ハルヒと親父 @ wiki
涼宮ハルヒの特訓
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haruhioyaji
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- 母さん
- どうしたの!ハル、その格好?
- ハルヒ
- 知らないおっさんに捕まりそうになって、気持ち悪いから、頭突きして逃げてきたわ。あと、おっさんの車のナンバー、覚えてるわ!
- 母さん
- まあ、大変。ケガはない?どこか痛いところは?
- ハルヒ
- ない。おでこが少し痛いけど。
- 母さん
- どれどれ、ええ、大丈夫みたいね。無事でよかったわ。でも、どうして頭突きにしたの?
- ハルヒ
- 最初ぼかぼか殴ってやったんだけど、そんな小さな手じゃきかないな、って言われたんで、もっと重くて大きなもの、と思ってアタマを思いついたの。
- 母さん
- まあ、そうなの。……んー、ハル、まだ元気あるかしら?
- ハルヒ
- もちろん、あるわ!
- 母さん
- じゃ、ちょっと『特訓』しましょう。お庭にいらっしゃい。母さん、そのおじさんの車のナンバー、警察に電話しとくから。
- ハルヒ
- ね、ね、『特訓』って何するの? 悪いおっさんの倒し方? それでうちのオヤジも倒せる?
- 母さん
- というか、その前段階をね。はい、母さんが腕を出すから、手首のところをぎゅっと捕まえて。そう両手でね、放しちゃ駄目よ。
- ハルヒ
- うん!
- 母さん
- ……でも、ほら、こうすると簡単にはずれちゃうの。
- ハルヒ
- えっ!母さん、今どうやったの? 何をやったの?
- 母さん
- もう一回やりましょう。はい、手首を捕まえて。放しちゃ駄目よ。力いっぱいにね。
- ハルヒ
- うん!
- 母さん
- ……はい、はずれました♪
- ハルヒ
- うー、母さん、なんかズルしてない?
- 母さん
- ズルしてないわ。ハルにもできるわよ。やってみる?
- ハルヒ
- うん、やる!
- 母さん
- じゃあ、母さんがハルの手首を捕まえるわ。外してみて。
- ハルヒ
- ……う、動かない。
- 母さん
- んー、そうね。ハルはどうしたいの?
- ハルヒ
- さっき母さんがやってたみたいに、こう手をパーにして、ひじを曲げると、外れるんでしょ?
- 母さん
- そうね。そうすると手首を握っている相手も無理な角度になるわね。でも、相手が力の強い人だったら、どうする?
- ハルヒ
- うー。
- 母さん
- 母さんが、やってたの、よおく思い出してみて。
- ハルヒ
- うーん……あ、こう……で、こうだ!
- 母さん
- はい、外れた。上手よ、ハル。
- ハルヒ
- 母さん、も一回、もう一回やらせて。
- 母さん
- はいはい。……さあ、外してみて。
- ハルヒ
- こうで、こうして、で、こうだ! 外れた!
- 母さん
- わかった? どうやったの?
- ハルヒ
- 手首つかまれて動けないから、あたしの方が半歩前に出たの! そしたら、ひじを曲げることができるわ!
- 母さん
- その通り。よく自分で気付いたね、えらいわ、ハル。
- ハルヒ
- えへへ。
- 母さん
- 相手に捕まえられたり押さえられたりして動けなくなったら、まだ動かせるところをつかうの。体の向きを変えるとかもいいわね。足は腕より何倍も強いから。じゃあ、今のが分かったら、次のもできるかしら? 母さんが後ろからハルに抱き付くわ。腕もいっしょに上から押さえつけてるから、両腕は動かせないわね。さて、動かせるのは?
- ハルヒ
- うーんと、頭と足!
- 母さん
- そうね。じゃあ、まずは足を使ってみて。
- ハルヒ
- んー、母さんの足、踏んづけてもいいの?
- 母さん
- 痛いかしら。でも、それは良い案ね。採用しましょう。他には?
- ハルヒ
- うーんと、うーんと。
- 母さん
- じゃあ、ヒント。片足だけを使ってみて。
- ハルヒ
- 片足? 後ろはさっき踏みつけるのにつかったから、前だ。あ、あれ。
- 母さん
- そう、片足を前に踏み出すの。足の力は腕より強いと言ったでしょ? 力の弱い人だと、それだけで体を捕まえてる腕がほどけるわ。ほどけなくても、隙間が空くかも。そしたら、くるっとターンできるでしょ。ターンするときは、自分の肘の位置を意識してね。肘をあてて、うんと腰を落とすの。足の位置は変えずに、体当たりするイメージね。うん、うまい、うまい。
- 母さん
- 今度は母さんの片手でハルの右手をひっぱるわね。
- ハルヒ
- う……ひきずられちゃう。
- 母さん
- もう一回やりましょう。引っ張られたら腰を少し落としてみて。
- ハルヒ
- あっ、ずっと耐えられる。
- 母さん
- 綱引きでも使う手ね。上半身が持って行かれた後だと駄目よ。
- ハルヒ
- うん。
- 母さん
- で、ハルが簡単に引っ張って来れないとわかると、相手はもっと強い力で引くわね。
- ハルヒ
- うん。
- 母さん
- どうしたらいいかわかる?
