ハルヒと親父 @ wiki
一人旅に必要な事 エピソード3
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haruhioyaji
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アキとキョン
- アキ
- ねえ、パパ。聞いていい?
- キョン
- ああ、いいぞ。
- アキ
- パパはハルヒのこと、ずっと好きだったの?
- キョン
- ああ、そうだな。
- アキ
- じゃあなんでママと結婚したの?
- キョン
- アキ……。
- アキ
- やっぱ、ごめん。そんなの、答えられないよね。
- ハルヒ
- 興味深い話ね。ぜひ聞きたいわ。
- キョン
- ハルヒ……。
- アキ
- (ひゃー、パパごめんよー)。
- キョン
- うまく話せるかわからないけどな……その頃、パパは大失恋してな。本当は、ずっと好きだった人とそのままの関係がずっと続けていけると勝手に信じていて、その人がどんなに不安で苦しんでいたか、ずっと気付かないでいて、そういうこと全部をいっぺんに思い知らされたんだ。パパは罪と後悔の意識に一杯になって、とにかく身を引こうという気持ちに取り付かれた。今思うと逃げたんだな。いろんな人が気持ちを聞いてくれようとしたり、なぐさめてくれようとしたりしたけど、ダメだった。ただ一人、「あなたは逃げてるだけだわ、これまでは彼女との関係をはっきりさせる事から、今はそれでも彼女を好きな自分の気持ちから」と叱ってくれた人がいた。アキ、おまえのママだ。
- アキ
- パパ……。
- キョン
- 今思うと、その頃のパパは、ママがずっと好きだった人に似てたんだろうな、そのダメさ加減がさ。3ヶ月叱られ続けて、4ヶ月目に婚約した。パパはママを自分を一番理解してくれる人だと思ったし、ママはパパを自分が面倒見なくちゃどうにもならない奴だと思ったんじゃないかな。
- アキ
- それで、パパとママは愛し合ってたの。
- キョン
- ああ。いまでも、ハルヒとアキとナツキを次に、パパはママの事が好きだ。
- アキ
- それは申し訳なく思っているのじゃなくて?
- キョン
- その気持ちもないとは言えないけどな。ママは美人だし、賢いし、何事にも真面目で一生懸命な人だ。そんなところに今でも憧れてるよ。
- アキ
- パパ、面食いだしね。
- キョン
- アキ、おまえな。
- アキ
- 親父ちゃんが言ってたよ。あいつの周りはいつでも美人ばっかりだった、まったくギャルゲーか、って。
- キョン
- 親父さんは、全然人のこと言えないと思うけどな。お義母さんもそうだし、元婚約者の人にも会った事あるけど、この人もすごい美人だったぞ。
- オヤジ
- キョン、言いたい事があるなら、直接俺に来い。アキをいじめるな。
- キョン
- いや、親父さん、そういうことじゃなくてですね。
- 母さん
- ほんと、きれいな方でしたね。わたし、はじめて嫉妬という感情を知りました。
- オヤジ
- 母さんまで、何を言い出すんだ?
- ハルヒ
- ねえ、キョン。
- キョン
- うん?
- ハルヒ
- あんたの「大失恋」の話聞いて、あたしもどっかで子供の一人二人作っとけばよかった、と思ったわ。
- キョン
- な、なに言い出すんだ?
- ハルヒ
- 「港港に男あり」とか考えたんだけどね。残念ながら、あたしに見合う男がいなくてね……あんたぐらいしか。
- キョン
- そりゃ光栄だな。だが、ほんとのとこ、面倒だったんだろ。
- ハルヒ
- そりゃまあ、あんたみたいな面倒なのが最初の男だとね、努力の方向を間違うわよ。親父の予想では、あたしたちがお互いの家族を持って、数年後どこかですれ違って、軽く会釈するとか、気付かない振りして通り過ぎてエンドマークとか、そういうのを思ってたらしいけど。
- キョン
- 今だから笑えるけどな。
- ハルヒ
- あの人は、基本的に気が小さいから、いろんな事前予想をつくってガードを張るのよ。ヒロインが白血病で死ぬ映画見て、あたしが暴れたのは、あんたと見に行った時だっけ?
- キョン
- そんな話してたが、実話か、それ。
- ハルヒ
- じゃあ、親父と映画を見に行ったときか。
- キョン
- 大変だな、娘を持つって。
- ハルヒ
- 何よ、人ごとみたいに。で、さらに親父に言わせると「結局、散々遠回りして元の鞘におさまっただけ」らしいけど、あたしたち。
- キョン
- そうでもないぞ。手を伸ばせばお互いがいるのは、もう全然当たり前じゃない。アキがこんな俺に付いて来てくれて、おまえと仲良しになれたのもな。
- ハルヒ
- つまり、元の鞘なんかじゃ収まらなくいくらい、今のあたしたちは幸せってことね。
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