ハルヒと親父 @ wiki

留守番(二人は暮らし始めました)

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haruhioyaji

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 「……ハルヒ?」
 手が隣が居る誰かを探していた。

 気が付いて、目が覚める。
「そうか。あいつ、帰ってたっけ」
 あの親父さんがインフルエンザだとかで、「タダでさえ体の弱い母さんにうつしたら大変」だからと、親父さんは一室に隔離され、食事を出したり着替えを出し入れしたりをハルヒがやることになった。

「おまえにうつったら意味ないだろ?」
「あたしはそんなマヌケじゃないわ。親父のタミフルひったくって先に飲んでおくから。親父? タミフルなんかに頼らず気合で治させるわ。この暮れの忙しいときに呼び付けるんだから、それぐらい当然よ。それにタミフルの服用は、症状は劇的に改善するけど、治癒についていえば平均で1日だけ治りが早くなるくらいの効果しかないの」

 あわれ、親父さん……。

 あいつと暮らし始めて、8ヶ月。
 のべつまくなし、ほとんどあらゆる時間を一緒に居たと思う。
 これが一人暮らしの経験のないおれにとっては、はじめての……
「キョン!!おきなさーい!!」
「……もう、起きてる」
というか呼び出し音1回でとっただろ。
「ん。なら、よろしい。あたしがいないからって、規則正しい生活をしなきゃダメよ」
「……おまえと居る方が、好きなだけ起きてて耐えきれなくなって寝る、という感じだから、不規則と言えば不規則だぞ」
「なによ、文句あるの?」
「……だけど自由だ」
「へ?」
「おれも、おまえも、一人暮ししたことはないが、他人と顔付きあわせて暮らすなんて、正直言って窮屈だろうと思ってた。それも、普段でも、あんなにやかましいおまえとじゃな。……それが全然そうじゃないんで驚いたくらいだ」
「あ、あんたも、熱でもあるんじゃないの?」
「そうかもしれん。……親父さんの具合はどうだ?」
「ぴんぴんしてるわ。あと100年くらいは楽に生きるんじゃないかしら」
「じゃなくて……インフルエンザは?」
「熱はまだ高いみたいね。退屈しのぎに、寝ないでネトゲーしてたらしいから、自業自得よ。水分はちゃんと取らせてるし、明日か明後日には熱は下がるんじゃないの?」
「あ、あのな」
「なに?」
「……おれも行こうか?」
「あんたが来てどうすんのよ。あんたが親父のパンツ洗うの?」
「洗えと言うなら洗うぞ」
「バカキョン。……冗談よ、冗談に決まってんでしょ」
「おれの方は悪いが本気だ。……いや、親父さんのパンツじゃないぞ」
「わ、わかってるわよ、それくらい!」
「ハルヒ?」
「……あんなにしょんぼりしてる母さん、見るのはじめてだしね。……だから!つまり!……あんたの言いたいことぐらい、あたしには百もお見通しってことよ!……その、あ、あんただけじゃ、ないんだからね!」
「あ、ああ……」
「……親父を母さんに引き渡せるようになったら、すぐに飛んで帰るから……。だから、それまで、あんたが留守をしっかり守んのよ! いいわね!」
「……ああ。わかった。親父さんとお母さんに、よろしくな」
「ええ、しっかり伝えるわ」


「ハル、電話、キョン君?」
「ええ、そうよ」
「そう。……今夜あたり、お父さんの熱も下がりそうね」
「ええ!? なんで?」
「うーん、そうねえ。簡単に言うと、ああ見えて人一倍気を使う人だから」
「気づかいでウイルス撃退できるなら、ワクチンもタミフルもいらないわよ! というか、あの親父が気を使う!?」
「正直、私もそろそろ限界。出張だったら何ヶ月だって平気なのにね。同じ屋根の下に居て会えないなんてつまらないわ」
「つまるとか、つまらないとかじゃないと思うけど……ほんとに治るの? というか、母さん、本気で思ってるの?」
「もちろん。……ああ見えて、私の期待を裏切ったことがないのよ」
「いや、期待とかで治ったら、医者も医学も……」

 ● ● ●

「……ふぅ、ただいまぁ」
「ハルヒ! こんな時間に、おまえ、どうして!?」
「『おかえり』は、キョン?」
「あ、ああ。おかえり、ハルヒ」
「ただいま、キョン。……あんたも『はてな』でしょうけど、あたしはそれ以上よ! まあ、早く帰れたんだから、それ自体はいいことよ、うん」
「親父さんは?」
「そう、それよ! あっさり治ったわ。最初、体温計にいたずらでもしたのかと思ったけど、熱も下がって咳も何もなし。どっから見ても、親父そのもの」
「いや、それはそうだろ」
「母さんの予言通り、夜には治っちゃった。……あれを愛の力というのかしら?」
「いや……待て! 次の発言、待て」
「キョン、あたしたちも試すから、まずあたしにインフルエンザをうつしなさい!」
「それ無理! まず、おれ、罹ってないし。というか、おれかおまえか、どっちかが罹ってたら、多分、二人とも今頃寝こんでるぞ」
「あ、そうか」
「親父さん、気合でウイルスを追い出したのか?」
「まあ、それに近いところはあるわね。『そろそろ母さんの顔が見たいぞ』とかなんとか言ってたから」
「だったら、なんでそもそもインフルエンザにかかったんだ?」
「まったく、いい迷惑よ。そういう気合いがあるなら、最初から使いなさい! 気合いの持ち腐れじゃないの!」
「あ、そうか……」
「なに、キョン? 特別に発言を許すわ。洗いざらい、ぶちまけなさい」
「それは尋問だ。……あー、つまりだ。あの親父さんも、たまには一人娘に……」
「キ、キョン! ……ものにはねぇ、言って良いことと悪いことの……」
「いや、まだ言ってないぞ。って、待て、首は止めろ! そこもダメだ! 今はダメだ!」



















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