ハルヒと親父 @ wiki

ハルヒ先輩7

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haruhioyaji

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 「随分、成績も上がってきたな。これだと外の学校を受験しても十分勝算があると思うが」
「外の大学なんか行かないわ」
「……この進路志望調査票なんだが、第1志望から第3志望まで『ハルヒの嫁』っていうのは?」
「あ、それ、あたしが書いたの」
「……涼宮、なんでお前がここにいるんだ? なんで一昨年と同じ会話を、おれとお前はやってるんだ?」
「だって、これ、キョンの三者面談でしょ? あたしの時と事情は同じじゃないの」
「三者ってのは、本人と親と教師のことだ。おまえは何だ?」
「キョンの嫁よ。英語で言えばベター・ハーフよ。こいつの成績に関しては、あたしも責任があるし。あと、これ、キョンのお母さんからの委任状。ちゃんと話はつけてあるわ」
「あの、先生。ハルヒにはあとでよく言っておきますんで。とりあえず内部進学を希望するということで」
「すまんな、キョン」
「なによ、あたしが悪者みたいじゃないの! キョン、別によその大学受けてもいいわよ。あたしも同じとこ受けなおすから。東大でもハーバードでも好きに志望しなさい!」
「誰もおまえを悪者だなんて言ってないし、思ってない。俺の成績がここまで伸びたのは、ハルヒのおかげだし、おれのこと心配して今日も付いて来てくれたんだろ? それより、おまえの方こそ、どこか行きたい大学とか、やりたいことはなかったのか? なんか、おれと一緒にいるばっかりに、おまえを足止めしたんじゃないかって、思うことがあるんだ。おまえはいつも言下に否定するけどな」
「このお、バカキョン! あたしはあんたのために、なにひとつ我慢してもいなけりゃ、諦めてもいないわ! 自分にとって一番大事なことを、素直に優先してきて、そうやって今があるの! あんたといるのもそう! あんたの成績が上がるように、いろいろやったのもそう! この先、何かやりたいことを思いついたら、あたしはきっと、万難なぎ倒して、やりたいことをやるわ。でも、あたしはあんたとずっと一緒にいたいから、その時はキョン、あんたを説得してでも泣き落としてでも、引きずって行くから、覚悟しときなさい!」
「わかった。楽しみにしとく」
「楽しみじゃない、覚悟よ、覚悟」
「だって、どこに行くにしたって、ハルヒ、おまえといっしょなんだろ」
「キョン……。って、これ以上、あたしを萌えさせてどうするつもり!?」
「あー、すまんが二人に行く末が決まったところで、次の奴と交替してくれないか」
「あ、すいません。行くぞ、ハルヒ」
「まちなさい、キョン。それじゃ話が逆でしょ!」


