ハルヒと親父 @ wiki
天抜きの日
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haruhioyaji
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- ハルヒ
- なによ、また蕎麦屋? もっと若い娘の食欲を考慮に入れなさいよ!
- オヤジ
- うるさい。おごりだ。だまって食え。
- ハルヒ
- 娘が親と食事するのに、なにが「おごり」よ。まあ、ここのお蕎麦はおいしいから、我慢してあげるけど。
- オヤジ
- お前の食欲は「若い娘」の範疇を超えてる。キョンのサイフも、よく自然発火しないもんだ。こないだなんか、うつむいてやがるから、思わず小遣いをやっちまった。
- ハルヒ
- そんなお金があるなら直接あたしに渡しなさいよ。
- オヤジ
- いや、お米券だけどな。
- ハルヒ
- そういう回りくどい冗談、いい加減にやめとかないと、老後はひとりぼっちよ。
- オヤジ
- そしたらキョンの奴、今度は自分のつま先を見つめ出してな。
- ハルヒ
- いじめたら承知しないっていつも言ってるでしょ!
- オヤジ
- 何度も言うが愛情表現なんだ。
- ハルヒ
- 何度も言わなきゃいけないような愛情表現は、根本的に間違ってんのよ!
- オヤジ
- で、何食うんだ?
- ハルヒ
- あたし、天ざる。天婦羅の日だって言うしね。
- オヤジ
- おれは、天抜きだ。
- ハルヒ
- ここの天婦羅食べないでどうすんのよ? タイトルを読み直しなさい!
- オヤジ
- バカ娘、天抜きというのは、「天麩羅蕎麦(てんぷらそば)の蕎麦抜き」のことだ。
- ハルヒ
- はあ?
- オヤジ
- つまり汁の中に天婦羅だけが浮いているのが出てくる。そして、これを肴に酒を飲む。酒飲みは、酒を飲んでる最中には、蕎麦といえど炭水化物を取りたくない。なじみになると「天抜き」を頼むことになる。酒を飲み終えたら、盛り蕎麦を頼み、残ったつゆにつけて一席の締めとするのがスノッブだ。
- ハルヒ
- スノッブって何よ?
- オヤジ
- 良い意味にとれば「粋」、悪い意味にとれば「粋がっては見たが、結局のところ俗物」だ。
- ハルヒ
- 親父の場合は、間違いなく後者ね。そんなに蕎麦がいらないなら、天婦羅屋で飲んでくれば?
- オヤジ
- 天婦羅屋のてんぷらと、蕎麦屋のてんぷらは、ものがちがう。具体的にはころもにつかう小麦粉が違う。天婦羅屋は素材を生かすために薄力粉を使うが、蕎麦屋は熱いつゆに合うように強力粉を使う。
- ハルヒ
- ごちゃごちゃ言ってる間に蕎麦が来たわよ。あんたのは「天抜き」だけど。
- オヤジ
- ああ確かに、いつ食べても、うまいな。
- ハルヒ
- バカ親父、あんた、人の天婦羅を!
- オヤジ
- 娘よ、食卓の上は、世界のどこでも戦場だ。決して気を抜くな。
- ハルヒ
- 人の天婦羅、食べといて、訳の分からん説教するな! こうなったら!
- オヤジ
- こらこら、人の酒を飲むなとは言わんが、徳利をラッパ飲みするな。せめて猪口を使え。下品というより、面白いぞ。
- ハルヒ
- ぷはー。お、お返しよ。
- オヤジ
- 冗談みたいな飲み方してると、冗談じゃなく回るぞ。
- ハルヒ
- うっさい! 食べ直しよ。おじさん、もうひとつ、天ざる、お願い。
- オヤジ
- おまえ、この蕎麦だけになった蕎麦どうする?
- ハルヒ
- あんたの「天抜き」に投下すればいいでしょ。盛り蕎麦頼む手間が省けるわ。ういっく。
- オヤジ
- やれやれ。こいつ、酒癖悪いからな。誰に似たんだか。今のうちにキョンに電話して、あいつに押し付けよう。……ああ、キョンか? おれだ、親父だ。いま@@って蕎麦屋にいるんだが、そうだ、駅前の。ハルヒが酒飲んで暴れ出した。なんとかしろ。代金は俺にまわしとけばいい。好きな物食っていいぞ。
- ハルヒ
- こら親父!どこに電話してんのよ!
- オヤジ
- いつものところだ。すぐ飛んでくるそうだ。
- ハルヒ
- いつも酔っぱらって暴れてるみたいなこと言うなあ!
- オヤジ
- おい、キョン、こっちだ。
- キョン
- 遅くなりました。……ハルヒ!
- ハルヒ
- なによ!あたしは何も悪いことしてないわよ!
- キョン
- 親父さん、いつもすみません。ハルヒには、よく言っときますから。
- オヤジ
- 若いうちだからいいが、これからのことを考えるとな。キョン、ちゃんと面倒みてやれ。
- ハルヒ
- あんたたち、台詞が逆でしょうが!
- オヤジ&キョン
- おまえのことを言ってるんだ、ハルヒ。
- ハルヒ
- テーマはあたしのことかもしれないけど、あんたは親で、あんたは彼氏でしょ!
- オヤジ&キョン
- だから、なんだ?
- ハルヒ
- 親なんだから叱るのはあんたの役目でしょ。で、あんたは彼氏なんだから、あたしを甘やかしなさい!
- オヤジ&キョン
- これ以上!?どうやって!?
- ハルヒ
- どうして、いちいちハモるのよ!!