ハルヒと親父 @ wiki

長門有希の解答ーおっぱい

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haruhioyaji

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「だいたい、なんで、おっぱいなんてものがあんのよ?」
「知らん。哺乳類だからだろ、きっと」
「まったくあてになんないわね。イヌとかブタとかはどうなるの? 乳房なんかなくて、乳首がおなかにならんでるだけじゃないの?」
 おっぱいの起源なんてものについて、あてにされても困るぞ。と思いながら、「ほんとのとこ、どうなんだ?」とでも言う風に、おれは長門の方を見た。
「発達した乳房は、ホモ・サピエンスが直立歩行することと言語コミュニケーションをとることになった両方に原因を求めることができる」
「そうなの、有希?」
「(こくり)」
 長門は頷いて、俺の方を見た。説明を続けていいのか、と問うような目で。構わん、やっちまえ。
「四足歩行する哺乳類のメスの生殖器は、後ろに回ることで容易に観察できるが、直立歩行によってこれが不可能になった。かわりに類人猿のメスは、頭を下げ腰を高く上げたり、臀部を膨らましたり赤く充血させることで、性交が可能であることを示す。動物行動学では、これをプレゼンテーションという」
「プ、プレゼン?」
「一方、類人猿の日常的コミュニケーションは、交替で相手に背を向けて毛づくろいをすることだが、ホモ・サピエンスの日常的コミュニケーションは、対面で音声言語を用いるものになった。これはより意識的コントロールの難しい《顔の表情》を参照することで、音声言語コミュニケーションの信頼性を高めるためと考えられている」
「コトバだとなんともいえる、ウソだって言えるが、顔見りゃそれがわかるってことか?」
「正確ではないが、そう理解して間違いではない。しかし対面的コミュニケーションは、自らの遺伝情報を次世代へ再生産するための行為の様式に変化をもたらすことになった。有機生命体が「正常位」と言うところの対面的性行為においては、類人猿が用いる臀部によるプレゼンテーションが不可能。前半身によるプレゼンテーション・メディアとして、乳房の発達が進化したと考えられる。傍証として、臀部と乳房の脂肪の増減が、他の脂肪とは別の内分泌系によってコントロールされていること、オーガズムに近づくにしたがって類人猿の臀部にある性皮が膨張することと、ホモ・サピエンスの乳房が大きくなることの類似性が指摘されている」
 俺とハルヒは、惚けたように黙り込んでいた。情報の伝達に齟齬が発生した可能性を鑑みて、長門は結論部分だけを手短に要約してくれた。
「つまり、ヒトのおっぱいは、サルのおしりの代替物」

 その後? 

 長門はどうかわからないが、残りの俺とハルヒは、胸の中に何か片付かないものを抱えながら帰途についた、とだけ言っておこう。

 「だいたいあたしとあいつは、普段から前後に座ってて、ほとんどあたしがあいつの背中をつつくとか、てんで対面的じゃないわ。期待に胸膨らます、って、そういうことじゃないのよ! そうよ、あいつがあたしに背中を向けてるのがすべての元凶よ! 猿並みなんだから、あいつが自分のおしりをふくらませばいいのよ!」

 なんだか、よくわからないことをぶつぶつ良いながら歩いていった奴が居たことは、ここだけの内緒だ。ばれたら、どんな目に遭うか、わからないからな。って、長門、急に立ち止まってどうした?
「プレゼンテーション・メディアの拡張を情報統合思念体に申請した」
ぶっ!! か、拡張? ……で、結果は?
「申請を繰り返したが、いまだ回答がない」
「い、いや、長門。おまえはおまえのままがおまえらしくていいと思うぞ」
「そう?」
「そ、そう」
 だって急進派と穏健派の新たな対立と抗争の火種にならないともかぎらない、だろ?











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