ハルヒと親父 @ wiki

ロール・プレイング その3

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haruhioyaji

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オヤジ
あいつらは?
キョン
ええ、火に当たって濡れた体を乾かしてます。親父さんそれは?
オヤジ
ん?ああ、タロットだ。おれたちの世界で言うと、マルセイユ版って奴だ。酒場でやたら絡んでくる奴がいてな、ちょっとした賭けをして巻き上げた。
キョン
大丈夫ですか? 占い師なら、商売あがったりじゃ?
オヤジ
残念だが、タロットは占いもカバラも無関係のあとからのこじつけ、って結論が出てる。ダメットって学者が分厚い本を書いててな。今度貸してやる。
キョン
は、はい。
オヤジ
で、どう思う?
キョン
何がです?
オヤジ
とぼけるな。おまえが気付いてないはずがない。
キョン
……。
オヤジ
じゃあ聞くが、さっき斬り方が分かったとか言ってたが、その時「あいつ」の声はしたか?
キョン
……親父さん、実は……。
オヤジ
ちょっと待て。「実は」ってんなら、おれの方が先に話すことがある。いつだったか、おまえさんたちが会う前ってのは確かだが、バカ娘の「世界」に引きずりこまれたことがある。幼児画の一色に塗りつぶした背景みたいに、のっぺりした退屈極まりない世界だ。一喝して二度寝を決めこんだら、朝には元に戻れた。ここまでで、何か言いたいことはあるか?
キョン
……。
オヤジ
その様子だと、おまえさんも体験済みってことだな。でないと話が進まん。おまえがその剣を引きぬく前、あいつの声が聞こえたと言ったな。おれの足元に雷を落としたのもあいつだろう。だから、ここはあいつの世界、バカ娘がゲームマスターだと踏んだ。だが、今もって、ゲームの目的、それに世界観、そいつが見えてこない。見込みが甘かったか?
キョン
いえ。
オヤジ
バカ親父の体験談は、残念ながらここまでだ。おまえの方はまだ話すことがありそうだな。第2の可能性、もしくは体験か? 話せないことなら話すなよ。知っての通り、おれは口が軽い。秘密を共有する相手には向かん。おれの方は、おまえがそいつを知っている、そのことが確認できただけで十分だ。 
キョン
いつか……話します。親父さんにも、ハルヒにも。
オヤジ
結構。では、それまで生き延びる算段をするか。あと、あのバカを取り戻す算段もな。

オヤジ
で、改めて聞くが、おまえら、何者なんだ?
キョン
親父さん、話を聞くときは、次から突き落とす前に。
兵士A
大事な勅命だ。おまえたちみたいなのに話せるか!
オヤジ
と、まあ、こんな感じだろ? だが、こいつらは一度痛い目にあってる。そしておれがどういう人間かも、本能のところで理解してる。こっちの交渉のカードはすでにオープンだ。
キョン
一言で言うと、脅迫ですね。
オヤジ
そうとも言う。だが、こいつら、ひときわ分かりが悪いようだ。
兵士A
ま、待て! おまえたち、そんなことをして無事に済むと思うか?
オヤジ
どちらかといえば、こっちのセリフだ。今度は服だけ残して首だけを斬ろうと思うがどうする?
兵士B
……やってみろ。
兵士A
勅命は絶対だ。
オヤジ
ほう。震えてるが、セリフは男前だ。こういうとき役人は必ずゲロするもんだが、カブシキカイシャの社畜は秘密を抱いて自殺するのが通例だ。どうしてだと思う?
キョン
どうしてですか?
オヤジ
ヤクザと同じだ。カイシャは残った家族の面倒を見る。役所は懲戒免職ってことで退職金も返還させる。でないと、議会と会計検査に言い訳がたたん。もっともアメリカだと株主がうるさいからな。まあ、最近は、さほど変わらんか。
兵士B
なんの話か分からんが、我々は先を急いでる。
キョン
……親父さん。
オヤジ
ああ、おれも鬼じゃない。おれたちは、このでかい河を渡ろうとしてた。おまえらの行き先がその先なら、乗って行け。正直言うとだ、おれたちは地理に不案内だ。渡り切ったところで別れりゃ、あんたらの行き先はわからん。こんなところでどうだ、キョン?
キョン
というか、二人はどうです?
兵士B
かまわん。
兵士A
その、また突き落としたりしなければ。
オヤジ
よし承知した。が、気が変わった。
キョン
ええっ? 親父さん?
オヤジ
かわいい婿には旅をさせろだ。キョン、二手に分かれるぞ。
キョン
オヤジ
おまえ一人放りだすのもどうかと思ってたんでな。こんなやつらでも、この世界の事情には明るい。なにしろおれたちは、この世界の地理もわからんからな。こいつらと行けるところまで行け。おれの当たらない予感だと、こいつらの行く手に確実に邪魔が入る。おれの方を見るな。もっと陰険な奴だ。おまえがいっしょに行けば、何とかなるだろ。その後は、こいつらがおまえを認めるか、どうかだが……まあ、ふられたら、この河のとこまで戻って来い。ここで合流だ。そいつらと一緒に行っても、目的を達したら、どうせ王のところに戻るんだろう? だったら、どこかで合流すればいい。心配するな、おれたちは目立つ。どこにいたって、お互いがどこにいるか、風の噂が伝えてくれる。
キョン
親父さんはこれから?
オヤジ
ぶっちゃけ、こいつらがここまで来た道を、逆に行こうかとおもってる。その先に、こいつらの王様がいるんだろう? 道ってのは、都に向かうほうが分かりやすい。こいつらの王様がどの程度のものか知らんが、この手の世界じゃ、どっかの王の承認がいる。王同士は姻戚関係やなんかでネットワークがある。ダメなら、他の王様をあたるさ。どうだ、このプラン? それとも役割を逆にするか?
キョン
それ無理!
オヤジ
そういうことだ。おれは見るからにいかがわしいが、はったりが効く。偉いさん相手の駆け引きは、まあまあ得意だ。キョン、おまえさんは、まあ悪人には見えん。こいつらが信用するとしたら、突き落としたおれより、助けたおまえだろう。
キョン
でも、それで、親父さんに危険はないんですか?
オヤジ
わからん。なにしろゲームの世界観はおろか、目的だってまだ不明だからな。プロローグが長すぎるぞ、まったく。まあ、相手が人語を解する存在なら、スフィンクスだろうがメフィストファレスだろうが、口だけで勝つ自信がある。通じない奴は拳で語るしかないな。悪知恵もこの際、リミッターを外しとこう。まあ、おまえの倍以上生きてるんだ。あんまり心配するな。……だから、心配なんだって、顔するな。


















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