ハルヒと親父 @ wiki

ミルク搾りの女の子

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haruhioyaji

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 むかしむかし、あるところに、とてもかわいい女の子が暮らしていました。
 女の子は空想することが大好きで、その日も楽しいことを空想しながら、牛からしぼったばかりのミルクの入った桶を、頭に乗せて運んでいました。
「そうね。このミルクを売ったお金で、少なくとも300個の卵が買えるわ。
そして、どんなに悪くても、卵からは200羽のヒナが生まれるわ。
そして、そのうちの50羽は、親鳥に成長するわ。
そう、ちょうどその頃はクリスマス前で、トリ肉が一番高く売れる時期だわ。
高く売れると、そのお金で新しいドレスが買えるわね。
真っ赤なドレス、とってもすてきな真っ赤なドレスよ。
当然、クツもおそろいでね。
そしてそのドレスを着て、クリスマスパーティーに出かけるのよ。
すてきなドレスを着た美人のあたしが登場すれば、みんな、あたしにプロポーズしてくるわね。
でも、すぐに受けてはダメ。
こういうのは、じらすのがコツよ。
あたしは、つれなく頭をツンともたげて、ていねいに、みんなの申し出を断るのよ。
でも、みんなはあきらめず、あたしの周りから離れないわ。
そこであたしは……」
「おい、ハルヒ」
その時、近くに住む知り合いの男の子が、女の子に声をかけました。
「なによ、バカキョン! あっ!」
 実を言うと、女の子は、この男の子のことが大好きでした。その男の子に声をかけられて、女の子は無意識に首を曲げてそちらを見てしまいした。急に頭を動かしたので、その上に乗せていたミルクの入った桶は地面に落ちてしまいました。
 こうして、彼女の壮大な計画は、夢に終わってしまいました。こういうのを日本のことわざで「捕らぬタヌキの皮算用」と言います。
 けれど女の子は、転んでただで起きるような娘ではありませんでした。
「ちょっと、キョン! あんた、あたしの壮大な計画をどうしてくれんのよ!」
と叫んで、今しがた空想していた計画を詳細に語りました。
 黙って話を聞いていた男の子は、
「ああ。とりあえず牛の乳を桶一杯しぼってくりゃいいんだな」
「あんた、全然分かってないわね!」
 まったくその通りですね。
「そういうのをね、手段と目的を取り違えてるっていうのよ! あたしがほんとに欲しいのは、桶一杯のミルクでも、真っ赤なドレスでも、クリスマスパーティでちやほやされることでもないわ! あたしが欲しいのはね!」
 その瞬間、男の子は女の子の手をとって、ひざまつきました。
「正式なやり方はよく知らんが、これでいいのか?」
「な、な、なにやってんのよ、あんた?」
「ちがう。これからするんだ。俺が欲しいのも、桶一杯のミルクでも、真っ赤なドレスを着た美人でも、金の卵を産む雌鳥でもない」
「さすがのあたしも、そこまでは言ってないわ」
「ハルヒ、おまえだ」
「は?」
「お決まりのオチですまん。俺と結婚してくれ」
「わ、わかったわ。本来なら一度断るところだけど、他ならぬあんたからのプロポーズだし、一発OKしてあげる。でもね。桶一杯のミルクも、真っ赤なドレスも、金の卵を産む雌鳥も、別腹だからね。とりあえず金の卵から行くわ。その方が一遍に済みそうだから」
「おい、ハルヒ」
「大丈夫。あんたとあたしで探すんだもの。世界中探して見つからなかったとしても、それはそれは楽しい旅になるに決まってるわ!」

 このお気楽なバカップルが、明日はあなたの町を訪れるかもしれません。









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