ハルヒと親父 @ wiki

涼宮ハルヒの脱衣ー第1回お礼SS

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haruhioyaji

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「い、言い出したのは、おまえだからな」
とおれ、何を言ってる?
「わ、わかったわよ。別に……どうってことないわ」
 どうってこと、あるだろうが、その顔は?
「何よ?」
 やめろ、考え直せ。
「な、なんでもない……」
 そうじゃない! 何かあるだろ!? 
なんでもいい。部屋が寒いとか、風邪気味だとか、じいさんの遺言だとか、
学校に来る途中黒い猫に前を横切られたとか、なんかそういう、
それこそどーでもいい、断る理由が、だ。
「お、おまえ、さ、寒くないのか?」
「さ、寒いわけないでしょ! それがこれから服を脱ぐ人間に対して言うセリフ!?」
いや、まったく、そのとおり。って、だから、それ、既定事項かよ!
「ハルヒ!」
「ちょっと離して! あんたに脱がされるくらいなら!」
 おれはハルヒの腕を取り、引き寄せようとして失敗して、
それならと自分の方から近づいた。
 おれの上半身がこいつに覆いかぶさるようにぶつかる。
おれはこいつの腕を離し、かわりに背中に回した自分の腕をつかんだ。
「ちょっと、何すんの!」
「うるさい」
「ぬ、脱がすだけじゃ飽き足らず、襲おうってわけ? 上等よ!!」
「そうじゃない!」
 腕に少しだけ力を込める。
「そうじゃない。……バカなことするな」
「な、なにがバカよ!」
「簡単に見せていいものでも、見ていいものでもない」
「……」
「おれもむきになってた。謝る。だから……」
「……へえ、あんた、あたしのハダカ、見たくないんだ……」
「そうじゃなくて! 人の話、ちゃんと聞けよ」
「このお、アホバカエロキョン!」
 叫ぶなり、ハルヒは体を沈め、次に床を激しく踏んで、
全身の力を頭突きでおれのあごにぶつけ、見事おれの腕から脱出した。
「ぐおっ!」
「……あ、あたしが本気になったら、あんたなんかに指一本触れさせないわ!」
 おれは尻もちをつき、体中に走った痛みに耐えながら、何か唸った。
「……そ、そうかよ」
「な、何よ、自分だけ格好つけたつもり!? 人の気持ちも知らないで!!」
 「あ、あんたが悪いんだからね……」
 ハルヒの、ためらっていた右手が、
セーラー服のスカーフをつかむ。
 おれは目を上げていられず、思わず顔を伏せる。
 スカーフが、おれの視線の先に、床の上に落ちた。
 部屋は耳が痛くなるほど静かで、
自分の鼓動と布すれの音だけが聞こえる。
とても近くに……。
「罰よ」
ハルヒの両腕が、しゃがんでいるおれの肩に乗せられた。
首の後ろで交差し、二人の肩の距離を縮めて行く。
 二人の体が次第に近付いていき、これ以上進めなくなって……
ハルヒの腕から、いや全身から、何かが崩れ落ちるように力が抜けた。
おれは手をそえ、こいつの体を抱き抱えた。
でないと、床の上に倒れるか、あるいは、
そのままかき消えてしまうんじゃないかと思うくらい、
ハルヒの眼から光が、体から力が、消えちまっていた。
「ハルヒ……、おいハルヒ!」
「……聞こえてる。こんなに近くにいるんだから」
 その声は、どこかこの世でないところから響いているみたいに弱く遠かった。
「どうした?大丈夫だよな?」
「そういうときは大丈夫か?って聞くのよ。……大丈夫。
力は抜けちゃったけど、あんたが支えてくれたら、あたしは倒れないわ」
 聞きたいのはそういうことじゃない。
けれど、今、こいつの話をさえぎるなんてできない相談だった。
そんなことしたら、……いや、あり得ないことだと頭では分かっている。
だが、おれの体と心のあちこちが、警報を発してる。
「……確かに、今日のあたしはどうかしてる。
あんたのヘタレが感染(うつ)ったのかしらね。
……普段なら、こんなこと絶対言わないわ。
聞けるとしても、キョン、今日限りだって思いなさい。あたしは……」
「あたしは……あたしには、あんたが怖がってるのが分かる。
……正直に言うわ。あたしも同じ。でもね……」
「……ハルヒ?」
 頼むから黙るな。声を聞かせてくれ。
「……でもね、たとえ何があろうと、あたしは変わらないし、あんたも変わらない。
成長しないとか、そういうことじゃないわよ。
とにかく変わらないの。だから……」
 ハルヒはおれの胸から体を起こし、
よじのぼるようにして上半身をのばし、
おれの眼の中を見て、少しだけ笑った。
「キスだけで夢オチなんて願い下げよ」
 お互いの動きに応えるように、お互いの口が相手の唇でふさぐ。
「……どう?あんたは消えてなくならないし、あたしもいなくならない。
少しは落ちついた?」
心臓が大火事のときの半鐘のように打ちまくってる。
「まだだ」
 「や、やっぱり、あんたはエロキョンのままね!」
「そんなこと、うれしそうに言うな」
「だ、誰がうれしそうよ!?」
「おまえだ、エロハルヒ」
「聞き捨てならないわね」
「捨てられてたまるか」
「捨てないわよ、安心しなさい!」
「そっちの捨てるじゃない!!」
「……う、うれしいに決まってるでしょ! 
これがうれしくなかったら、何がうれしいっていうのよ!」
「あ……」
「ふん。こういうのはね、ビビって後出しする方が負けなの」
ああ、きっと、そうなんだろう。
おまえはいつも、おれの一歩先に居て、
おれをぐいぐい引っ張って行く。
そして、おれがまだみたこともない何かを
おれに見せつけるんだ。
離そうたって、目が離せないような……。
だからな……。
「こ、こら! キョン、重い! のしかかるな!」
「のしかかってるんじゃない。襲ってるんだ!」
 一瞬、二人とも絶句する。
「……だったら!」
「なんだ?」
「もっと……真面目にやんなさい」
「ハルヒ」
「何よ!?」
「こっち見ろよ」
「だから、何?」
「おれは真面目だ」
「うそ。目が笑ってるわ。泳いでるより……いいけど」
「笑ってるんじゃない」
「だったら、何?」
 そして、ようやく二人の目が合った。
「……し、幸せに浸ってんだ」
「あ、あんたってやつは!」
「……あ、後出しが、負けなんだろ?」
「うっさい! あたしの方がね、あんたの何倍も何十倍も幸せよ!」
「そんなこと、競うな! というか、それはそれで問題あるだろ!?」
「じゃなくて! それなら、もっと先に言う言葉があるでしょ!」
「お、おう……」
「あ、あたしの方はもう言ったようなもんだし……あとは、あんただけよ!」
 おい、ちょっと待て。
「今日は日が悪いとか、年寄りくさい言い訳はあらかじめ全方面的に却下よ!」
「……は、ハルヒ」
「ハルヒはあたしよ。もうこれ以上、名前を呼ぶ必要は無いからね!」
「うっ……あ」
「あ?」
「…………あ」
「あ!?」
「あけま(ボコッ!)………さ、最後まで言わせろよ!」
「聞くに耐えない」
「あー、ごほん。……<span style="font-size:80%;">好きだ、ハルヒ</span>」
「そんなのは百も承知よ!」
「え?(コレジャナイノ?)」
「で?」
「<span style="font-size:80%;">あいして……ます</span>」
「何で、です・ます調なのよ!?」
「いや、細部じゃなくて意を汲んでくれ」
「男ならそこは、『好きなんだから、良いだろお』でしょ!!」
「……ハルヒ、立場が逆なら殴られてるぞ」
「そ、そうなの?」