「なに、ぼーっとしてんの、キョン?」
「ああ。ただの考え事だ」
「一人でうじうじ悩むんじゃなくて、あたしにどーんとぶつけて来なさい!」
「いや、悩み事じゃないんだけどな。三者面談って進路のこと話すだろ?」
「やっぱり、あたしが行ったの、よくなかった?」
「そうじゃなくて、決めてる奴はさ、医者になりたいから医学部へ、弁護士になりたいから法学部へ、とかそういう話をするんだろうな、ってちょっと考えてた」
「ふーん?」
「進路と未来というか将来が、直結してる奴もいるってことだ。おれの場合、そういうの、ないな、と思ってな」
「ちょっと、あんた、さっきと話が違うわよ。あんたの進路と未来も直結してるわよ」
「そうだな。進路先でも将来でも『ハルヒと居る』、それは変わらない。でも、たとえば、どんな仕事して家族を食べさせていくんだろうとか、おれにはまだ、そういうの全然ないな、と思ったんだ」
「そんなの高2で決まってる奴の方が少ないわよ」
「進路はとりあえず、将来は未定、ってのも悪くないけど、おれの場合、確定してる部分が人よりでかいから、その次の話にどうしても頭が進んじまうんだ。ハルヒとの暮らしをどうやって支えていこうかとか、生活じみてるが、そういうのを。悩んでる訳じゃないから心配はするな。でも、ちゃんと考えなきゃいけないって思ってる」
「……キョン」
「いや、ハルヒ、頭は撫でなくてていい。むしろ撫でないでくれ」
「大丈夫。禿げても、あたしの愛は変わんないわ」
「そっちかよ! いや、こんな髪質だけど、禿げるとは限らないだろ!」
「……意外と気にしてたのね。まあ、あたしも考えてないように見えるだろうけど、実はいろいろ考えてるわ。ううん、ついつい考えちゃうと言った方が正確ね」
「そうなのか?」
「多分、あんたと出会ったからよ、キョン。あたしだけだったら、今でもあたしには『現在』しかなかったと思うわ。その時のあたしも嫌いじゃないけどね」
「ハルヒはどんな風に考えたりするんだ?」
「あんたと別れることになったら、とか、あんたがいなくなっちゃったら、とか」
「おい、ちょっと待て、ハルヒ」
「そういう夢を続けて見たことがあってね。大長編だったわ。あたしはあんたを、あんたとのいろんなことも、忘れようとして、長い長い旅をするの。でも忘れられなくて、なんであの時ちゃんと『好き』って言わなかったんだろう、とか、なんで素直に『行かないで』って言わなかったんだろう、とか、延々と後悔するの。……夢よ、夢の話よ。目が覚めて、夢だと気付いて、あーよかったと思ったわ。寝ながらボロボロ泣いてたから、目なんか真っ赤ね。こんな顔、あんたに見せたくないけど、そんなことであんたに会わないなんて我慢ならないから、徹夜したとか嘘ついたりしたわね」
「覚えてるぞ。なんだよ、そう言う時は、胸ん中にためたりせず話せって、お互いに言ってるだろ」
「さすがに、『夢の中で素直になれなくて、あんたと別れて泣いた』とは言いにくかったのよ。付き合い出してすぐだったし。あんたをあたしの好き勝手に引っ張り回してるけど、あんたはやさしいんでぶつぶつ言いながらも付き合ってくれてるけど、この先どうなるかわからないって、きっと内心不安だったんだと思うわ。悪夢はそういう弱みにつけ込んで来るのよ」
「確かに、そういうものかもしれないけどな」
「でもね、悪夢に泣かされっぱなしにはさせなかったわよ、キョン! 確かにあたしは不安だったわ。でもね、この不安は、あたしがキョンに『好きだ』と告白したから、今一緒にいてすごく幸せで充実しているから、はじめて感じる不安よ。悪夢が見せるような『言えなかった』『素直になれなかった』っていう後悔とは大違いよ! その後悔の前に、夢の中のバカなあたしは『告白して断られたら』とか『素直になってもダメかも』っていう不安を抱えてたんでしょうね。だから、その娘は、かつてのあたしに似てるけど、今のあたしとは全然ちがう。あたしはもう、ちがう道を歩いてるわ。夢のあたしが立ち止まった崖っぷちを、あたしは踏み切ってジャンプして渡って来たの! 悪夢もお門違いもいいところよ!」
「ハルヒ……」
「今はね! あんたと一緒に明日はどうしよう、明後日は、1年後は、10年後は、とどんどん考えが膨らんでいくの。それに、昨日はキョンとこんなことしたわね、一昨日はこれ、1ヶ月前は、1年前は……ってね。過去や未来の存在意義がようやくにしてわかってきた感じよ! 加えて、今現在も、あたし史上最高に充実しているわ……って、キョン、何、笑ってんのよ?」
「いや、ハルヒにはかなわないな、って思ってるだけだ」
「その割には、お腹抱えて笑ってるわよ、キョン!」










































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