ハルヒと親父 @ wiki
一人旅に必要な事 elself
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haruhioyaji
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あいつとケンカした。
大きなケンカは、はじめてじゃない。
お互い謝るのに半年かかった事だってある。
お互い謝るのに半年かかった事だってある。
どこかであたしは、あたしたちは、高をくくっていた。
小さなケンカはしない日がなかった。悪く言えば「ケンカ馴れ」していた。
そのせいで「第一歩」が遅れた。
気付いたら、手遅れになっていた。
小さなケンカはしない日がなかった。悪く言えば「ケンカ馴れ」していた。
そのせいで「第一歩」が遅れた。
気付いたら、手遅れになっていた。
部屋の隅で過ごす日が多くなった。
少しの間だったけど、あいつと暮らした部屋だった。
少しの間だったけど、あいつと暮らした部屋だった。
いつの間にか、季節が幾つも流れて行った。
「ここを開けろ、バカ娘」
「な、なんの用よ!」
「笑いに来た」
「か、帰りなさい!!」
「あいつ、結婚するらしいな」
「……」
「出欠の確認ハガキが届かないんで、うちに問い合わせがあった」
「……あ、あのバカ」
「バカはおまえだ。なんで黙ってた?」
「絶対、余計なこと、するから!」
「そこまで暇じゃない。やるのは、おまえだ」
「は? 何を言って……って、ちょ、ちょっと!」
「鍵を壊した。焼き切らなかっただけ有り難く思え」
「思えるか!」
「バカでも実の娘だ。選択肢は与えてやる。下にバイクがある。それに乗っておまえが行くか、おれが行くかだ。どうする?」
「バカ親父! あんた、人の結婚式をなんだと……」
「来て欲しくないなら、招待状なんか出さないし、実家に連絡だってくれないわ」
「母さんまで!?」
「お互い、伝えたいことが、まだあるんじゃなくて?」
「そんな、だって、どんな顔で会えばいいか、第一会っていいのか、わかんないよ!」
「……母さん、こいつ一発、殴っていいか?」
「ええ。でも記憶がなくならない程度に加減してあげてね」
「意識だって失わせるもんか」
親父の拳が近づいてきて、あたしは思わず目をつぶった。
けれど、それはいつまでも届かずに、あたしが目を開けたところを狙いすますように、拳の中から中指が跳ねた。デコピン?
「い、痛っ!」
「当たり前だ。さあ、行け」
「……今から行っても、間に合うかどうか……」
「やかましい! 無くしたくないものが、あるなら走れ。手が届くと、信じて走れ。それもできないなら、人なんか好きになるな!」
親父の手から、小さな光る物が放物線を描いて、あたしの胸に当たり、足下に落ちた。
「でっかい貸しにしとく。ぜったい取り立てるからな」
「な、なんの用よ!」
「笑いに来た」
「か、帰りなさい!!」
「あいつ、結婚するらしいな」
「……」
「出欠の確認ハガキが届かないんで、うちに問い合わせがあった」
「……あ、あのバカ」
「バカはおまえだ。なんで黙ってた?」
「絶対、余計なこと、するから!」
「そこまで暇じゃない。やるのは、おまえだ」
「は? 何を言って……って、ちょ、ちょっと!」
「鍵を壊した。焼き切らなかっただけ有り難く思え」
「思えるか!」
「バカでも実の娘だ。選択肢は与えてやる。下にバイクがある。それに乗っておまえが行くか、おれが行くかだ。どうする?」
「バカ親父! あんた、人の結婚式をなんだと……」
「来て欲しくないなら、招待状なんか出さないし、実家に連絡だってくれないわ」
「母さんまで!?」
「お互い、伝えたいことが、まだあるんじゃなくて?」
「そんな、だって、どんな顔で会えばいいか、第一会っていいのか、わかんないよ!」
「……母さん、こいつ一発、殴っていいか?」
「ええ。でも記憶がなくならない程度に加減してあげてね」
「意識だって失わせるもんか」
親父の拳が近づいてきて、あたしは思わず目をつぶった。
けれど、それはいつまでも届かずに、あたしが目を開けたところを狙いすますように、拳の中から中指が跳ねた。デコピン?
「い、痛っ!」
「当たり前だ。さあ、行け」
「……今から行っても、間に合うかどうか……」
「やかましい! 無くしたくないものが、あるなら走れ。手が届くと、信じて走れ。それもできないなら、人なんか好きになるな!」
親父の手から、小さな光る物が放物線を描いて、あたしの胸に当たり、足下に落ちた。
「でっかい貸しにしとく。ぜったい取り立てるからな」
あたしは黙ってバイクのキーを拾って、そのまま外に出た。二階の廊下から見下ろすと、軽トラックから降ろしたてのスーパー・カブがとまっていた。
廊下の手すりを飛び越え、飛び降りる。
アスファルトにたどり着くまでの間、花婿を奪還しに式場に乗り込む女の格好じゃないなと思った。どんな格好をすればいいのか、まるで分からなかったけど。
廊下の手すりを飛び越え、飛び降りる。
アスファルトにたどり着くまでの間、花婿を奪還しに式場に乗り込む女の格好じゃないなと思った。どんな格好をすればいいのか、まるで分からなかったけど。
イグニッション・キーを回す。クラッチ・レバーをはなすとギアがつながり、撃ち出されるようにバイクは走り出した。
あたしとあいつの間に、今もまだ、何かがつながっているんだろうか?