「うっとうしい! 邪魔するぞ!!」
「お、親父さん!?」
「バカ親父、絶対的かつ超越論的に邪魔よ! っていうか、いつから居たの!?」
「馬鹿ハルキョン、まとめて聞け。
姫始め(ひめはじめ)というのは、1月2日の行事で、由来は諸説あってはっきりしておらず、
本来は何をする行事であったのかも判っていない。
一般には、その年になって初めて夫妻などが交合することと考えられているが、
正月の強飯(こわいい。蒸した固い飯。別名「おこわ」)からはじめて
正月にやわらかくたいた飯(=姫飯(ひめいい))を食べ始める日とも、
「飛馬始め」で馬の乗り初めの日とも、
「姫糊始め」の意で女が洗濯や洗い張りを始める日ともいわれる」
「ええ? 年越しでエッチするんじゃないの!?」
「全然違う。かすりもしてない。という訳だ、キョン、出直してこい」
「は、はい」
「おせち料理を手伝うのをさぼったバカ娘には、母さんから本気で話があるそうだ」
「へ、ふえ?」
「お、おれもいっしょに……」
「ダメだ。どうしてもというなら、キョン、おれが特別にじっくり話をしてやる。
雪崩にあった母と幼子の話だ。
幼子に乳を飲ませるため、
水分を摂取しようと雪を食べ、
その乳で幼子は助かったが、
母親は、氷を水にするためにカロリーを消耗して凍死した話だ。
昔、理科の教科書に載ってた」
「うああ、ほとんど聞いちまったけど、聞きたくない!」



(おしまい、今年こそがんばります by 親父書き)
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