ハルヒと親父 @ wiki
虫愛づる姫君のためのパヴァーヌ
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haruhioyaji
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911さんが書いた「堤中納言物語をハルキョンでやってみた -虫愛づる姫君-」にインスパイアされて、「存在しない二の巻」として(?)、思わず次のようなものを(また会話モノだ)をかいてみた。時代考証的なことをいっさい考えてないので、それどころかキャラも変わっているし、もうむちゃくちゃもいいところだが、しかも911さんが「二の巻」を準備してたりすると、まったくもってごめんなさいなのだが、いろいろ、許して下さい、911さん。
虫愛づる姫君のためのパヴァーヌ
- 姫
- 何しに来たのよ?
- 右馬助
- 来たら悪かったか?
- 姫
- もう来んなって言ったでしょ!
- 右馬助
- ああ、そういえば、そんなこと言ってたな。
- 姫
- あんたね、人の話聞かないってよく言われるでしょ?
- 右馬助
- どの口で言うんだ。いやこっちの話だ。……多分、あれだ。魔がさした、ってやつだ。
- 姫
- ふうん、心のなかに鬼でも入ったって訳?
- 右馬助
- 鬼のせいにするのは、本意じゃないが。
- 姫
- 何言ってるの?
- 右馬助
- 会いたくなったから来た、じゃいけないのか?
- 姫
- 別に。あたしの知った事じゃないわ。
- 右馬助
- そりゃそうだ。
- 姫
- ……あたしがなんて呼ばれてるか、知ってんでしょ?
- 右馬助
- 「虫愛づる」とかって、やつか。
- 姫
- 別に虫が好きなわけじゃないわ。人間が嫌いなだけよ。
- 右馬助
- そうか、もったいないな。
- 姫
- 何がもったないのよ?
- 右馬助
- おれは最近、『どうして美人は得なのか?』って本を読んだ。
- 姫
- はあ?
- 右馬助
- たかだか皮一枚のことなのに、つくづく美人は得だと思い知った。だが、人間の面の皮なんざ、所詮は人間向けのものだ。魚や虫やもののけに、その美しさはわからんだろうし、また分かる必要もない。あんたさえ良ければ、おれのあまり人間向けじゃないご面相と取り替えてやろうか? あんたは人間嫌いを決めこんで、ここで楽しく暮らしていけばいい。おれの方は、せっかくの美貌をつかって、人生を謳歌する。悪くない話だろ?
- 姫
- 何を勝手なことを。あんた気は確か?
- 右馬助
- さあ、どうだろうな。
- 姫
- そんなことができると思ってんの?
- 右馬助
- できると言ってる医者がいる。金はしっかり取るところが、それっぽいだろ。
- 姫
- それに、人生を謳歌って、そこまでお金や出世に興味がある人間には見えないわ。
- 右馬助
- 虫ばかり見てるくせに、人物鑑定までできるのか? だが買いかぶりだ。これでも、人並みに欲もあれば見栄もある。まじめな努力は苦手だけどな。
- 姫
- そのくせ悪いことをする度胸もない?
- 右馬助
- そのとおり。
- 姫
- 平凡で先の見えた人生ね。何が面白くって生きてるの?おもしろい答えなら参考にしてあげるわ。
- 右馬助
- 結構だ。
- 姫
- ……結局、あんたが興味を持ったのは、あたしの顔だけなんだ。
- 右馬助
- 「何が面白くって生きてるの?」ってのは、おれへの興味から出た質問じゃないのか?
- 姫
- あんたになんか興味はないわ。あんたの心の中に入り込んだ鬼に興味があるだけ。
- 右馬助
- また、その口をふさげばいいのか?
- 姫
- どこから出てくるの、そんな台詞?
- 右馬助
- 鬼が心にもないことを言わせてるんだろ、きっと。本当の俺は、あんたが言う通り、こんなことが言えるほどの度胸はない。
- 姫
- 今度こそ、二度と来ないでちょうだい。
- 右馬助
- そうだな。「二度と来るな」と言われたら、普通は二度と来ないし、来ても取り合ってもらえん。
- 姫
- 別に取りあってないわよ。
- 右馬助
- だが、また会えた。
- 姫
- あたしにどうしろっていうの?
- 右馬助
- わからん。自分のやってることですら、持て余してるんだ。そっちのことは自分で考えてくれ。
- 姫
- 無責任ね。
- 右馬助
- 責任取って欲しいのか?
- 姫
- 冗談じゃない!