいいから!」
 ・・・と、なんやかんやで半漁人はにっこりと笑う、これには金髪の女の子はゴミを見るような眼で見つめていた。
 そんなこんなで、もうすっかり、この女の子たちのことが気に入ってしまった。
 そんなある日のこと・・・。
片目の女の子「あのぅ、ご主人」
 今日も蜜豆をムシャムシャ食べていた半漁人に、片目の女の子が話しかけてきた。
半漁人「なにっ?」
片目の女の子「ご主人、あなたはそんなに人間生活に憧れていらっしゃるなら、いっそ人間になられたらどうでしょうか?」
半漁人「なんだ、何を言うかと思えば・・・」
 半漁人は、呆れかえってしまった。
 妖怪から人間になれだなんて、無茶もいいところだ。
半漁人「バカッ!。妖怪から人間になることができるか」
 半漁人の言うとおりだ、妖怪は妖怪、人間は人間。
 そう簡単に変わることなんてできないはずだ・・・・。
 半漁人はそう思うのだが、今度は金髪の女の子が平気な顔で言い返した。
金髪の女の子「何をおっしゃいますの?。近頃では医学が進んでましてよ?、男が女になったり、女が男になったりするのが、ざらにありますわ。
       妖怪から人間になることも、簡単ですわ」
半漁人「ほ、ほんとか?」
金髪の女の子「本当でしてよ。もしかして知りませんでしたの?」
 金髪の女の子は口をとがらせた。
 そして次に片目の女の子が、半漁人に次々と驚くべきことを教えていく。
片目の女の子「この先のあばら家に妖怪病院が開設されています。そこへ行けば、すぐに人間にしてくれますよ」
半漁人「ほ、ほんとか!?」
 なんと、そんな近くに自分を人間にしてくれる病院があったなんて・・・。
 半漁人は驚きと喜びで胸を弾ませた。
 もし本当に人間になれるなら、こんなにありがたいことはない。
 すっかり見飽きたウロコだからけの体ともうおさらばしたかったのだ。
半漁人「は、早いとこ連れてってくれ!」
金髪の女の子「では早速・・・行きましょお姉さま」
 金髪の女の子が立ちあがると、片目の女の子はこくりと頷き、半漁人を連れて家を出た。
 そして・・・三人が行きついたのは、いくつもボロ小屋が固まっている。
 女の子たちはその一軒の前で足をとめた。
片目の女の子「ここです、手術は簡単です」
 片目の女の子にそう言われて半漁人が中に入ろうとした・・・その時に・・・
???「お腹が痛いよ!!お母さぁん!」
 どこからともなく、女の子の苦痛の声が大きく響いた。
 半漁人はびっくりして中を覗くと、そこには変わった親子が中に居たのだ。
 子供の方は、ボーイッシュな髪形をして帽子をかぶり、目は赤と緑のオッドアイ、男の子が着る短パンを穿いて、男の子用の服を着ていた。
 その子はどうやらお腹の痛さで苦しんで泣き叫んでいたのだ。
 そして、その母親はまったくもって信じられなかった。
 美しく光る銀髪のロングヘアーで、普通の女性が着る服装をしているも・・・身長が人形みたいな大きさであった。
 母親は、困った顔をして腹痛に痛がる子をなだめている、しかし2人の顔立ちからして・・・水銀燈と蒼星石みたいだ。
ボーイッシュの女の子「痛いよぉ!手術なんてやだぁ!!」
銀髪の母親「わがまま言わないの。大丈夫よ、見てもらうだけだから」
ボーイッシュの女の子「やだやだぁ!!お医者さんきらーい!!」
 ボーイッシュの女の子は泣きわめきながら、母親に引きずられ診察室のような部屋に入って行った。
 そのような変わった光景を見ながら、半漁人は金髪の女の子に話しかけた。
半漁人「なぁ、ここってあんな変わった親子も来るのか?」
金髪の女の子「あら?、言い忘れてましたわ。あの親子はここの常連様でしたわ。おほほ」
 金髪の女の子はそう答え、片目の女の子と半漁人と共に中に入っていく。
 中に入ると、生温かい空気が漂う不気味な部屋に、白衣を着た医者が何人も集まっている。
 手が砂だらけの医者に、泣き顔をした医師頭の医者、猫のような目の医者に、ねずみみたいな顔の医者。
 さらには白い布のような医者や、大きな壁のような医者、そして驚くことに、アンティークドールのようなナースたちまで居たのだ・・・。
 ところが、不思議なことに、先ほど入って行ったあの親子の姿がどこにもなかったが、半漁人にはそんなことはどうでもよかった。
二つに分かれたロール髪のナース「では、横になってくださいですぅ」
 二つに分かれたロール髪のナースが、半漁人に言う。
 そして小さな目玉の医者が、半漁人にこう言った。
目玉の医者「えー、これより、手術を始めます」
半漁人「よろしく頼む!」
 半漁人はウキウキしながら背広を脱ぎ捨て、ベッドの上に横たわった。
 この後どんな運命が待ち受けてるとも知らないで・・・影の隅であの腹痛で痛がっていた女の子の母親がクスクスと笑っていた。

