ハルヒと親父 @ wiki
嫁いだ日
最終更新:
haruhioyaji
-
view
- オヤジ
- 行っちまったか。
- ハルヒ母
- ええ。
- オヤジ
- 騒がしい奴らだったな。
- ハルヒ母
- いなくなるとさびしくなりますね。
- オヤジ
- 自分たちの住処を見つけて、越していっただけだぞ、母さん。
- ハルヒ母
- ええ。私たちもそうして一人立ちしたのよ。
- オヤジ
- 今のあいつらよりは、歳くってたけどな。
- ハルヒ母
- 今ごろになって、お父さんの気持ちが少し分かった気がするの。
- オヤジ
- どの気持ちだ?
- ハルヒ母
- 「惜しくってたまらん。美人に育ちすぎたぞ」って。
- オヤジ
- そんなこと言ったのか、おれ。
- ハルヒ母
- ええ。
- オヤジ
- 馬鹿オヤジ、ここに極まれリ、だな。
- ハルヒ母
- そういうところも好きですよ。
- オヤジ
- あいつらが出ていったら、犬でも飼おうかと思ったんだけどな。
- ハルヒ母
- そうなの?
- オヤジ
- だが、やめた。こんな気持ちは一度でたくさんだ。
- ハルヒ母
- 膝にします?それとも胸?
- オヤジ
- どちらも、ものすごく魅力的だけどな、今は泣きたくない。
- ハルヒ母
- 我慢してるの?
- オヤジ
- 痩せ我慢は、オヤジのチャームポイントなんだ。
- ハルヒ母
- じゃあ、腕を貸して下さい。
- オヤジ
- こうか?
- ハルヒ母
- ええ。これくらいの近さならいいでしょ?
- オヤジ
- ああ。
- ハルヒ母
- 今のお父さんの気持ち、一緒に持っていたいの。
- オヤジ
- 天使が泣いてるみたいに見える。
- ハルヒ母
- ただの母親です。
- オヤジ
- じゃあ礼を言う。いい娘に育った。ありがとう。
- ハルヒ母
- こちらこそ。
- オヤジ
- ちょっと思ったのとは違ったけどな。
- ハルヒ母
- そこも含めて、いい娘に育ったわ。
- オヤジ
- なあ、母さん。
- ハルヒ母
- なんですか、お父さん。
- オヤジ
- あいつら、うまくやりやがったな。
- ハルヒ母
- ふふ、そうね。
- オヤジ
- 普通は、もっとしくじったり、のたうち回ったり、妥協したりするもんじゃないのか。
- ハルヒ母
- そうでしょうね。
- オヤジ
- 15歳で出会った奴と一生添い遂げるっていうんだぞ、正気の沙汰じゃない。
- ハルヒ母
- ええ。
- オヤジ
- 人間は変わる、否応無しに、それも、確実に、だ。
- ハルヒ母
- それを、一人っきりで知る人もいれば、二人でいっしょに学ぶ人もいるわ。
- オヤジ
- 俺は一人で知ったぞ。その時、傍らには誰もいなかった。
- ハルヒ母
- 私はつれあいをなくした途端に知りました。
- オヤジ
- あいつらは、幸せ者だよ。
- ハルヒ母
- そうね。二人ともそれを知ってるわ。
- オヤジ
- やつらに乾杯しとくか。
- ハルヒ母
- そして私たちにも。
- オヤジ
- 理由を聞いとこう。
- ハルヒ母
- いろいろしくじったけど、わたしたちも結構うまくやったと思わない?
- オヤジ
- バカ娘の笑ってる顔が、その証拠か。それとも、ご褒美か? いずれにせよ、悪くはないか。
- ハルヒ母
- ええ。悪くないわ。