あたしとあいつの間に、今もまだ、何かがつながっているんだろうか?
スーパー・カブは、教会の入り口の階段にぶつかる寸前で止まった。
ずっとアクセルを開け放ったまま、ここまでたどり着いた。最後まで何かにぶつからなかったのが不思議なくらい。
ずっとアクセルを開け放ったまま、ここまでたどり着いた。最後まで何かにぶつからなかったのが不思議なくらい。
奇跡を感謝するには良い場所なのだろう。でも、あたしには、やることがあった。
階段を上り、教会の分厚い扉を押し開いた。
後ろの席の人たちが、こちらを振り返った。ちょうど神様の前で誓いの儀式が進められていた。
どうすればいい? なにをすればいいの?
気付いたら叫んでた。
「キョーーン!!」
「ハ、ハルヒ、おまえ?」
「来るはずじゃなかったわ。来たくなんてなかった! 二度と会いたくなかった。二度とあんたの前に現れまいと思ってた。心にもない祝いの言葉でも、言ってやろうと思ってたけど、あんたを見たら、もうダメ」
「ハルヒ……」
「力づく? それもダメ。じゃあ、どうするの、どうすんのよ!? いつも、あんたが居た。あんたが居たら、出せない答えなんてなかった。だから! だから……さよならって言わなきゃ、言わなきゃって……」
「わるい。償えるものなら償う。できっこないだろうけど……あの、ばか、放っておけるかよ!」
「バカキョン!! あんたなんか、あんたなんか、大好き!大好き!大好き!!」
「ああ、おれもだ、このバカハルヒ! おまえってやつは!」
「キョン、あんた、なんでこっち来るのよ! あんた、結婚は!?」
「むちゃくちゃにしといてよく言う! おまえみたいなバカ、危なかしくってあぶなかしくって、放って……」
「バカキョン!! これ以上近付いたら!!」
「近付いたら何だ!?」
「近付いたら、あんたのこと、あんたのこと、好きになるんだからね! ううん、ずっと好き!! 嫌いになんかなれるわけないでしょ!」
「むちゃくちゃだ! おまえ、何言ってるか、何やってるか、絶対分かってないだろ!?」
「わかるわけないでしょ!! あんたしか目に入んないし、あんたのことしか考えられないわよ!! はやく、なんとかしなさい、バカキョン!!」
「これでいいか?」
「キョン?」
「抱きしめてやる。ずっとだ。ずっとこうしてやる」
「キョン? キョン!? キョン!!」
「来るはずじゃなかったわ。来たくなんてなかった! 二度と会いたくなかった。二度とあんたの前に現れまいと思ってた。心にもない祝いの言葉でも、言ってやろうと思ってたけど、あんたを見たら、もうダメ」
「ハルヒ……」
「力づく? それもダメ。じゃあ、どうするの、どうすんのよ!? いつも、あんたが居た。あんたが居たら、出せない答えなんてなかった。だから! だから……さよならって言わなきゃ、言わなきゃって……」
「わるい。償えるものなら償う。できっこないだろうけど……あの、ばか、放っておけるかよ!」
「バカキョン!! あんたなんか、あんたなんか、大好き!大好き!大好き!!」
「ああ、おれもだ、このバカハルヒ! おまえってやつは!」
「キョン、あんた、なんでこっち来るのよ! あんた、結婚は!?」
「むちゃくちゃにしといてよく言う! おまえみたいなバカ、危なかしくってあぶなかしくって、放って……」
「バカキョン!! これ以上近付いたら!!」
「近付いたら何だ!?」
「近付いたら、あんたのこと、あんたのこと、好きになるんだからね! ううん、ずっと好き!! 嫌いになんかなれるわけないでしょ!」
「むちゃくちゃだ! おまえ、何言ってるか、何やってるか、絶対分かってないだろ!?」
「わかるわけないでしょ!! あんたしか目に入んないし、あんたのことしか考えられないわよ!! はやく、なんとかしなさい、バカキョン!!」
「これでいいか?」
「キョン?」
「抱きしめてやる。ずっとだ。ずっとこうしてやる」
「キョン? キョン!? キョン!!」
「めんどくさいな、母さん」
「ふふ、そうですね」
「間に合うと思うか?」
「さあ、どうでしょう?」
「おかしいだろうが、母さん、おれはどうやら、間に合えばいいなって本気で思ってるみたいだ」
「おかしいですか?」
「おかしくないか?」
「おかしいかもしれないわね。……でも、さっきのハル、ちょっと格好良かったわ」
「最後だけな」
「ええ、最後だけ。……間に合うといいですね」
「ふふ、そうですね」
「間に合うと思うか?」
「さあ、どうでしょう?」
「おかしいだろうが、母さん、おれはどうやら、間に合えばいいなって本気で思ってるみたいだ」
「おかしいですか?」
「おかしくないか?」
「おかしいかもしれないわね。……でも、さっきのハル、ちょっと格好良かったわ」
「最後だけな」
「ええ、最後だけ。……間に合うといいですね」