 ・・・半漁人が手術してから、もう一週間がたち、まもなく半漁人は人間になった。
 もう体には、うろこ一枚生えてなく、鋭い歯や爪はすっかりまるまり、足のひれもどこへやら・・・。
 長く伸びたざんばら髪も短くなって、妖怪の面影すらないのだ。

半漁人
「や・・・やった・・・俺は人間になったんだぁ!」

 鏡を見て大はしゃぎ、挙句の果てには嬉しくて号泣してしまった。
 しかし・・・そんな喜びもひと時だった。
 その翌日、半漁人が目を覚ますと、家の戸をどんどんと叩く音がした。

半漁人
「何だよ・・・人がせっかくいい気持ちで寝てるのに・・・」

 ぐっすり寝ているところを邪魔され、半漁人はかなり不機嫌に玄関まで歩いていく。
 玄関に出てみると、見知らぬ男が立っている。

半漁人「どなた?」
税務署の男
「おはようございます!。税務署から税金をいただきました」

半漁人
「ぜ、ぜいきょん?・・・なんだそりゃ?」

税務署の男
「いや、「なんだそりゃ?」って・・・あなた人間なのに、税金を知らないのですか?」

 男にそう言われてしまい、半漁人は目をぱちくり。
 税金を知らないのも無理は無い、彼は長い間、妖怪の姿で暮らしていたものなのだ。
 半漁人はこう男に答えた。

半漁人
「さぁ?知らんなぁ」

税務署の男
「そんなことじゃ困りますよ!?。ちゃんと人間になったんだから、きちんと国にお金を納めてください!」

 いきなり、きつく叱られてしまった。仕方なく半漁人はしぶしぶとお金を男に渡す。
 男は「ありがとうございました!」と言って、去っていった・・・半漁人はやれやれと呟いたときに、また別の客人がやってきた。

客人
「ごめんください」

半漁人
「今度はどなた?」

社会保険庁の女性
「『社会保険庁』の者です」

半漁人
「し、しかいほぜんちん?」

社会保険庁の女性
「社会保険庁です」

半漁人
「それが何の用なの?」

社会保険庁の女性
「はい、半漁人さんが人間になったと聞いて、今月分の年金を納めてもらいに来ました」

半漁人
「へっ!?。そいつぁ税金とは違うのか?」

社会保険庁の女性
「別ですよ!!。ちゃんと毎月払ってもらいますよ!」

 またもや、きつく叱られてしまう、そしてまたもや、お金を渡す。

半漁人
「ち、ちくしょう!。これじゃぁお金がいくらあっても足りねぇや!。これが人間社会って奴なのかよ!」

 その通りなのだ、半漁人は人間社会の厳しさに、すっかり驚いていた。
 人間は妖怪とは違って、働いて稼がないといけない。
 これからはもう、のんびり遊んでいる時間は無い・・・毎日たくさんのかまぼこを売ってお金を稼がないと、まともな暮らしが出来ず、ご飯も食べれられなくなる。
 そのためには、一日たりとも休むことは許されない!。

半漁人
「な、なんてこった・・・これじゃ人間じゃなくて、馬車馬じゃないか!」

 呆れているところへ、また別の訪問者が・・・。

男性
「ごめんください」

半漁人
「今度は何だ?」

セールスマン
「お墓のセールスです」

半漁人
「墓?、誰の墓だ?」

セールスマン
「いや誰?って・・・あなたが死んだときに入るお墓ですよ」

半漁人
「ばか!!、俺は妖怪なんだから死なねぇよ!」

セールスマン
「何をおっしゃるのですか。あなたはもう人間でしょ?」

 セールスマンの言葉に、半漁人はギョギョッとする。
 そうなのだ、半漁人は自分がもう妖怪ではなく、人間になっていることを忘れていたのだ。
 人間は妖怪と違い、どんどん歳をとって・・・最期には死んでしまうことを・・・。

