ハルヒと親父 @ wiki
二人は暮らし始めました-外伝-二人はひきこもりました その2
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haruhioyaji
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その1から
- ハルヒ
- 今日からやっと夏休みよ。これで思う存分いちゃラブできわね!
- キョン
- なんだ、その、いたラブって?イタ車みたいなものか?
- ハルヒ
- そう、アニメ・キャラをでっかくプリントした続き柄のおそろいを着て、って何でやねん!
- キョン
- おお、乗りツッコミ。しかも関西弁だ。
- ハルヒ
- 確かにあれは痛いカップルだったわ。
- キョン
- !実在するのか?
- ハルヒ
- あの世界は深いわ、キョン。まだまだこんなもんじゃないわよ。
- キョン
- いや、その話題はストーリーとも関係ないし、なんだか帰って来れない気がするから、やめとけ。
- ハルヒ
- そうね。話を戻すと、夏休みよ!学校に行かなくて済むし、寝る以外のすべての時間を、強い意味でのイチャイチャにつぎこむつもりでいくから覚悟しなさい!
- キョン
- なんだ、その「強い意味」って?
- ハルヒ
- ハードな内容になるってことだけは言えるわね。
- キョン
- 具体的には?
- ハルヒ
- あたしの口から言えるわけがないでしょ!
- キョン
- ええ、そんなことまで!
- ハルヒ
- まだ何も言ってないわよ。
- キョン
- あと、このでかい荷物はなんだ?また古泉がなんか送ってきたのか?
- ハルヒ
- あたしがこの目で選んで来たわ。
- キョン
- 中身はなんだ?
- ハルヒ
- 非常用備蓄食料よ。3年間は食いつなげるわ。ほんとは水と日光があれば半永久的に食料を提供してくれるバイオスフィア計画で使われたクロレラ・プラントが欲しかったけど、水槽の重さってバカにならないわね。人間二人が自給自足できるサイズでも床が抜けるみたい。
- キョン
- 夏休みは、どれだけ引き伸ばしても数十日だぞ。
- ハルヒ
- 次に私たちがこの部屋を出るときは、元号が変わってるかもしれないわね。
- キョン
- あちこちに支障のあるようなことをさらっと言うな。せめて「首相が変わってる」くらいにしとけ。
- ハルヒ
- そんなの、単なる「既定事項」じゃないの。
- キョン
- いったい、どれだけ外に出ないつもりだ?
- ハルヒ
- もちろん、気が済むまでよ!
- キョン
- ハルヒ、それはすでに「ひきこもり」じゃなくて、「たてこもり」だ。
- ハルヒ
- ええ、いつか、あんたと思う存分愛を育める「要塞」を建造するつもりよ!
- キョン
- いったいおれたちの前に何が立ちふさがる予定なんだ!?
- ハルヒ
- だってあんた、地味にもてるじゃない。
- キョン
- おれ自身かよ!?
- ハルヒ
- あ、あんたを信じてないわけじゃないわ。ちょっと変な具合に落ちこんでたりするけど。
- キョン
- なんか、リアルでネガティブな夢でも見たのか?
- ハルヒ
- そんなはっきりしたものじゃないの。ただ漠然と人間って変わるものだよね、と思ったの。
- キョン
- それで?
- ハルヒ
- あんたとの関係が、そのなんていうか、曖昧で、そのくせ居心地がよかった頃には、想像もできなかったくらい、たくさんの時間、あたしたちは一緒にいるわ。今の方が何倍も幸せ。それは確かなのに、ふとあの頃がなつかしくなる時があるの。楽しかったもの、言えずにいた不安をいっぱい抱えてたけど、それでも楽しかった。あの時、見えたと思ったゴールに駆け込んで、それはあんたの腕の中にあったけど……それを今でも覚えてるし、日に何度でも確かめられる、でもね、ひょっとしたらあたしたち「終わりの後」の時間を生きてるんじゃないかと思ったりするのよ。「ハッピーエンド」っていう終わりの後をね。
- キョン
- ハルヒ、おまえ、時間を止めたいのか?
- ハルヒ
- わからない、でも……。
- キョン
- おれもな、そういうのもいいんじゃないか、と思ったことがある。というか、そう思わない日が、ほとんど無いくらいだ。
- ハルヒ
- キョン……。
- キョン
- だって、おまえがいるんだぞ、おれの腕の中に。ちいさくて柔らかくて、そのくせ元気のかたまりみたいで、ぎゅっと力をこめると……
- ハルヒ
- ば、ばか、何言って……
- キョン
- ほんと何言ってるんだろうな。……ぎゅっと力をこめると、おまえの膨らみとか、おれを手と腕を押し返してくるおまえの弾力とか俺の胸に寄りかかるお前の重みとかと一緒に、お前の心臓がトクントクンといってるのを感じるんだ。
- ハルヒ
- あ、あたしは、自分の体から力が抜けていって、あんたの、あんたの腕の力が強くなるのとか、鼓動がはやくなって腕とか胸に流れる血液が増えて、あたしに触れてるあんたの体が温かくなるのとか、自分の顔が熱くなるのとか、感じる。
- キョン
- ……ちょっと感動しないか?
- ハルヒ
- する。
- キョン
- おれ……たちっておかしいか?
- ハルヒ
- うん、変。
- キョン
- そうだよな。だって毎回だぞ。抱きしめ合う度に、毎回、感動して、時間が止まるのを感じて、トクントクンを感じて、時間が決して止まってないことに気付くんだ。ほんとは時間は止まっていて、また動き出したのかもしれないと思うことだってある。
- ハルヒ
- ……一言で言うと「ふぬけ」ね。
- キョン
- ああ。
- ハルヒ
- あたしがゴールだって言ったところから、手を引いて時間の流れに連れ戻すのが、「ふぬけ」のあんたなんだ。
- キョン
- おれだけじゃない。いつもおまえは俺の手を引いて、何歩か先を走ってるぞ、ハルヒ。
- ハルヒ
- ……転んだら、助け起こしなさいよね。あんたの首につかまるから。
- キョン
- ああ。
- ハルヒ
- それから、あれやってよね。
- キョン
- 「いたいの、いたいの、とんでいけー」か。
- ハルヒ
- ばか。ぎゅっ、ってやつ……よ。
- キョン
- ああ。……あ、言っとくが、ただ「ふぬけ」なんじゃないぞ。おまえに「ふぬけ」なんだからな。
- ハルヒ
- 知ってるわよ。それから、あたしはあんたに「首ったけ」なんだからね。覚えときなさい!
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