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親父の英会話 Lesson 8

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haruhioyaji

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主語の英語


主語は「既知」である


親父
前回、主語は省略しても構わん、と乱暴なことを言ったが、理由は分かるか?
キョン
会話だと、話している相手とか文脈から、判断がつくからでしたっけ?
親父
そう。逆に言えば、それが、英語でどんなものが主語になるか、何を主語に持ってくればいいかのヒントになる。

 どんな言語もそうだろうが、言語表現は、話し手と聞き手の間で共有される「既知の情報」を表す部分と、話すことで話し手から聞き手に渡される「未知の情報」の部分とからできている。順番は
「既知の情報」→「未知の情報」
だ。そして、英語でもそうだが、主語は表現の最初に来ることが多い。このことから何が予想されるか。答え:主語は「既知の情報」を担うことが多いんだ。例を示そうか。
○ The new project is exciting. (例の、あの)新しい企画だけど刺激的だね。
? A new project is exciting. ある新しい企画は刺激的である。
 上の方の文でいうと、「The new project」が「既知の情報」で、「exciting」が「未知の情報」、新情報だ。「The new project」は、話し手と聞き手の間で共有されている。「例の、あの」って感じだな。だから「the」という冠詞がついている。
 で、下の方の英文なんだが、こいつは文法的には間違ってなくても、「情報を伝える道具」という観点から見ると、ヘンテコだ。「A new project 」というのは、「特定されない、ある企画」のことであって、話し手と聞き手の間で共有されているとは言えない。いきなりこんなところから文をはじめるのはまずい。

 なので、こいつを「既知の情報」→「未知の情報」となるように書き直してみよう。これまで話してきたことの総集編でもあるな。
 この時使えるのが、we have 〜で存在を表す、例の方法だ。なんとなれば、代名詞は何かを指していて、しかも代名詞を使って話が通じる以上は、何を指しているかは既知のはずだ。
We have a exciting new project. 刺激的な新企画があるんだ。
 だから代名詞を主語にするやり方は、話し手と聞き手の間で最低限これだけは共有されていること、つまり「あんたとおれ(You and I = we)が話している」という、多分最低限に近い「既知の情報」をもってスタートできる。
 ここまで戻れば、「We」が「既知の情報」、「have a exciting new project.」が「未知の情報」だということは明白だ、これで「既知の情報」→「未知の情報」の順序で、「相手も知らない新しい企画」の話をすることができるようになった。これが代名詞を主語にした文の、使い方の一つだ。


there is/are〜で、未知の主語を後ろに回す


じつはthere is/are 〜も、初めて出てきた登場人物やら登場物(当然、未知のものだ)を出すときに使うやり方なんだ。
「〜がある」と丸覚えしてるかも知れんが、there(そこ)ってのは、話し手、聞き手双方にとって、もともとは既知のものだろ。次第に一人歩きして、具体的な場所を指すとは言えなくなったが、話し手からも聞き手からも隔たっている、「どこか」ではあるだろう。言ってみれば「むかしむかし、あるところに」の「あるところに」だな。実際、語り手が明確でない、お話や物語の冒頭なんかでよく使われる。これも例をあげとくか。
部屋には天蓋つきのベッドがあった。そのベッドに眠っていたのは美しい少女であった。
(a) A canopied bed was in the room. A beautiful girl slept on the bed.
(b) There was a canopied bed in the room. On the bed was a beautiful girl.
(a)の方は、お初の「A canopied bed」やら「A beautiful girl」がいきなり出てくる。
(b)の方は、「There was」をつかって、既知のthereから、「そこに……あった」から始めてる。
 二つ目の文も、前の文で登場したbed(この時点で、既知の情報だ)を前に放り出して、既知→未知の順序をつくってる。
 倒置ってのは、初心者には読みづらくてめんどうくさいが、既知→未知の順序ってルールにしたがうための手のひとつだ。
 言うまでもないが、「On the bed」を「強調」してる訳じゃないぞ。倒置をそんな風に教えるバカも、まだいるらしいからな。


主語は「答え」である


親父:無論、省略できない主語ってのもある。代名詞は文脈で誰のことだか分かるが、そもそも代名詞じゃない主語ってのには、それが「答え」になってるケースがある。
How can I get to Narita airport? 成田空港にはどうやっていけばいいの?
This train (will take you to Narita airport). この電車で行けるよ。
「答え」ってだけなら、「This train」で十分だ。これを全うな文章に仕上げようとすると、いわゆる無生物主語を持った文になる。
 言い換えれば、無生物主語の文章は、文脈(この場合なら、この文章の前に想定される質問/疑問)が分かってれば、とりあえず先頭に来る主語だけ見れば、大意はとれる、ということでもある。さらに言えば、無生物主語の文章からは、その前提となっている文脈が「逆算」できる。既知の情報(=前提となってる文脈)→未知の情報(無生物主語を取る文)ということだな。

 さっきの質問で、もっと成田空港に近いところにいる場合な、
How can I get to Narita airport? 成田空港にはどうやっていけばいいの?
A few minutes'walk (will take you to Narita airport). 2、3分歩けば、行けるよ。
これも答えを最小限にシンプルに現せば、「A few minutes'walk」だろ?
I have a headache. 頭が痛い。
Why? どうして?
Overwork (gave me a headache). 仕事のやり過ぎ(オーバワーク)だ。
これも答えは端的には「Overwork」で、カッコ( )は、ちゃんとした文にするのに必要な要素ってだけだ。

今のプロセスを逆向きに、つまり無生物主語をもつ文章から、こいつが前提にしている問いを逆算できれば、
A few minutes'walk will take you to Narita airport. 二、三分の歩行が、あなたを成田空港へ連れて行くだろう。
みたいな「直訳」に陥らなくて済むだろう。

「隠れた問い」を考えてみるのは、英文を筋を追って読んでいく時にも、一定の長さの英文を書くときにも、参考になる。理屈や筋立ての成り立ち具合を、ひとつひとつばらして、リバース・エンジニアリングすることになるからだ。

おおざっぱにいえば、英語の文章は、こんな風に構成されている。

1 あなたは@@が##であることについて知っているだろう。(既知の情報)
2 だが、@@が##でない場合がある。(未知の情報)
3 この場合の@@は何だろうか/どうなっているのか?(文章の主題となる質問=既知のトピックについての未知の情報を引き出す問い)
4 それは$$である(文章が全体として主張したいこと=未知の情報)
5 なぜそういえるのか?(根拠を引き出す問い)
6 なぜならば・・・(その根拠)
(以下、5,6の繰り返し)
end.(さいごに、もういちど@@は〜〜の場合には$$である、という主張がまとめとしてくる)

既知から未知へ、問いと答えを繰り返しながら、進んでいく訳だ。































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