半漁人
「こ、こいつぁ大変だ!すぐに妖怪に戻してもらわなきゃ!」

 半漁人は顔を青ざめながらそう叫ぶと、一目散で昨日のあばら家へ飛んで行った。
 それはもう凄まじい早さで、もう妖怪に戻りたいと無我夢中で走る・・・転んですりむいても、それでも半漁人は走った。

  ・・・・
 やがて、例のあばら家に着くと、半漁人の顔は青ざめているも更に青ざめて行く・・・。
 青ざめる原因は一つしかない・・・妖怪病院へ来てみれば、そこはすでにもぬけの殻。
 もう白衣を着た医者や、人形と同じ大きさのナース、そして、あの奇妙な親子の姿も誰も居ない。
 シーン・・・・と静まり返って、ここが病院だったなんて嘘のようだ。

半漁人
「な、な、なんてこった・・・一体、どうちてくれるんだぁ!」

 この絶望差に、とうとう半漁人はべそをかいてしまった。
 おーいおいおいと、妖怪だった者の悲しい鳴き声が、夕暮れの空に響く。
 諦め半分で半漁人が、途方に暮れていると・・・そこへ後ろから

  カラン………コロン………カラン………コロン………

 聞きなれたあの下駄の音が耳に入ってきた。
 半漁人は「まさか!?」と思い、ハッと後ろを振り向いたその先には・・・。

鬼太郎
「やぁ、半漁人」

 もちろん、あの時イカと共に爆破し、かまぼこの材料にしたあの鬼太郎だった!。
 もうイカでも、かまぼこでもない・・・元通りの姿だ。
 ちゃんちゃんこと下駄の姿で左手に大きな鞄を持ちながら、半漁人を睨みつけている。
 そして、彼が右腕に抱いているのは・・・なんと留守番をしていた真紅であった。

真紅
「どうかしら?、人間になったらどんなに大変か、身にしみてるかしら?」

 鬼太郎が抱いている、真紅が、いつもの姿でいつも通りの話し方で鬼太郎と同じく半漁人を睨みつけていた。
 しかし、この2人は頭と髪型が妙に変わっていた。
 鬼太郎の頭にはリボンが一つ、真紅はボンネット状のヘッドドレスをかぶっていながらも、ツインテールではなく、ポニーテールだ。
 2人の髪型リボンに、半漁人は思い出したように気付いた。

半漁人
「あっ!、まさかおめぇらは・・・!あの時のメイドたちなのか!?」

 半漁人は鬼太郎たちに指をさして驚いた。
 そう、家に突然現れて、メイドになったあの2人の女の子は、鬼太郎が女装、真紅は変装していたものだった。
 鬼太郎はリボンを付けながら真紅と共にコクリと頷いて見せた。

鬼太郎
「やっと気づいたようだな。お前を油断させるために、僕と真紅はメイドになり済ましていたんだ」

真紅
「それに、妖怪病院なんて嘘なのだわ。みんな鬼太郎の仲間と私の姉妹で作ったのよ」

 砂かけ婆や子泣き爺、ねこ娘にねずみ男、一反もめんにぬりかべ、、翠星石と雛苺、金糸雀、そして目玉おやじまで
 みんなで白衣を着て医者とナースに化け、半漁人を人間に変身させたのだ。
 そしてあの奇妙な親子は、子供の方は、半ズボンを履くのが恥ずかしそうに蒼星石が化け、母親の方は、乗り気ではなかったが今回の件で協力した水銀燈が化けていたものだ。
 真紅は、追い打ちをかけるように口をとがらせて半漁人にこう言った。

