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 『ある魔法使いの話』
 
 地の文:男性。物語の語り手。
 A:男性。ただのアニメショップ店員だが、どこか奇妙な言い回しをする。
 B:男性。いわゆる魔法使い。もしかしたら本当に魔法使いかもしれない。
 
 
 その男は、町外れの小さなアニメショップでフィギュアを買い漁っていた。
 ずんぐりとした腹、脂ぎった指先、疲れきったような細い瞳。
 その容貌から、僕はその男の年齢を30代半ばと予想した。
 計ったかのようなタイミングで、レジの店員が男に声をかける。
 
 A01「お兄さんはおいくつですか?」
 B01「何歳になったか忘れたよ。でも18歳は超えてるね」
 A02「お兄さんはどこから来たんですか?」
 B02「へその奥からさ」
 A03「お兄さんはどこへ行くんですか?」
 B03「あっちへ行くよ」
 A04「連れて行くのはこの子たちだけにしてくださいね」
 
 店員が手渡したアニメ柄の紙袋を両手に、男は店を出た。
-僕が男に追いつくと、彼は道路の真ん中にいて、3,4人の幼女に見守られながら六芒星を描いて
-いた。
+僕が男に追いつくと、彼は道路の真ん中にいて、3,4人の幼女に見守られながら六芒星を描いていた。
 
 B04「これから二次元への扉が開くから見ていなさい、見ていなさい」
 
 男はそう言うと、六芒星の周りをぐるぐると回りだした。
 
 B05「見ていなさい、見ていなさい、いいね」
 
 怖がっているようにも見えた。楽しんでいるようにも見えた。
 やがて男がぴたりと立ち止まった。男は六芒星の真ん中に先ほどの紙袋を2つ置いて、言った。
 
 B06「彼女たちが連れて行ってくれる。今見せてあげる。今見せてあげる」
 
 男は『もってけ!セーラー服』を歌いながら、またぐるぐると回りだした。
 僕は二次元への扉が見たいから、幼女たちと一緒にいつまでも男を見守っていた。
 
 突然トラックが現れて男を跳ね飛ばした。
 
 男はフィギュアたちとともに、満ち足りた顔で遠くへ消えていった。
 二次元への扉が開かれることはなかった。

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