ハルヒと親父 @ wiki

冷蔵庫のあかり

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haruhioyaji

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ハルヒ
こんな時間になんでキッチンにいんのよ?
オヤジ
そういうおまえは?
ハルヒ
夕食のパエリアが味が濃すぎて、喉がかわいて目が覚めたの。
オヤジ
母さんはすやすや寝てるぞ。
ハルヒ
一度眠ったら、地震でもないかぎり、母さんは起きないわよ。
オヤジ
人のつくったものに文句を言うなら、自分で作れ。
ハルヒ
別に文句じゃないわよ。ちゃんと食べれたし。
オヤジ
じゃあ、さっさと水でも飲んで寝ちまえ。
ハルヒ
……こんな時間に、キッチンでなにやってんのよ?
オヤジ
夜の静寂を堪能してる。
ハルヒ
そういう訳の分からないことは自分の部屋でやりなさい。
オヤジ
部屋には母さんが居るし、押しつぶされるような孤独を感じるには不向きだ。耳が痛くなるような完全な無音状態より、冷蔵庫のモーターがかすかに唸ってる方が、それっぽい感じがする。冷凍室内から漏れる光だけで自分の顔を見たことがあるか?この世のものとは思えんぞ。
ハルヒ
家族持ちが、言うに事欠いて、何が孤独よ。
オヤジ
じゃあ、おまえは、親に養われてる子供は、家を出ていかない限り、孤独を感じないし、感じてはいけない、っていうのか?
ハルヒ
また、そうやって屁理屈を。
オヤジ
質問だ。他の奴はどうでもいい、おまえは今まで孤独を感じたことがないのか?
ハルヒ
……あるわよ、それくらい。
オヤジ
ああ、良かった。育て方を間違えたのかと思ったぞ。
ハルヒ
別に合ってもいないわよ。
オヤジ
孤独を感じるのは、心に血が通った証拠だ。魂が呼吸を始めたんだ。
ハルヒ
なによ、それ? じゃあ、死ぬまで孤独を味合う訳?
オヤジ
当たり前だ。でなきゃ生きてる甲斐がない。それでようやく、他人が存在している理由が分かる。振りかえって、自分の存在の重みも身にしみる。人生が、取るに足らないものでなく、どれほどの重大事かがやっと理解できるようになる。それまでは砂を噛むようだった現実に、ようやく味がするようになる。……ま、今さら言うようなことじゃないか。
ハルヒ
……ないわよ。
オヤジ
……ああ。あと、ひとつ。
ハルヒ
何よ?
オヤジ
あんまり、退屈だ、退屈だ、と言わないほうが良いぞ。聞いてる方には「さびしい」と鳴いてるようにしか聞こえん。
ハルヒ
なっ!
オヤジ
まあ、今さら言うようなことじゃないがな。
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