真紅
「貴方はまだ分からないかもしれないけど、こんなあばら家が妖怪病院なわけが無いわ。
 本物の妖怪病院は恐山の地下にあるのだわ」

半漁人
「あ・・・あ・・・」

 全てを知った半漁人は、唖然として口がふさがらなかった。

半漁人
「するとおめぇらは、まんまとこの俺を騙してたってわけか・・・!?。
 なんでもいい!早く妖怪に戻してくれ!!」

 そして、懸命に鬼太郎に頼んだ。
 半漁人は俺が悪かった!と泣き叫び、土下座までしてまだ頼むものの・・・
 2人は厳しい顔で首を横に振った。

真紅
「じゃあ、聞くけど、あなたは、鬼太郎が戻してくれ頼んだのに、元に戻したの?。
 逆に鬼太郎を騙して散々こき使って・・・挙句の果てには爆薬を食べさせてかまぼこにしたのよ!。
 そこまでして都合がいいことに「元に戻して」ですって?、ふざけるのも大概になさい!」

 真紅は半漁人のやった行いに、相当、頭に来て半漁人を問い詰め続ける。
 そして最後に、鬼太郎は半漁人に追い打ちをかけるように言い放った。

鬼太郎
「真紅の言うとおりだ。お前は人間になって、元の姿に戻れない苦しみを、永遠に味わうがいいさ!」

半漁人
「そ・・・そんな・・・お・・・おおおぉぉぉぉおおおぉぉぉぉぉ・・・・!!」

 半漁人は絶望のあまり、もう何も言い返せず、最後には大声で大粒の涙を出しながら泣いてしまった。
 永遠の苦しみをこれから味わうのが、怖いのか、それとも元の姿に戻れない悲しみなのか、半漁人はただ泣くしかなかった・・・。
 鬼太郎は、そんな半漁人に背中を向けると、カランコロンと下駄の音を立てて、
 真紅と共に、再びあてのない旅に出て行った。

 そんな中、鬼太郎は真紅に話しかけた。

鬼太郎
「真紅、怒らないで聞いてくれるかい?」

真紅
「あら、何かしら?」

鬼太郎
「君と僕がメイドになり済ましていたときに、言わなかったけどさ・・・君のあの時の姿は結構、可愛かったよ」

真紅
「なっ・・・!」

 鬼太郎の言葉に、真紅は耳まで顔を真っ赤にする。
 実は内緒だが、真紅はあの姿で居るのが嫌で嫌で仕方が無かった。
 あの姿になった直後に、みんなからはクスクスと笑われ(蒼星石、目玉おやじ、雛苺、鬼太郎は除く)、挙句の果てには水銀燈にその姿を見られてバカにされる程の屈辱を味わっていたのだ。
 忘れもしないあの時のことを思い出し、恥ずかしさと照れさで真紅は顔を俯いた。
 鬼太郎は、そんな彼女が心配になり、「大丈夫かい?」と声をかけるが・・・
 いきなり真紅が顔をあげて、キッと鬼太郎を睨むと・・・

   パチン!!

 鬼太郎の頬をひっぱたいた。
 その顔には目じりに涙が溜まり、タコがゆであがるほどの湯気が上がり、顔はかなり真っ赤に染まっていた。

鬼太郎
「痛っ!、何すんのさ?」

真紅
「だ、黙りなさい!!。いい!?鬼太郎!、大体今回は貴方が隙を見せたのが原因なのよ!?。
 それに、主人である私を差し置いて旅に出るなんてどういうつもり!?。
 まったく!、これだから貴方は情けないのよ!」

鬼太郎
「え?、い、いきなり何で怒ってるのさ?」

真紅
「まだ分からないの!?、今度という今度は・・・」

 と、鬼太郎は目をパチクリさせながら真紅の説教を聞いた。
 それはもう、小一時間ほど続き、歩きながら「はい、分かってるよ」と答えるだけだが、まだ真紅の説教は続く・・・。
 その説教に鬼太郎は苦笑しながら、心の中で「あぁ、僕ののんびりとした旅が終わったなぁ・・・」としみじみに思った。
 しかし、真紅は怒った顔ではなく、本心は、鬼太郎と共に旅に出るのがかなり嬉しいのが表情が出ており、頬を赤くしながら、頬笑みながら説教していた。
 鬼太郎は、知る由もなく、とほほ・・・と嘆いた。

  ゲッゲッゲッゲッゲッゲッゲッゲッ……

 鬼太郎たちを虫たちの「ゲゲゲの歌」が、ガミガミとうるさい薔薇乙女の第五ドールの説教と共に、あばら家にいつまでも響いていた。

    おわり