- ハルヒ
- んー。
- 母さん
- こうするの。
- ハルヒ
- わっ。
- 母さん
- ごめんね、大丈夫?
- ハルヒ
- いったーい。びっくりしたわ。
- 母さん
- おもいっきり引っ張ってる時に、急に相手が力を抜くと反応できないでしょ?
- ハルヒ
- そうね。あ、そうか!
- 母さん
- わかったみたいね?
- ハルヒ
- つまり「反対」をやればいいのね? 相手がひっぱってる時は、相手と同じように引っ張るんじゃなくて、反対に引っ張らない、力を抜く・・・押してもいい?
- 母さん
- ええ、押す場合もあるわ。でも、ハルはもっと大事なことが分かったみたいね。
- ハルヒ
- うん、そうかも!
- 母さん
- 今みたいな技は、それはもうたくさんあるけど、基本はみんな同じ。今、ハルが言ったことね。それから、こんな風な技は、ハルよりずっと大きな力の強い相手に効果があるわ。もちろん、うまくやれば、だけどね。
- ハルヒ
- そうなの?
- 母さん
- だって、相手の力を、こちらの好きなように利用するんだもの。ちょっと難しい?
- ハルヒ
- うーん。
- 母さん
- ハルはいま「反対」と言ったわね。「反対」が効果があるのは、それまでと全然違った動きだから、相手が反応できないのよね?
- ハルヒ
- うん。
- 母さん
- だから、最初は「反対の反対」をやるの。相手を押して倒す場合には、最初は引っ張る。相手を引っ張って倒すときは、最初は押す。
- ハルヒ
- うん。
- 母さん
- ちょっとやってみる?
- ハルヒ
- うん!
- オヤジ
- おまえら、こんな暗くなるまで、何やってんだ?
- 母さん
- おかえりなさい。おとうさん。
- ハルヒ
- あ、オヤジ、おかえり。
- オヤジ
- ハルヒ、「おとうさん」って言えよ。
- ハルヒ
- やだ。恥ずかしいもん。
- オヤジ
- オヤジの方が恥ずかしいぞ。まあ、いいや。冷えてきたぞ、中に入らないか?
- ハルヒ
- そのまえに、ちょっと腕をとって引っ張ってみて。
- オヤジ
- はあ?俺を投げようってのか?
- ハルヒ
- うん。
- オヤジ
- うん、じゃないだろ。あっさり手のうち明かしてどうするんだ?
- ハルヒ
- じゃ、ううん。
- オヤジ
- やれやれ。……ほら、これでいいのか?
- ハルヒ
- ん!
- オヤジ
- っひょい、と。
- ハルヒ
- バカオヤジ! なんで投げられる前に飛ぶのよ?
- オヤジ
- 正確には投げられた方向に飛んでるんだけどな。……親の威信だ
- ハルヒ
- やっぱりオヤジは、いじわるオヤジよ!もう、中入る!
- オヤジ
- ……なんだってんだ?
- 母さん
- 今日、ちょっと怖いおじさんに捕まえられそうになって、頭突きして逃げてたって。
- オヤジ
- おいおい。
- 母さん
- それで、トラウマにならないように、ちょっと体さばきの練習をしてたの。
- オヤジ
- どこのどいつだ、そのバカは?
- 母さん
- ハルが車のナンバー覚えていたので警察に電話しました。
- オヤジ
- こうしちゃおれん。そのナンバー教えてくれ。先回りして、焼き入れてくる。
- 母さん
- 忘れました。
- オヤジ
- 母さんが一度覚えたことを忘れるわけがないだろう。
- 母さん
- どうやって車のナンバーだけで、相手を特定するの?
- オヤジ
- 造作もない。@@のふりをして陸運局に電話をすればいいんだ。名前と住所が分かれば、あとはどうとでも。
- 母さん
- やっぱり、忘れました。お父さん、ハルのことだと見境いがないから。
- オヤジ
- 娘を持つ父親として、当然の感情だぞ。
- 母さん
- 感情は当然でも、行動がちょっと。
- 母さん
- ……ということがあってね。まだハルが小学校2、3年生だったと思うわ。お父さん、行き場のない感情を、ハルを鍛えることに振り向けちゃったのね。それで、殴る蹴るの得意な娘に育ってしまって。
- キョン
- はあ。
- 母さん
- わたしが教えたのは古風で地味な技ばっかりだけれど、お父さんと一緒で無駄に大技が好きで……。お父さんは相手を大技に持ちこむ悪知恵があるけれど、ハルは変にまっすぐというか、ちょっと心配ね。
- ハルヒ
- ちょっと母さん、キョンに何を話してるのよ!?
- オヤジ
- そうだそうだ。母さんばかりキョンと話してずるいぞ。
- ハルヒ
- そういう話をしてるんじゃない!
- オヤジ
- だそうだ。だが、母さんの『古風』なやつの中にも危ない技がたくさんあるんだぞ。
- ハルヒ
- そういう話をしてるんでもない!