ハルヒと親父 @ wiki

二人は暮らし始めました 5日目

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haruhioyaji

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「さあ、キョン! 今朝のメニューは、手羽先餃子に、焼き塩シャケ、蟹かまのマリネに、卵豆腐、さつま芋の味噌汁、納豆、豆乳、ブルーベリー、あと常備菜からは昆布の佃煮とじゃこの佃煮、漬物は3種類。あとご飯はもちろん食べ放題よ!」
 ちょっと待て。いや、本当は待たなくていいし、うまそうなんですぐに食べたいんだが、待ってくれ。ハルヒ、朝からこんなに食うのか?
「引っ越ししたばかりで、昨日まではパンとか適当なもので済ませて来たけど、やっぱり日本人は朝食よ! 朝から食えるだけ食って、一日を戦い切る企業戦士よ!」
 いや、俺たち、学生だしな。
「なによ、食べないの?」
 くう。……食ってから考えるか。


「あー、おいしかった。キョンはどう?」
「ああ、めちゃくちゃうまかったぞ」
「そうね。食いつきが全然ちがってたわ」
「……すまん、ハルヒ。うまいものをたらふく食って幸せに浸っているところに無粋な話をするんだが」
「え、何? なんか嫌いなものでも入ってた?」
「そうじゃない。一緒に暮らす者同士のルールとして家事は分担する、ってことにしたろ?」
「ええ、そうよ」
「食事は当番制にするはずだったと思うんだが」
「ええ」
「毎日じゃなくても、たとえ一日交替でも、俺には、今日みたいな朝食は用意できんと思う。また、戦う前から敗北宣言で悪いが」
なんだ、そんなことか、という顔をしてハルヒは言った。
「なんだ、そんなこと。あたしはあんたが用意してくれたものだったら、菓子パン1個の朝ご飯でも文句はないわ」
「ハルヒ……」 そりゃ、あんまりだぞ。
「あたしだって、今日みたいな朝ご飯が毎回できるとは思わないし。昨日の夕方、やっとちゃんとした買い物ができたんで、あれも作ろう、これも作ろうって考えて出したら、最終的に満漢全席みたいなのになって、仕方が無いから削って削って、ここまでのメニューにしたの。めんどい手羽先餃子なんか入れたから、朝2時から取りかかったわ」
「おいおい、俺が寝てすぐじゃないか。おまえ、寝てないのか?」
「だから、勢い余って、って言ってるでしょ。実際は、伊勢エビが入った祝い煮を普通のお味噌汁に変更したりして、そんなに時間かからなかったし」
エビの入った祝い煮なんて、うちじゃ正月でも出ないぞ。
「まあ、そのうち、落ち着くところに落ち着くから、それまでは大目に見なさい!」
「くれぐれも無理すんなよ。それと、おまえが、おれたちの二人暮らしにかける意気込みがよくわかった」
「な、な、なに、訳のわかんないこと言ってんのよ?」
「俺の方は了解だ。おまえから俺の方には何か無いのか? 今の聞いたら、いかにものぐさな俺でも、さすがに菓子パン1個で済ます気はないが」
「それじゃあ、あたしからも注文を出すわ。あんた、『今日は何食べたい?』と聞かれて、無意識に『なんでもいい』と答えちゃうタイプでしょ」
「た、確かに」
「まあ、人間、欲しいものをいきなり聞かれても、答えられないものだけどね。そ・こ・で、ノートでもパソコンでも何でもいいから「食べたいものリスト」を作っときなさい。あたしはあたしで作るから。追加や順位変更はいつでもOKよ。相手に聞かれたら、そのリストの中から適当なのを言うなり、リストを相手に見せるなりしましょう。材料や調理時間もあるから、リクエストすべてに応えられるとは限らないからね」
「なんかLife Hackな感じだな」
「それともうひとつ。食べたものは、その日、料理当番でない方が、ノートに記録することにするわ。その方が『これはなんて料理だ?』と質問することになるから。献立日記専用に5年日記を用意したから、さっそく書いてちょうだい」
「ハルヒの母さんがつけてた奴だな」
「そうよ。季節の旬のものとか、家族の体調なんかも、後から見ると分かるし、これは真似しようと思ってたの」


 かくして朝食についての、ちょっとした騒動(?)は終わり、俺たちは大学に出かける準備を始めた。
「はい、キョン」
なんだ、そのバカでかい包みは? ピーン。いや、わかる、おれにもわかるぞ。
「そうよ。今日のお昼のお弁当よ!」
しかし、お重にしても5段重ねくらいの高さがあるぞ。
「お重で5段重ねになったわ」 やっぱりかよ。
「そんなでかいお重、よくあったな」
「大は小を兼ねる、というでしょ」
 いったい、その中は何でうまってるんだ、と聞きそうになったが、俺は口をつつしんだ。なんとなれば「今日は何かな?」とふたを開けるわくわく感を含めてお弁当だと、俺は思うからだ。
 「ハルヒ、今日帰りにちょっと買い物して帰りたい」
「うむ、感心ね。早速、明日の朝食がイメージできたの?」
 いや、全然。
 もちろん明日の材料だって買わねばならんだろうがも、今この家になくて早晩必要になるのは、(母娘そろって「痩せの大食い」であるハルヒには無用かもしれんが)、ヘルスメーターであろうと俺は思ったのだ。何、血糖値測定器だろうって? 無論、それもある。
















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