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虫愛づる姫君のためのパヴァーヌ

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haruhioyaji

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911さんが書いた「堤中納言物語をハルキョンでやってみた -虫愛づる姫君-」にインスパイアされて、「存在しない二の巻」として(?)、思わず次のようなものを(また会話モノだ)をかいてみた。時代考証的なことをいっさい考えてないので、それどころかキャラも変わっているし、もうむちゃくちゃもいいところだが、しかも911さんが「二の巻」を準備してたりすると、まったくもってごめんなさいなのだが、いろいろ、許して下さい、911さん。



虫愛づる姫君のためのパヴァーヌ


何しに来たのよ?
右馬助
来たら悪かったか?
もう来んなって言ったでしょ!
右馬助
ああ、そういえば、そんなこと言ってたな。
あんたね、人の話聞かないってよく言われるでしょ?
右馬助
どの口で言うんだ。いやこっちの話だ。……多分、あれだ。魔がさした、ってやつだ。
ふうん、心のなかに鬼でも入ったって訳?
右馬助
鬼のせいにするのは、本意じゃないが。
何言ってるの?
右馬助
会いたくなったから来た、じゃいけないのか?
別に。あたしの知った事じゃないわ。
右馬助
そりゃそうだ。
……あたしがなんて呼ばれてるか、知ってんでしょ?
右馬助
「虫愛づる」とかって、やつか。
別に虫が好きなわけじゃないわ。人間が嫌いなだけよ。
右馬助
そうか、もったいないな。
何がもったないのよ?
右馬助
おれは最近、『どうして美人は得なのか?』って本を読んだ。
はあ?
右馬助
たかだか皮一枚のことなのに、つくづく美人は得だと思い知った。だが、人間の面の皮なんざ、所詮は人間向けのものだ。魚や虫やもののけに、その美しさはわからんだろうし、また分かる必要もない。あんたさえ良ければ、おれのあまり人間向けじゃないご面相と取り替えてやろうか? あんたは人間嫌いを決めこんで、ここで楽しく暮らしていけばいい。おれの方は、せっかくの美貌をつかって、人生を謳歌する。悪くない話だろ?
何を勝手なことを。あんた気は確か?
右馬助
さあ、どうだろうな。
そんなことができると思ってんの?
右馬助
できると言ってる医者がいる。金はしっかり取るところが、それっぽいだろ。
それに、人生を謳歌って、そこまでお金や出世に興味がある人間には見えないわ。
右馬助
虫ばかり見てるくせに、人物鑑定までできるのか? だが買いかぶりだ。これでも、人並みに欲もあれば見栄もある。まじめな努力は苦手だけどな。
そのくせ悪いことをする度胸もない?
右馬助
そのとおり。
平凡で先の見えた人生ね。何が面白くって生きてるの?おもしろい答えなら参考にしてあげるわ。
右馬助
結構だ。
……結局、あんたが興味を持ったのは、あたしの顔だけなんだ。
右馬助
「何が面白くって生きてるの?」ってのは、おれへの興味から出た質問じゃないのか?
あんたになんか興味はないわ。あんたの心の中に入り込んだ鬼に興味があるだけ。
右馬助
また、その口をふさげばいいのか?
どこから出てくるの、そんな台詞?
右馬助
鬼が心にもないことを言わせてるんだろ、きっと。本当の俺は、あんたが言う通り、こんなことが言えるほどの度胸はない。
今度こそ、二度と来ないでちょうだい。
右馬助
そうだな。「二度と来るな」と言われたら、普通は二度と来ないし、来ても取り合ってもらえん。
別に取りあってないわよ。
右馬助
だが、また会えた。
あたしにどうしろっていうの?
右馬助
わからん。自分のやってることですら、持て余してるんだ。そっちのことは自分で考えてくれ。
無責任ね。
右馬助
責任取って欲しいのか?
冗談じゃない!















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